表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怠惰でチートな異世界創造者(マジッククリエーター)  作者: 市川キキ
第1章、始まりと終わり
20/62

19話、覚醒

「……アウリール。どういうことだ?」



 遥希の声は自然と低いものになっていた。



 それもそのはず、皇女を攫った犯人がアウリールのことを、先生と呼んだからだ。



 犯罪者の言葉を素直に聞く馬鹿はいないが、アウリールが一瞬怯んだことにより信じざるを得なかった。



 いつまでも答えを喋らないアウリール。いや、何かしらの事情があって喋れないのだろうか。



 しかし遥希にはそんなことどうでもよかった。正直、キルルを保護してぱっぱと罪を免除できれば後は何でもいいのだ。



 この世界に来て早4日。面倒事は嫌いなのに面倒事に巻き込まれる。



 とにかく今は早く帰りたい。ジメジメして暗い洞窟の中から早く出たい。こんな面倒事に巻き込まれるのは、



「もう、うんざりだ」



 それだけ言うと、遥希は男の方に駆け出す。



 相変わらず男は不機嫌そうな顔をしていて、しかし怒りを殺してニヤニヤしている。



一文字解放(シングルキャスト)、剣」



 そして遥希は男に向かって剣を振りかざす。男は動じずにその場に立ち尽くしている。



 遥希の剣が男の首を刎ね……



「やめろっ!!」

「……ッ!!」



 アウリールが男の前に立ちはだかり、男を庇うように両手を広げている。



 遥希はアウリールが何かしてくることは幾つか予想していた。しかし予想は大きく外れることになる。



 一応警戒していたため、剣を止めることができた。しかしギリギリだ。



 万が一、男だけを警戒していたとしたらアウリールの行動に反応できず切り伏せてしまうところだった。



「貴様、何のつもりだ?」



 遥希は自分でも気づかないうちに声に出していた。しかも二人称が変わっている。それほど遥希はアウリールの行動に意図を見いだせなかった。



 その遥希の様子にアウリールは戸惑いを見せるが、やっと言葉を発する。



「こいつはアーガルドの弟、アーガルトだ」



 何と紛らわしい名前だろう。濁点をつけたら兄の名前まんまじゃないか。それに容姿も似ているしどっちがどっちだかわからない。



 そこで遥希はハッとする。森の中であった偽物、あれは今ここに立っているアーガルトの方ではないか?



 もしそうだったとしたら、すべてピースが合う。



 兄、アーガルドは獣国でも有名な騎士。対して弟、アーガルトは特に名がない無名の獣人族だとする。



 そして弟の存在を世間が知らないとすれば、アーガルトは間違いなくアーガルドに間違えられる。



 もしアーガルドとアーガルトを勘違いして変化や変装の魔法を使えば、名はアーガルドになる。でも性格自体は変わらないとすれば中身はアーガルトになる。



(だから森であった時とアウリールの家であった時と口調が違うのか……)



 遥希の推測は的を射ていた。



 しかし1つ、どうしてもわからないことがある。それは元の世界でも同じ、犯罪をした理由、つまり動機だ。



 わからないなら本人に直接聞けばいいじゃないか、と思った遥希は単刀直入に問う。



「キルルを攫った動機はなんだ? なぜそんなことをした?」

「獣王に対しての復讐と獣国に対しての警告だな」

「何故そんなことをする?」

「わからないなら考えればいいだろ? まぁ……」



 そういうとアーガルトは携帯していた剣を振り上げ、前で自分を庇うようにして立っているアウリールを切りつけようとする。



「生きて帰れたらの話だけどなっ!」

「アウリール! 離れろ!」

「えっ……」



 ズシュッ



 その剣はアウリールの左胸を背中から貫通していた。



「くそっ!! 一文字解放、剣、風!」



 すると遥希は風の力で加速し、その速さは光をも超える。



 そのままアーガルトの後ろに回り込み首を狙い横薙ぎの斬撃を繰り出す。



「遅いぜっ!」



 アーガルドは、アウリールから剣を抜き、それを後ろに回し受け止める。そのまま体を捻り、回し蹴りをする。



 それは遥希の横腹に直撃、数メートル吹っ飛ばされた。



「いっつぅ……!」



 回転して勢いをつけた回し蹴りは、遥希の肋骨を2,3本折っていた。



 その折れた骨が内蔵の一部に突き刺さったのだろう。遥希は盛大に吐血する。そのせいで血圧が下がり、眩暈がする。



「げほっ……! だ、二文字解放(ダブルキャスト)隼斬(はやぶさぎり)!」



 その一つの剣から生まれる斬撃は、切れば切るほどスピードを増し、無数の斬撃となりアーガルトを襲う。



「まだまだぁ!」



 アーガルトは遥希の隼斬を全て見切り、すべて躱す。



(アーガルトが強いのか、あの剣の能力か……)



 しかし今の遥希にはどうでもよかった。今は一刻も早くアウリールを診てやらなければいけないのだ。



「速く…………速く……速く速く速く速く……」

「ん? なんだ?」



 アーガルトは異変に気付いた。遥希の黒く澄んだ瞳が徐々に真紅の輝きを持った瞳に変わっていく。



 先ほど遥希が吐いた血が、少しずつ輝きだし魔方陣を作り出す。



 そしてあろうことか、先ほどとは比べ物にならないくらいの魔力を感じた。



「これは少しまずっ……」



 そう思ったが遅かった。遥希はすでに呪文を唱えていた。



「《真紅の(ブラッドブラッド)》」

「まさか……!」

「《血の河(ブラッドフル―ヴ)》」



 すると遥希のスピードが格段に上がる。その速度は神をも超える神速の領域。



「………一文字解放(シングルキャスト)……剣」



 その言葉と同時に一本の剣が生まれる、はずだった。しかし今は違った。



 遥希の周囲5メートル範囲に無数の魔方陣が生まれ、その魔方陣から様々な剣が生まれる。



 伝説の騎士王、アーサーが持っていたとされるエクスカリバーや森羅万象を切り裂くと言われこの世に斬れないものはないとされるデュランダル。そのほかの神話や伝説の剣も無限に生まれる。



「《無限の剣撃(インフィニットブレード)》」



 そして遥希は腕をあげ一言。



「奏でろ、全剣奏射」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ