0話、すべての始まり
そこはとある森。そこには大小さまざまな木々が生い茂っており、1メートル先が見えないくらいの緑が広がっている。
「…………どこだここ?」
急に目の前が光ったと思ったら今まであった景色が森に変化していることに彼、新崎遥希は、戸惑っていた。
「ここは森か?」
そう。ここは森なのだが、頭が混乱してその光景を理解できずにいる。それも仕方のないことだった。
遥希は先ほどまで学校の図書館にいたはずだ。なのになぜ森の中にいるのか。しかも一人で。
学校では就職活動や受験勉強などで、図書館には数名ほど人がいた。それは確認している。だが今は一人。
どういうことか少しばかり思考を巡らせた挙句、
「だめだ。全くわからん」
しかし、ずっとここにいるわけにもいかない。この森の安全性がわからない以上、なるべく早くこの状況を脱しなければならない。
そのためにこれからの計画を立てようと考えた。
幸い、本が好きな遥希は様々な本を読み漁っておりその中にサバイバル関連の本も複数あったと記憶している。
その本の中の情報を寸分違わず引き出していく。
(第一にやらなければいけないこと。それは食糧調達と塒の確保。特に飲み水は重要になってくる、って書いてあったな)
頭の中で今後の計画を組み立てていた遥希は、昔にも同じことがあったなと遠い目をした。
と、そこに1つの足音。
地面を歩く音の間隔は短い。そしてその間隔が等しく同じリズムを刻んでいる。
そのことから導いた結論は、
(子供……か?)
しかしそれと同時に不可解な点もある。
さすがに危険すぎやしないか、と思ったところで足音がこちらに近づいてくる。
(話しかけるか、それとも身を隠すか……)
遥希は後者を選択した。ここはどこにあるかもわからない謎の森なのだ。負うリスクを考えると身を隠したほうが軽いと考えたからだ。
(しかしなぜこんなところに子供が? いや、もしかしたら……)
その疑問は視界に映った人影にすぐに解明されることとなった。
考え付く限り、最も悪い―――――最悪の答え、そのものによって。