1話、異世界の印
「なんだよあれ…………」
そこに立っているのは子供ではない。ましてや人ですらない何かだった。
つい声を出してしまった遥希だが、幸いそれには気づかれていなかった。
(それにしてもなんか既視感を感じるな……)
それもそのはず、その正体はゲームやアニメでよく目にするゴブリンの容姿と似ていたからだ。
肌全体が濃い緑色をしており、耳は長く、横にとんがっている。背の高さは6~9歳の子供と大体同じくらい。
(……ゴブリンでいいのかな)
そんな呑気なことを思っているものの、同時に頭の中ではこの状況について仮説を立てていた。
1つ、これは夢。
2つ、何かのドッキリ。
3つ、ここは異世界。
(うーん……。今考え付くのはこのくらいなんだよな……)
その中で有力候補を選択し、この状況についての説明として結論を出そうと頭を働かせる。
まず1つ目、夢を見るということは、今自分は寝ているということ。もしかしたら本を読んでいる間に眠ってしまったのかもしれない。しかし、もしそうだったとしたら可笑しなところがある。
夢にしたら手足の感覚、草木のにおい、視界のクリーンさ、どれもがはっきりとしすぎている。それに夢と決めつけ、いつか覚めるなどと思うのはあまりにも都合がいい考え方だ。
次に2つ目、何かのドッキリというのはあり得ない。今の今まで図書室で本を読んでいたはずだ。しかも光で目を閉じた一弾指のうちに森の中というのは現実から逸脱している。
そして最後、異世界かどうかは正直よくわからない。この説を立てた理由は目の前にゴブリンがいたからだ。あんな生物、地球にいたころ見たことがない。ゴブリンなんて存在はそれこそゲームやアニメの世界の話だ。
この仮説は正直言って、すべてありえない。しかし遥希は3つ目の仮説を最有力とした。なぜなら、
(そのほうが面白い!)
そう。遥希はもとより楽しむことだけを考えていた。今更どうこうできる問題でもなさそうだしいいかなー、的なノリで。
ここは異世界、なぜ異世界に来た、来れたかはわからない。でも、今はそんなことどうでもいい。
とにかく目の前にいる気色悪いゴブリンをどうにかしたい。
(まあ、まずは観察だな)
と、ゴブリンの頭上、何かが浮かんでいる。少し離れたところにいるため確認しづらいがそこには
NAME ゴブリン
LV 1
(LV………………?)
そこにはモンスター名とそのLVが浮かんでいる。しかもどういうわけかその字が読める。
(LVがあるということは、ステータスも存在する……?)
遥希がステータスのことを疑問に思っていると、頭の中に何かの情報が流れてくる。
NAME ハルキ・シンザキ
LV 1
HP 133
MP 91
ATC 102
DEF 89
SPE 90
INT 322
LACK 21
NEXT 6
EXP 0
KILL
ARMOR
MAGIC
SKILL 創造
(これは…………ステータス……か?)




