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怠惰でチートな異世界創造者(マジッククリエーター)  作者: 市川キキ
第1章、始まりと終わり
22/62

21話、幸せの意味

「お兄ちゃん起きてっ!」



 ………何……だろう……。



「早く起きないと、朝ごはん片付けるってお姉ちゃんが言ってるよ!」



 あ……この声、恋か……?



「妹の声忘れちゃったの? あ! お姉ちゃん、お兄ちゃんが起きないの」

「ほら、ハルくん。早く起きなさい」

「そうだそうだ!」



 姉さんの声もする……。



「そうよ、貴方を起こしに来たんだから」



 そっか……。俺は死んだんだっけな……。



「だから早く起きて!」

「恋ちゃんの言うとおり、早く起きなさい」



 え、それはどういう…………?



「あなたを待っている人がいる。だから早く起きなさい」



 母さん……?



「あなたの灯はまだ消えていないわ、だから」



 消えて……ない。



「「「早く起きなさい!」」」



 そっか……俺はまだ死んでなかったのか……。



 なら、まだやりたいこともあるし起きるとするか!



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




「……の……………せい……で! お前らのせいで……!」

「ん……?」



 遥希が目を覚ますとそこは見たことのある景色、獣国の王室だった。



 いきなり大きな声が聞こえるものだから、すぐに目は覚めた。だがこの状況はなんだろう。



 そこは王室なのだが、どうも様子がおかしい。先ほどから響いている怒鳴り声はアウリールのものだ。それは間違いない。



 だが、なぜかほかの者、獣王や王妃、その息子や娘、そして配下の兵士や大臣などが押し黙っている。



 そんな中突然起きたら面倒なこと事になりそうだから、遥希は寝たふりをする。



「お前らのせいでハルキは死んだ! お前らが罪を擦り付けたりするから!」

「む……しかしそれは……」

「まだ何か言い訳をするのか? 最終な決断を下したのはお前なのにか?」



 この会話から察するに、どうやら俺は、というかやはり俺は一度死んでいるらしい。



 きっとその原因は洞窟の中での一戦があったからだろう。



 そしてその元をたどれば俺が死んだのは獣王のせいだと、獣王が俺に濡れ衣を着せたからだと、アウリールはそう言いたいわけだ。



(俺は死んでないんだがなぁ……)



 するとまたアウリールの声が響く。



「私はあいつの師に、母親の代わりになるといった! なのに……なのに……!」



 そしてアウリールの目から一筋の雫が静かに落ちた。



「あいつは私のために……。こんな……こんなことが………」



 そこで遥希は初めて分かった。



 アウリールはここまで自分のことを大切に思ってくれていたのだと。こんなにも愛してくれていたのだと。



(はっ。初めて逢ってまだ3日しか経ってないんだぞ?)



 それなのにこの信頼のしようはなんなのだろう。自分と誰かを重ねているのだろうか。



 しかし今の遥希にはそんなことどうでもよかった。



 なぜか、アウリールのことが愛らしいと本気で思ってしまった。



 それほどにアウリールの言葉が胸に染み込んでしまっていた。それほどアウリールの言葉が心に溶けていった。この感覚はまるで―――



(姉さんや恋、母さんと会話しているときのような、あの幸せな感じだ……)





「私は……あいつを死なせて―――――」



 アウリールは驚愕した。それは何者かに頭に手を置かれ、撫でられていたからだ。そしてその人物を見てもっと驚愕した。



「――――――ハル……キ………?」

「おう。遥希だ」



 その様子に誰もかが驚愕した。先ほどまで死んでいた者が急に起きたのもそうだが、何よりも今こうして立っていることにもだ。



「し……ん………い……」

「ん?」

「心配したんだぞおおおぉぉぉぉぉぉお!!」

「ぐっ……!?」



 遥希は腹をやられた。腹を高威力のパンチで殴られた。……結構というかかなり痛い。



しかし遥希はそれを避けなかった。その拳の重さは、受け止めなければならないものだと思ったからだ。



 そして久しく誰にも見せなかった笑顔で、



「心配かけた。んで、……その……。あ…………あ……」

「?」

「…………ありがとう」



 それは今遥希ができる最大の感謝の表し方だった。



 そして遥希はアウリールの頭を再度撫でる。



 アウリールは、最初ビクッと肩を揺らしたが、そのあとは気持ちよさそうに遥希に身を委ねた。



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