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6,初依頼とフラグ処理

本日は特別に3連投です。




 異世界3日目。

 今日の予定は冒険者ギルドにギルドカードを取りに行き、ためしに依頼を受けてみる感じだ。

 時間が余ったら探索者ギルドや魔法ギルドなども見て回りたい。


 朝早くから行っても混んでたら嫌なので、露店通りをたっぷり冷やかして時間を潰して冒険者ギルドへとやってきた。

 狙い通りギルド内には人がまばらで受付も大分空いていた。

 だが登録の際に担当してくれた優しそうな受付嬢はいなかったので、仕方なく今いる受付嬢の中で話しかけやすそうなやさしそうな人をチョイスしてみた。


「いらっしゃいませ、冒険者ギルドランガスト第7支店へようこそ。

 この度はどういった御用向きでしょうか?」


 どうやら挨拶の言葉はマニュアルでもあるのか決まっているようだ。

 以前の受付嬢と寸分違わず同じである。


「あー……ギルドカードを受け取りに来たのですが」

「はい、ではお名前をお伺いいたします」

「クドウナルミです」

「クドウナルミ様ですね。ではこちらの番号札をお持ちになり、少々おまちください」


 日本の役所や銀行を幻視するようなやり取りだったが、こうまでマニュアル化されているならば逆に面倒がなくてやりやすい。

 言われるがままに番号札を受け取り、依頼が貼られている掲示板を眺めて時間を潰す事にした。


 ギルド貢献度が低いギルド員向けの依頼を眺めてみるがほとんどが雑用だったり引越しの手伝いだったりと街の中で完結する依頼ばかりのようだ。

 街の外の依頼、害獣の駆除だったり魔物――ゴブリンやコボルトの駆除などは貢献度が初期から上がった貢献度2にならないと受けられない。

 定番の薬草採取はなんと貢献度3の区分けらしく、当分受ける事は出来ないだろう。


 どうしようかとちょっと意気消沈しながら掲示板を眺めていたら渡された番号札の番号が呼ばれたので受付に向かうとすぐにギルドカードを渡された。


「こちらがクドウナルミ様のギルドカードとなります。

 登録の際に紹介状がありましたので、貢献度は2からのスタートとなります。

 さっそく依頼をお受けになりますか?」

「あ、はい。受けます」

「それではクドウナルミ様は貢献度が2ですので、こちらの依頼を受ける事が可能です」


 そういって受付嬢が出したのは依頼の一覧表だった。

 依頼内容が端的に書かれた1文と報酬と期限が書かれている。

 なるほどこれなら受けたい依頼をすぐに探せる。


「クドウナルミ様は初めての依頼受注ですね。資料から戦闘能力は探索者ギルドでCランク相当となっていますので討伐依頼でしたらどれでも問題はないかと思います。

 逆に納品依頼ですと資料に特に情報がありませんのでこちらからお奨めする事は出来ません。

 街中での作業でしたら向き不向きもございますが力仕事などいかがでしょうか?」


 受付嬢の流れるような言葉にちょっと目をパチクリさせてしまうくらい驚いた。

 オレの知っている冒険者ギルドはもっと、なんというか放任主義な感じだ。

 でも実際は資料の情報を元にお奨めの依頼を教えてくれたり、逆にお奨めしない依頼なんかも教えてくれている。

 まだオレの情報は少ないだろうに、正直すごい。


「ふふ……。驚きました?」

「え、あ、はい。驚きました」

「別にクドウナルミ様だから特別というわけではないのですよ?

 冒険者ギルドには危険な依頼も多数集まってきますから、ギルド員の生還率をあげるために色々とやっているわけなんです。

 この依頼のお奨めもその一環ですね」

「なるほど……」


 今まで仕事の顔だった受付嬢がちょっとだけおどけて見せた表情は確実に素の彼女だろう。

 だが親身になってくれている理由もわかったのでオレの疑問は解けた。

 素の受付嬢は美人なだけでなく、かなり可愛い感じも混ざっていてとても魅力的だがオレにとっては難易度も高いし、何より高嶺の花すぎる。

 なので今は依頼だ。

 初依頼なのだし、現を抜かしている暇はないのだ。


「えぇっとそれじゃあこのゴブリン討伐をお願いします」

「畏まりました。それではギルドカードをお預かりいたします……はい、これで受注完了です。

 期限は2週間。ゴブリン10匹の討伐となります。報酬金額は6000ジェニーです。

 討伐証明はゴブリンの頭に生えている小さな角ですのでお忘れないようにお願いいたします」

「はい、わかりました」

「それでは神々の祝福がありますように」

「ありがとうございます」


 ゴブリンなら森でかなりの数狩っている。

 特に苦戦するとも思えないし、10匹くらいなら日帰りも楽勝だろう。


 ちなみに受け取ったギルドカードには名前と貢献度しか書かれていない。

 魔力を通すとステータスが浮かぶとかそんなハイテク機能はないらしい。

 魔物を倒してもカウントもされない。

 けれどオレのカードは身分証の変わりになるらしいので失くさない様に注意しなければ。


 受付嬢に見送られ冒険者ギルドを後にして早速門へ向かって歩き出した。

 黒刀闇烏は腰に下げているし、ガントレットは装着してきている。防具はまだ出来ていない。

 でも狩る相手はゴブリンなので防具はぶっちゃけ必要ない。

 侮っているわけではない。これは純然たる実力差だ。


 というわけでお昼ご飯用に露店で肉と野菜をパンで挟んだ例のでかいヤツを購入した。

 門ではギルドカードを銅板に押し当てて青く光れば問題ないらしい。

 ハイテク機能なしかと思っていたら実はあったみたいだ。

 入る時にはギルド員は門に並ぶ必要はなく、同じ様に銅板にカードを押し当てて青く光ればいいそうだ。


 昨日の夜死体を処分するためにゴブリン達がいる場所まで行ったのでどの程度の距離があるかはわかっている。

 午前中には終わらせようと思ったのでジョギングがてら走るとあっという間にゴブリンが多数生息している場所までついてしまった。

 超人化している体で走るとジョギングでもすごいスピードが出るようだ。


 昨日もそうだったが、恐らく軽く100キロは出ていたのではないだろうか。恐ろしい。


 さてではお仕事しますか。

 徐々にスピードを落としながら来たのでゴブリン達にはいらぬ恐怖は与えていない。

 間違っても地面を猛烈に削りながらスライディングの如く滑走などしていないから大丈夫だ。


 そのおかげかオレを得物と認識してくれたようだ。

 向かってくるのは5匹のゴブリン。

 どれも棍棒に腰蓑という定番の格好だ。遅すぎて欠伸が出るがこれはお仕事。真剣に行こう。


 鯉口を切り、向かってくるゴブリンAにあわせて踏み込み、斬り上げる。

 真っ二つになりながらも走ってきた勢いのままに前のめりに崩れ落ちるゴブリンA。

 うむ。やはり弱い。


 残り4匹。

 確かめるように袈裟斬り、逆袈裟、横なぎ、突き。

 淀みなく一連の動作を流れるように終わらせる。


 その場に動く者はオレ1人となり、血脂を払って鞘に納める。

 正直ゴブリンでは何匹こようと練習にもならない事はわかった。

 倒し終わったところで気づいたが討伐部位を切り取るにも刃物は黒刀闇烏しかない。

 剥ぎ取り用にナイフなどを買った方がいいようだ……。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







「すみません、依頼完了の報告をしたいのですが」

「いらっしゃいませ、冒険者ギルドランガスト第7支店へようこそ。

 はい、お伺いいたします。ギルドカードの提出をお願いします」

「あ、はい」

「はい……クドウナルミ様ですね。依頼内容はゴブリン10匹の討伐。討伐証明部位は角となっております」

「はい、こちらです」

「確認致します。こちらの番号札をお持ちなってお待ちください」


 お昼になる前にさくっと帰ってこれたので例の肉野菜挟みパンを食べる前に報告を済ませてしまうことにした。

 依頼を受けた時の受付嬢はいなかったので違う、やはり今いる受付嬢の中で優しそうな人を選んで話しかけた。

 ちなみにオレ以外にも何人か受付で話している武装した人がいたり、待ち合い所となっている長椅子には何人か同じような人達が座っていた。

 やはり種族はてんでバラバラだが、皆鍛えているようでいいガタイをしている。女性まで筋骨隆々なのは勘弁してほしいが姐御というイメージがぴったりすぎる。


 番号札を受け取った後はオレも長椅子に座って待っていたが、周りから微妙な視線を感じる。

 中には結構強い視線も感じる事からこれはフラグが立ってしまったのではないだろうか。


 内心ワクワクしながら待っていたが、特に何事もなくオレの番号が呼ばれてしまった。

 ちょっとがっかりしながらも受付に行き、「初依頼達成おめでとうございます。これからも冒険者ギルドへの貢献、期待しております」とか言われて報酬を受け取った。


 フラグは不成立かと思ったがそんなことはなかったらしい。

 ギルドを出てすぐに呼び止められたのだ。


「おい、ガキ。初依頼だったらしいな。

 知ってるか? この街では初依頼の報酬で先輩冒険者に酒を奢る決まりがあるんだよ」

「へぇー、初めて聞いたよそんなこと」

「あ? なめてんのかクソガキが!」


 神はいた。

 実に期待通りの展開と行動にオレは神の存在というものを確信する事ができた。

 いや、実際に会って土下座されてるんだけどね? やっぱり自称だったし。


 大振りな先輩冒険者の一撃はむしろ避けられない方が難しいんじゃないかと思えるほどしょぼい。

 柳のように勢いに逆らわずに大振りの一撃を避け、足を引っ掛けて転倒させると同時足首を踏み砕く。

 硬い鉄板入りのブーツだったようでオレの足跡がくっきりと残ってしまったが絶叫を上げて転げまわる先輩冒険者は非常にやかましい。騒音で近所迷惑すぎる。


「て、てめぇ!」

「おい、やっちまえ!」


 絡んできた先輩冒険者は今転げまわっている1人ではなく、3人だった。

 残りの2人はニヤニヤしながら成り行きを見ていたが、足首を潰された仲間を見て顔を真っ赤に染めてロングソードと短剣を抜き放つ。

 この街に来たばかりのオレでも一応知っている。喧嘩で武器を使うのは法律違反だ。というか街中で刃物を抜く事自体がアウトだ。

 しかし相手が先に抜いた場合に於いては正当防衛が成り立つ。

 幸い、ここは冒険者ギルドの目の前でギルド職員がばっちり目撃しているし、周りにもそれなりに人がいる。証言は事足りるだろう。


「死ねやガキがぁッ!」


 激怒しているからなのか、それともただの実力不足なのか。どうみても後者だろうが、上段から振り下ろされるロングソードは遅すぎるし、キレというものがまったくない。

 ロングソードの男とは時間差で繰り出される短剣は少しは見所があるかもしれないがそれでも素人に毛が生えた程度だ。


 黒い閃光が2回閃く一瞬で全ての決着がついた。

 首の動脈を切断された2人が昨日浴びたシャワーのような勢いで首から血を噴出させている。


 黒刀闇烏についた血脂を振って落とし、鞘に納める。

 その間に石畳は真っ赤に染まり、2人の男は首を押さえたまま死へとどんどん近づいていく。

 足首を潰されて動けない最初の男は股を濡らして今まさに死に向かっている2人を見て震えているだけだ。


 ここまでやればもうオレに絡んでくるやつもいなくなるだろう。

 目撃者も多いし、死に損ないも1人残したしな。せいぜい大げさに宣伝してくれ。


 だが一応事情聴取などあるのなら早く済ませてしまいたい。

 ギルド職員ならこういうことにも詳しいだろうし、話を聞いておこう……とギルドに向かおうとして入り口にいる人物が頬を引きつらせているのが目に入った。


「な、何をやっているんだおまえは……」


 ランガスト冒険者ギルド第7支店支店長――ニールギンさんはものすごく疲れたような顔をしていた。



定番の薬草採取は残念ながら貢献度不足で受けられませんでした。

なのでゴブリン討伐です。

瞬殺すぎましたが。


定番の絡んでくる先輩冒険者も登場です。

普通の高校生の前にはただのフラグ処理でしかありませんでしたけど!


気に入っていただけたら評価をして頂けると嬉しいです。

ご意見ご感想お待ちしております。


9/15 漢字修正 血油→血脂

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