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怠惰でチートな異世界創造者(マジッククリエーター)  作者: 市川キキ
第2章、光と闇
31/62

31話、聖と魔の狭間の幸せ

二文字解放(ダブルキャスト)、虚像」



 その瞬間、遥希の体が光り輝いた。



 部屋を埋め尽くすほどほ膨大な光。それは神々しくきらびやかで、全てを優しく包み込んだ。



 その光量に思わず目を瞑る。そして暖かな光が過ぎたと同時に目を開ける。と、そこには横になった状態で宙に浮かぶ遥希の姿があった。



 アウリールは、すぐにでも駆けつけて抱き締めてあげたい。おはようと言ってあげたい。なのになぜか体は動かない。自分の意志とは関係ないような、体自体が自分のものではないとそう疑ってしまった。



 しかし、その疑問もすぐに消え去ることになる。なぜなら、遥希の纏っている薄く淡い光が自分に動くなと静かに告げている、直感でそう感じたからだ。



 この現象は自分だけではなく、ほかの面々もそうだと気付いたのは数分経ってからのことだった。



「……う………あ……ああ」



 どうやら体は動けずとも声だけは発することが出来るようだ。



 それに気付いたアウリ-ルはこの国の王である者の名を呼んだ。



「ガヴァロン。これはいったいどういうことだかわかるか?」

「……ッ! あ、わからん」



 ガヴァロンも声が出せることに今更ながら気づいたのだろう。最初に発した声は困惑していたから無意識で発したのだろうか。



 アウリールとガヴァロンの会話を機に、皆は話せることに安堵の色を浮かべた。



「しかし、どういうことでしょうか。こんな多くの人数を一度に留めるなど……」

「それによく見てみろ。あいつの周りに精霊が戻ってきているぞ」



 カリウドのその指摘に全員が一斉に遥希の方に目を向ける。



 その時にまたも事件は起きた。遥希の周りにいた精霊たちが一瞬にして消えた。それも魔力の残滓すら残さずに。



「な、に……? 精霊が魔力ごと消えた……?」



 ガヴァロンのこの言葉に対してアウリールはまさかという気持ちで目を凝らす。すると、



「な……!? 馬鹿な……!!」



 そして精霊が消えた瞬間から、遥希が纏っていた淡い光が消え始める。



 するとアウリールたちは手足の感覚が戻る、と同時にやはり疑問が浮かんでくる。



 が、今はそんなことどうでもよかった。とにかく何よりも一刻も早く、遥希と話がしたかった。だからアウリールは気づけなかった。



 アウリールはゆっくりと机の上に落ちてくる遥希に駆け寄った。だが、それが命取りとなった。



「アウリール! 駄目だ離れろ!」

「え……?」



 アウリールは何が起きたかわからなかった。



 消えかかっていた光の隙間から今度は黒く悍ましく大量の魔力が放出された。



 それは見るだけで人に恐怖、畏怖、絶望、嫉妬などの不の感情を植え付ける。そう直感で感じてしまった。



 ガヴァロンはあの危険な魔力からアウリールを救い出そうと一歩踏み出すが、もう間に合わないと悟った。


 

 そして誰もが恐怖に目を瞑り、その場に蹲った。その光はそれほどまでに不そのものだったのだ。



 今度は黒い光が部屋全体に広がる。この光は触れただけで精神がおかしくなる。そう感じているのだが逃げることができない。



 皆が覚悟を決めた、その時



「ぐっ……! ぐぁぁぁぁぁぁぁぁあああぁあぁあああ!!」



 眠っていた遥希が突如悲鳴を上げた。その声に皆は思わず顔をあげる。



 何事かと遥希を見る。するとあの黒い光は遥希に吸収されるかのように溶けていった。



「はぁ、はぁ、はぁ。………ん……?」



 程なくして遥希は目を覚ました。先ほどの魔力の影響だろうか、遥希の着ていた服は色が変色するぐらい汗で濡れていた。



「……あれ? 俺、なんでこんなところにいるんだ?」



 遥希のその場違いな言葉に、皆の意識はやっと現実に戻る。



「は、ハルキなのか……?」

「あぁ、そうだが……ってお前何言ってるんだ?」

「あの、無愛想で遠慮がなくて傲慢で欲がないハルキか?」

「お前、殺されたいのなら早くそう言え」



 アウリールのよくわからない質問に、遥希はなぜか答えなければいけないという義務感が襲った。だからテキトーながら答える。



「あ……あぁ………」



 なに泣いてんだ?



 遥希はそう口にしようとしたのだが、止めた。なぜならアウリールの顔が安心と歓喜に満ち溢れているからだ。



「ハルキ……おはよう……!」

「あぁ……おはよう」



 アウリールは遥希の腰に手を回し抱きつくと堰を切ったように声をあげて泣き出した。



 一瞬困惑したが、その時のアウリールは果てしなく愛おしく感じたため同じように抱き返して頭を撫でてやった。



「っ……。ふふ……」



 アウリールは一度ビクッとしたが、そのあとは遥希に身を委ねた。



「あ、あの……ハルキ様……」

「ん?」

「えっと……その……」



 キルルは大きな瞳に涙を溜めながら困ったように目を泳がせていた。



 その理由をくみ取った遥希は、片手を広げぎこちない笑みを浮かべた。



 するとキルルもアウリールと同じように遥希に抱きつき大粒の涙を流した。頻りにハルキ様、ハルキ様と名前を呼んでいる。



「よし、皆の者、宴の準備をせい!! ハルキ殿の復活を大いに祝おうではないか!!!」



 ガヴァロンの宣言と同時に、部屋の中は大歓声に包まれた。



 遥希は少し煩いと感じたもののそれ以上は思わなかった。むしろその煩さが心に染みてくるような気さえした。



「正直、何がなんだかわからん。けど、この空間は居心地がいい……」



 今の遥希は紛れもなく幸せだ。アウリールとキルルの温もりと、大歓声に包まれた賑やかな部屋。



 これだけあれば何もいらない。遥希は心の底からそう思った。


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