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5,黒刀闇烏

新連載5話目です。

初回連続投稿はこれにて終わりです。

次回からは普通に投稿していきます。



 武器屋に関しては知る人ぞ知る隠れたお店の情報はなかったので大手の武器屋から購入する事にした。

 元々防具も特注で作ってもらうつもりはなく、出来合いの物で着られるものを買おうと思っていたのだ。まぁ結果としてすごいのが出来そうだからいいのだが。


 というわけで大通りに面する、冒険者ギルドよりもずっと広い大手武器屋にやってきた。

 冒険者ギルドよりも広い店内にはたくさんの武器が置かれている。

 種別ごとに区画をわけて試し切りも出来るように広いスペースを取っているようだ。

 なるほど、さすがは大手だ。


 とりあえず購入予定なのは取り回しを重視して剣。出来れば刀が欲しい。

 槍も使えるが持ち運びが面倒なので携帯性を重視することにした。

 他にもガントレットがあったら買いたい。

 防具屋の爺さんに聞いたらガントレットなどは、防具としての機能よりも武器としての機能に秀でているタイプの物なので武器屋の管轄になるそうだ。

 だが靴などは防具屋になるらしい。もちろんオレは蹴りも使うので可動性と耐久性を重視した特注仕様の靴を注文している。


 店に入ればすぐに店員が近寄ってきて用向きを聞いてきたのでとりあえず任せてみることにした。

 案内されたところは刀剣コーナー。

 なんと普通に刀も売られていた。

 やはり刀もピンきりで、安い物なら5万ジェニーくらいからあり、高いものだとガラスケースのような透明な箱に飾られた真っ赤な鞘に長い柄に長大な刀の長巻――赤鞘だと1000万ジェニーを超えるほどだ。


 さすがに長巻は携帯性が悪すぎるので却下だが、漢のロマンとしては是非欲しい。

 こうして大事に飾られているのだから滅多な事では売れないだろう。値段も値段だし。

 いつか機会があったら購入を検討したいところだ。


 さて携帯性を重視して尚且つ実用性に優れるタイプだと刃渡り2尺――60cm以上で反りの少ない打刀と呼ばれる種類の刀がオレに合っている。


 とはいってもオレも刀の種類に詳しいわけじゃない。

 祖父に叩き込まれた技術の中に古流剣術や槍術があったので色々な刀や槍に触れはしたが、学んだのは名称ではなく技術だ。

 漢のロマンだから刀の種別は少し調べたがその程度。


 特にこちらの世界では刀は打刀であろうと太刀であろうと長巻であろうと脇差であろうと刀らしい。

 郷に入っては郷に従えという言葉もあるのでオレも刀と呼ぼう。


 店員の熱心な解説をほぼ聞き流し、オレが選んだのは刃渡り2尺半の漆黒の刀身を持つ刀――黒刀闇烏だ。

 お値段は460万ジェニー。

 そこそこ高い刀だったがこの光を吸収してしまうような刀身は見ているだけでも吸い込まれそうだ。

 切れ味も試し斬りで藁人形を抵抗無く斬れたので申し分ない。

 鞘と腰に下げるためのベルト、手入れのための油と打ち粉、目釘抜や各種拭い紙をおまけにつけてもらった。

 この辺の手入れ道具は店で別途販売もしているのでなくなったら買いに来ればいいそうだ。


 刀も買えたので次はガントレットの区画に案内してもらった。

 刀と違ってこちらは頑丈さを重視した物を選んだ。値段は刀と違ってずいぶん安くなり、15万ジェニー。

 肘から指の半分くらいまでをカバーしつつ、手首の可動性を重視しているなかなか使いやすそうな逸品だ。

 おまけは手入れ用の油だけだったが、刀の手入れ用油では相性が悪いそうなので地味にありがたい。


 なんだかんだで460万ジェニーもする刀をニコニコ現金払いで購入した上客だったのでおまけも充実していたし、帰りも案内した店員以外にも会計を担当した店員など全員で見送りしてくれた。


 その後は冒険に必要そうな道具――テントや寝袋、火起こし用や水筒などの魔道具など様々な物を購入した。

 おかげで帰りには荷物が大量になってしまい、冒険道具用のポケットなどが大量についているリュックを購入するはめになった。

 リュックを背負ってしまうと背負い袋はちょっと辛いが、リュックにくくりつける事も出来るみたいなのでなんとかなるだろう。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 後ろ足銀牛亭で夕食を摂り――飽食の国日本で生まれ育ったオレでも十分満足する出来――シャワールームでさっぱりしたあと、特にやることもないのでベッドに入った時にスキルをゲットした。

 意味がわからん。


 ・『天凛の才:身体』発動。『気配察知:中級』を取得しました。


 どうやらベッドで寝ようとしたところで外からの視線を感じた事が原因のようだ。

 中級なのは元々ソレに相当する程度には気配を探る事が出来ていたからだろう。

 だがスキルとなった時点でぼんやりと探る程度でしかなかったのがはっきりとわかるようになった。

 どうやらやはりオレへ向けられた視線は確かなものらしい。


 夜中と言うほどの時間でもないと思うが一体何の用だろうか。

 目立つ行動などそれほど取った覚えも無い。

 だが探る視線は途絶えない。


 ちょうど今日買った刀もある。

 気配察知:中級の性能も確かめておきたいので実に都合がいい。


 寝返りを装いベッドから転げ落ち、匍匐全身で壁際まで移動。

 途中で毛布の中に背負い袋を仕込んで偽装も済ませてある。

 窓は少しだけ換気のために開けておいたがこの幅では通れない。かといってドアから出ると気づかれる。

 さてどうするか。

 するとスキルをゲットできた。なんというご都合主義。


 ・『天凛の才:魔力』発動。『偽装工作:中級』を取得しました。


 どうやら先ほどの背負い袋の偽装が切欠のようだ。

 中級なのは気配察知同様叩き込まれた技術がすでにあるからだろう。それにしては格闘や回避術は初級からのスタートなのが気になる。あくまで補助するスキルと実際の技術との違いだろうか。


 窓に対して偽装工作:中級を使うとどうやらオレ以外には微妙に空いている窓に見えるように偽装が施されたようだ。

 思ったとおりになるようで実に使い勝手がいい。

 スルリと窓から抜け出し、壁を静かに蹴って三角飛びで屋根まで上がる。

 当然オレの全身に偽装工作を使用して背景と一体化するように処理してあるので相手には気づかれないはずだ。

 現に屋根の上までの移動中に気配察知による視線の反応はなかった。

 ついでにまた新しいスキルをゲットできた。スキルラッシュだな。


 ・『天凛の才:身体』発動。『立体機動:初級』を取得しました。


 さて、監視をしている輩はどこかな?


 素早く周囲を確認すると夜の闇に紛れるような真っ黒な衣装をした人物を発見した。

 ついついオレの獰猛な獣の部分が鎌首を擡げ様としてしまった。

 気配が漏れるすんでのところで引っ込めたから気づかれてはいない。


 新しい玩具を試せるんだ。

 ちょっとくらい興奮したとしても誰も責められやしまい。


 音を一切立てずに鯉口を切り、真っ黒装束のいる屋根に静かに降り立ったところで偽装を解除した。


「なッ!?」

「オレを監視してどうするつもりだったんだ?」


 真っ黒装束から見れば突如背後に現れた監視対象。

 そりゃ当然驚くだろうな。

 驚愕から瞬時に逃げの一手を打ったのは賞賛できるが……遅い。


 浅く足の腱を立つように黒刀闇烏が走る。

 銀閃は走らない。光を返さぬ闇のような刀身だから。

 腱を正確に切断され、力の入らなくなった足がもつれ屋根の上を転がる。


 ・『天凛の才:身体』発動。『刀:初級』を取得しました。


 スキルを手に入れたみたいだが気にせず、そのまま下に落ちて逃れようとしている真っ黒装束を追う。何度も言おう……遅い。


 先回りして腹を蹴り上げ、さらにもう片方の足の腱も切断する。

 両方の足の腱を切断されても悲鳴の1つもあげないとはなかなかどうして優秀だ。

 だがこれでもう逃走はできない。


「さて、もう1度質問しよう。

 オレを監視してどうするつもりだったんだ?」


 両足の腱を切断されてもジリジリとオレから離れようとしている真っ黒装束はどうやら答える気は無いらしい。

 まぁ正直答えてくれるとは思っていない。

 オレとしては黒刀闇烏の試し斬りが出来れば問題ない。


「答えないならそれはそれで構わないぞ?」


 わざわざ音が鳴るように持ち手を調整し、1拍だけ時間を置いて猶予を与えたあと霞むほどのスピードで闇夜に黒い一閃を走らせた。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 死体を検めたが特に身元がわかる物は何もなかった。

 せいぜいが男だと分かった程度だろう。

 まぁこういった監視作業をするような輩が身元がわかるものなんて持っているわけがないことは最初から思っていたので問題ない。

 死体については壁を越えた先にある草原にでも捨ててくれば外にうろついているゴブリンなり狼なりが勝手に処分してくれるだろう。


 ランガストの街を囲む巨大な壁も超人と化しているオレにとっては大した問題ではなく、死体を担いでいても簡単に登る事が出来た。

 もちろん偽装工作:中級も大いに役立ってくれた。

 気配察知で探るとどうやら壁の近くには狼もゴブリンもいなかったのでちょっと死体を捨ててくるのに時間がかかってしまった。


 しかし地球では祖父と一緒に山篭りに行ったときくらいにしか見ることができなかった満天の星空をたっぷり見れたのは素晴らしかった。

 いや……地球よりもずっと星が多いかもしれない。

 星明りだけでも相当な光量になっている気がする。

 飲み込まれそうなほどの星空を眺めていたらスキルをゲットしていた。


 ・『天凛の才:身体』発動。『夜目:中級』を取得しました。


 宿に戻った頃には深夜を少しまわったくらいのはずだ。

 返り血は浴びないように気をつけていたので特に汚れてもいない。担ぐ時も気をつけたしな。


 黒刀闇烏についてしまった血脂を落として軽くメンテしてからベッドに入った。

 今度は視線を感じる事もなく、あっという間に睡魔に身を委ねる事が出来た。



普通の高校生――クドウナルミにかかれば怪しい輩なんて性能テストの餌食です。

自身に向けられる危険の芽にも容赦がないのが普通の高校生なのです。


気に入っていただけたら評価をして頂けると嬉しいです。

ご意見ご感想お待ちしております。


9/15 漢字修正 血油→血脂

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『濁った瞳のリリアンヌ』完結済み
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