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スレイブランド  作者: kou
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 広大な奴隷市場の通路を予備知識も地図も持たず進むランド。迷子になるのは自明の理である。ランド自体はボーっと夢心地で歩いており、迷っている自覚はなかった。しかし、


「どこだーでてこーい!!」


 いきなりの複数の男の怒声にさすがのランドもビクッと現実に引き戻された。バタバタと足音が迫ってくる。ランドはとっさに近くの小部屋に滑り込み、息を潜めた。小部屋の存在は見逃されたようで、しばらくすると外の人の気配は消えてしまった。一息つくランド。すると、今まで赤髪の女奴隷のことで浮ついていた脳みそが冷静さを取り戻し、わけのわからないトラブルに巻き込まれかけたことに恐怖を感じた。「もう帰ろう」そう思い、小部屋から出ようとしたとき、隅でガタッと物音がした。


「うわっ。なんだ。誰かいるのか。」


 ランドは素早くファイティングポーズをとる。ランドは一応騎士の息子なので基本的な剣の稽古は(嫌々)していたが、徒手空拳の経験はない。そのため、ポーズもへっぴり腰でありまるで威嚇になっていない。相手に勝利の確信を与えかねない代物だ。しかし、部屋の隅の人物から返ってきたのは意外な反応だった。


「ひぃぃ。殴らないでくださいぃ。」


 なんとも情けない声である。ランドにとって幸運なことに、この人物も戦いとは無縁のタイプだったようだ。年齢はランドと同年代、背格好や頼りない雰囲気も似ていた。そして、少年の身なりから奴隷であることは明白であった。おそらく外の男たちが探しているのはこの少年奴隷なのだろう。見つかるのは時間の問題である。ランドは少年の運命に同情しつつも、見なかったことにして小部屋の扉の取っ手に手をかけた。さっさとこの特異な状況から抜け出して日常に戻りたかった。


「まってください。助けてくださいよぉ」


 奴隷の少年がランドにすがりついてくる。


「うおっ。なんなんだよ。はなせー」


 ランドは必死に引きはがそうとするが、相手も必死である。泥仕合のような展開が続く。ランドの体力は底を付き、引きはがすのを諦めた。


「ハァハァ・・・僕にどうしろっていうんだ。力だってご覧のとおり君と似たりよったりだ。僕に頼るくらいならさっさと逃げ出した方が・・・ん?」


 バタバタという足音が再び近づいてきた。奴隷の少年を探している男たちが戻ってきたようだ。しかも、今度は周辺を念入りに調べ出した。これで奴隷の少年もジ・エンドだろう。ランドがそんなことを思っていると、奴隷の少年が何やらブツブツとささやき始めた。その手はうっすら光っている。そして手のひらをランドに向け、なにやら不思議な言葉を発すると光がはじけ飛んだ。


「うわあマブシっ。おまえ、僕に何をした。」


 詰め寄るランドに対し、少年は一言「ごめん」と言い、ランドに全力の体当たりをかまして小部屋から押し出した。転がり出るランド。当然、周辺の男たちにすぐさま見つかってしまった。


「おい、ガキがいたぞ。この面倒な奴隷め。俺達も暇じゃないんだ。」


 いかつい男が近づいてきてランドの腕をつかむ。


「ちょっと。僕は奴隷じゃないよ。自分たちの奴隷の顔も覚えてないの?」


 いかつい男はちょっと考え込む。


「そう言われると、逃げたガキと風貌が違うような気が・・・まあいい、腕を見せろ。そうすりゃ一発だ」


 いかつい男はランドの服の袖を捲りあげた。


「へへ。やっぱり奴隷じゃないか。見ろ、奴隷の印がこんなにくっきりと刻まれてやがる。俺もこんなガキの見え透いた嘘につきあうなんてどうかしてたぜ。」


 ランドは驚いた。まっさらであるはずの自分の腕に刺青のようなものが浮き上がっていたのだ。ランドもそれには見覚えがあった。友人の所有する奴隷の腕に刻まれているのを見たことがあった。奴隷の印とは、アースランドの奴隷であることを示すマークと、奴隷1人1人を識別するための番号が一体になったものである。


「そ、そんな・・・なぜ・・・」


 落胆するランド。頭の中が真っ白になった。赤髪の女奴隷のことを考えているときの思考停止とは正反対の絶望の思考停止である。その刹那、空っぽの頭に差し込むように、「ドーン!!」という爆発音が辺りに響き渡った。


「鉄の意志があらわれたぞー!」


 警告の声がこだまし、周りの奴隷商の男たちに緊張感が走る。いかつい男が苦虫を噛み潰したような表情で声を発した。


「鉄の意志ってことはアイアンフィストもきてるのか。あのヤロー俺をボコボコにしたうえ、奴隷輸送車なんかの商売道具をメチャメチャにしていきやがった。今でも頭のタンコブがうずくぜ。」


「安心しろ。アイアンフィストは護衛の三騎士がおさえこんでくれるはずだ。輸送車は無事だろう。さっさと売れ残った奴隷を集めて撤収だ。」


「それは騎士様様だぜ。あいつにまた殴られるのはごめんだからな。おいガキ、行くぞ。」


 いかつい男はランドを強引に連れて行こうとする。


「ちょ、ちょっと待ってよ。僕は奴隷じゃないって。それどころか今おじさんたちを守ってる三騎士の息子なんだってば。」


「この薄汚いクソガキが。まだそんな嘘をつくのか。黙ってろ。」


 ゴンっ!いかつい男がランドの頭にゲンコツを食らわせる。


「いったぁ、こ、こんなことしてただで済むと・・・」


文句を言うランドだったが、いかつい男のごつい腕を振り解けないまま裏口まで強制連行された。

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