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4,買い物買い物お買い物

新連載4話目です。


 露店には様々な物が売っていた。

 しかしよくあるような値段が決まっていないという事は無く、ほとんどのものには値段が書かれた紙が貼り付けてあったり、挟んであったりする。

 値段の張り紙がない物には代わりに要交渉という張り紙があったりしてなかなか面白い。まるでフリーマーケットだ。


 買い物をしている人達を観察していると使用されている貨幣もだんだんとわかってきた。

 どうやら丸い銅貨を最底辺の10ジェニーとして四角い銅貨が100ジェニー、丸い銀貨が1000ジェニー、四角い銀貨が1万ジェニーとなるようだ。

 では金貨はどうなのだろうか。

 残念ながら露店で金貨を使っている人はまったく見られなかった。


 肩掛け鞄の中にある金貨は確か四角だった。

 この法則のままに考えればこの金貨は1枚100万ジェニーということになる。

 確か10枚ではきかない数があったはずだ……。オレは一体いくらもらったんだ……。


 それに別れ際にミリアス嬢から貰った腕輪も気になる。

 これは一体どう便利な物なのだろうか。


 わからないものは一旦棚に上げて、今現在の目的である買い物をさっさと済ませる事にした。

 予想が正しいならば露店で金貨が使われていないのは当たり前だ。

 何せ桁が違う。

 10万円の金貨を露店のような比較的安い物しか売っていないところで使う馬鹿は少ないだろう。

 となると釣銭の問題から使用するには店舗などの少し大きめの店となるだろう。


 露店でも服は売られているようだが、古着でもかなり着古したものばかりだった。

 正直もう少しまともなものが欲しかったので露店で集めた情報を元に露店のたくさん集まった通り――露店通りを抜けた先にある店舗で購入する事にした。


 高級そうな店ではなく、少しシックな感じの入りやすい服屋でいくつか服を見繕った。

 さすがに露店よりは遥かに高い。

 しかし入った店もよかったのか目的にあった割と丈夫で街にも溶け込めそうな服や下着など色々購入できた。


 ちなみに露店巡りをしている間にスキルを1つゲットしている。


 ・『天凛の才:魔力』発動。『物品の知識:初級』を取得しました。


 魔物の知識:初級と同じように物の名前がポップアップされるのだが、それだけだ。

 まぁ初級だし、ないよりマシだろう。

 ただどうやら半分以上視界に入っていないとポップは出ないようだ。

 大量に乱雑に物が置かれていたりするとポップで埋まってしまうとかなくて一安心。


 ちなみに建物は店舗名や、普通の家なら誰々の家とポップに書かれるようだ。物品の幅が広すぎるが、地味に便利だ。

 オンオフも効くようなのだが、便利なので常時オン状態にするつもりだ。


 肩掛け鞄の中身が服や下着類でいっぱいになってしまったので背負い鞄を買う事にした。

 服屋でなぜか売っていた巾着袋には銅貨や銀貨を入れてブレザーのポケットに入れてある。

 人通りも多いのでスリには気をつける必要がある。

 さすがに肩掛け鞄の中身を狙うような豪快なスリはいないらしいが、ブレザーのポケットに入っている巾着袋は狙われるようだ。

 すでに2人ほど狙ってきたが軽くかわしている。


 ちなみにどちらも年端もいかない子供だったのでかわしてそのまま見逃した。


 山賊には容赦しないがさすがに子供に手を上げるのには抵抗があるからな。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 露店で丈夫で大きな背負い鞄を購入し、服などをその中に入れなおす。

 今度は銅貨銀貨があるので露店で日用品を多数購入し、お昼ご飯は適当に売っていたパンに肉と野菜を挟んだ物を購入して済ませた。


 そろそろ一旦宿を取るなりして荷物を置いておきたい。

 大荷物を抱えたまま装備品を買いにいくのはどうかと思うし。

 露店で買い物しながら宿の情報なども収集していたので宿の選定もばっちりだ。


 この街の宿はピンきりで、安い宿なら大部屋雑魚寝で素泊まり500ジェニーから。

 最低でも個室で鍵が欲しいと思っているオレの要望に応える場合は素泊まり3000ジェニーからだそうだ。

 案外安い。


 昼に買った肉野菜を挟んだパンは1つでオレが満腹になるほど大きくて150ジェニーだった。

 それに飲み物も買って大体1食200ジェニーいかない程度。

 1日4000ジェニーほど稼げれば十分生きていけるようだ。


 まぁ泊る宿は1泊素泊まりで4000ジェニーの後ろ足銀牛亭という宿だけど。

 この宿、個室で鍵付きの上に有料だがシャワールームがあるそうだ。

 風呂なんて貴族や大商人の屋敷にしかないそうだし、普通はお湯をもらって体を拭く程度。

 なので有料とはいえシャワールームがある宿は珍しいそうだ。


 風呂があるような宿は1泊で相当な金額になるために断念。

 なのでこの後ろ足銀牛亭となったわけだ。


 後ろ足銀牛亭は1階部分が飲食店も兼ねている宿屋だ。

 お昼を過ぎた時間に来たので店内は閑散としていたが時間が時間だけに当然だろう。


「いらっしゃい。泊りかい? 食事だったら今準備中でね、もう少し待ってもらう事になるよ?」

「泊りです」

「はいよ。うちは1泊素泊まりで4000ジェニー。1階奥にシャワールームがあるけど有料で1回100ジェニーだよ。

 お湯が欲しいなら大タライ1杯で20ジェニー。

 5連泊以上でお湯代は無料だよ。泊り客なら食堂で食事するなら一品サービスがあるよ。食事する際には鍵を見せればいいよ。

 どうする?」


 シャワーについてもう少し詳しく聞くと、どうやら温水で10分くらいしか出ないらしい。

 まぁ10分あれば体を洗う分には問題ないだろう。冷水じゃなくてよかった。

 毎回シャワールームを使うつもりだと伝えると5連泊以上のサービスは食事の際にさらに一品追加に変えてくれた。

 なので10日分お願いする事にした。


 しめて4万ジェニー。四角い銀貨4枚分である。

 両替も兼ねて金貨で払ったが特に問題なくお釣りを貰う事が出来た。

 部屋は203号室。

 8畳ほどの室内にベッドと備え付けの机と椅子と籠があるだけの簡素な部屋だ。

 窓にはまっているのは曇りガラスで、押し上げるタイプの窓だ。

 この世界には紙やガラスが普及している。だが電気はないようで、灯りに使われるのは専ら魔石と呼ばれる石を燃料とした道具――魔道具だ。

 油よりも魔石の方が安くて扱い易いそうだ。

 なのでこの部屋にも灯り用の魔道具が1つあり、窓から入ってくる光だけでは不十分なので点灯させている。


 ランガスト伯爵邸では灯りの魔道具1つにしても装飾など非常に凝った物だったがこの魔道具は非常にシンプルだ。


 ベッドのマットレスが若干堅くて不満だったが、清掃も行き届いていて綺麗なのでよしとした。

 ちなみに部屋の清掃は毎日勝手にするそうなので必要ない場合は申し出る必要がある。

 なので貴重品などは部屋に置いておかずに持ち歩くのが常識だ。

 ついでに洗濯して欲しい物があったら籠に入れておけば洗ってくれるそうだが、一括で洗濯するらしく高い服などは街の洗濯屋に頼むようにしてくれといわれた。


 買ったばかりの服に着替えて残りの服や日用雑貨などは部屋に置いていくが、ブレザーやズボンだけは肩掛け鞄に入れていく事にした。

 これらは自称神に会った時から着ていたもので、前の世界の物を再現したものらしく機械縫いなのでこっちの世界では再現するのはたぶん無理なものだろう。

 ミリアス嬢も見たことも無い綺麗な製法に一瞬だけ興味をもっていたくらいだ。

 まぁすぐに強者語りが始まったので印象的にはかなり薄いが。


 そんなわけでこれは一応貴重品。持っていくべきだろう。


 背負い鞄に服や日用雑貨を詰めて部屋に置き、肩掛け鞄だけ持って装備品を見に行く事にした。


「おや、お出かけかい? 鍵は預かっておくよ。

 戻ってきたらまた渡すからね。これは引き換え用の木札だよ。失くさない様にね」

「わかりました」


 1階の食堂にいた女将さんに声をかけると鍵を預け、代わりに木札を貰って宿を出た。


 向かう場所はまず防具屋だ。

 今までブレザーにズボンという防具にもならない防具で戦っていたが、やはり本格的な防具は必要だろう。

 オレは無手でも戦えるので最悪武器は必要ない。

 だが防具は揃えておいた方がいい。


 露店での情報収集の結果、大通りから2つ外れた裏通りに近い通りにある1軒の防具屋が知る人ぞ知る店らしい事がわかった。

 どうせ買うなら良い物を。

 金は宿で数えた結果まだ四角い金貨が34枚も残っていたし。


 防具屋に向かって歩いていると突然スキルをゲットした。

 しかもどういう条件で手に入ったのかまったく不明なスキルだった。


 ・『天凛の才:魔力』発動。『魔力感知:初級』を取得しました。


 一体いつの間に魔力なんて感知したんだ。

 スキル効果は自分や周りの魔力の流れを知覚出来ると言うものらしい。

 感じられるのは自分の中にある魔力と……腕輪?


 ミリアス嬢から貰った腕輪がどうやらオレの魔力を吸い上げてどこかに送っているらしい。

 なんぞこれ……。

 物品の知識:初級によると腕輪の名前は『ブーゲンビリアの腕輪』。

 残念ながら名前だけではさっぱりわからない。


 ちょっと怖くなったところでまたスキルをゲットしてしまった。なんだかどんどん手に入ってるな。


 ・『天凛の才:魔力』発動。『魔力遮断:初級』を取得しました。


 今度は自分の魔力を外に漏れないように出来るようだ。

 このおかげで腕輪が吸い上げていたオレの魔力を遮断して止める事が出来た。

 おかげでどこかに送っていた腕輪の効果も止まったようだ。


 魔力を遮断して腕輪の効果を止める事は出来たがやっぱり怖いので腕輪は外しておく事にした。ただまぁ捨てるのは忍びない。勿体無い精神の日本人の悲しい性か。

 でも念のため魔力感知と魔力遮断は常に発動させておこう。


 ほどなく防具屋に辿りつくとそこは話に聞いたとおりに知る人ぞ知るという言葉がぴったりな店だった。

 何せ店舗なのに看板がない。

 これでは知っていなければ店だとはわからないほどだ。


 でもオレには物品の知識:初級があるので店舗名がわかる。なので間違っていない。


 扉には鍵はかかっておらず、かといって入店客に対して挨拶があるわけでもなく。


「ご、ごめんくださーい」


 恐る恐る店内に声をかけてみたがやっぱり反応が無い。

 でも鍵は開いていたし、照明もついていた。

 店内には数多くの防具が飾られている。

 全身鎧から革の鎧まで種類が本当に多い。だが雑然と並べられているわけではなく、きちんと整理整頓されわかりやすく種類別用途別に並べられているようだ。


「なんじゃい小僧」

「うお!」


 美しいとは言えないけれど丁寧に並べられているたくさんの防具を眺めていたら、カウンターに小さな爺さんが座っていた。

 地球では見ることが出来ない実用一点張りの防具に夢中になっていたとはいえ気づかなかったとは情けない。


「あーすみません、防具を買おうかと思って」

「客か……ほう、小僧……相当腕に自信があるな?」

「それなりには」

「くく……。それだけの腕前でそれなりか! ガッハッハッハ!」


 どうやらこの爺さんただの爺さんではないらしい。

 冒険者ギルドの筋骨隆々とした支店長とはまた違った威圧感を感じる視線だ。種族的にはドワーフだろうか。


「それで、どんな防具が欲しい?」

「あー……動きを阻害しない軽い防具が欲しいんですが」

「動きを阻害しない軽い防具か。予算は?」

「とりあえず1000万ジェニーまでで」

「ほぅ! そいつは大したもんだ!」


 1000万ジェニーは四角金貨10枚。

 さすがに全額防具につぎ込むような真似は出来ないのでこの辺が妥当だろう。

 だが爺さん的には十分過ぎるほどの予算だったらしい。

 装備品は安い物でも万単位の値段が付くと言われていたのでいいものなら相応になるはずだと思っていたが、さすがに1000万はやりすぎだったみたいだ。


「小僧……いや、おまえさん名はなんという?」

「クドウです」

「よし、クドウ。得物はなんじゃ?」

「今のところ無手ですが、一応槍と剣も使えます」

「ふむ、では盾はいらんな? 防具も急所を重点的に守るタイプでいいじゃろう。

 1000万も予算があるのならばハイオーガの虎革をメインにレッサードラゴンの鱗で補強した物が作れるぞ」

「あーあと色なんですが、闇に紛れやすい黒系統の色にして欲しいのですが」

「よかろう。ではこっちにこい。採寸してさっそく作ってやる」

「ありがとうございます」


 アレよアレよという間に防具を作ってくれる事になってしまった。

 しかも予算ギリギリまで使うつもりらしい。

 ハイオーガの虎革やレッサードラゴンの鱗がどれほどの価値があるかわからないが、1000万の予算があるという発言のあとだけに相当な高級品なのだろう。

 まぁ命を預ける防具なのだから仕方あるまい。


 採寸をしてどうせならばと出来る限りオレの要望を詳細に話し、詰めたあと爺さんは奥の工房に引っ込んでしまった。

 しかも帰り際に店の扉に鍵をかけてポストに鍵を突っ込んでおけと言われて鍵を放り投げられる始末だ。

 どこの世界でも職人というのは偏屈ばかりなのだろうか。


 ちなみに出来上がるのは3日後と言う話だ。

 少し変わった防具になると思うが、基本的には急所を重点的にカバーするだけなので防御面積はそれほど大きくないが、それでもほぼ全身に及ぶ防具だ。3日は早い。早すぎる。

 ハイオーガの虎革やレッサードラゴンの鱗なんかも在庫があるということだろうか。

 まぁよくわからんが出来るなら早い方がいいのは確かだ。


 支払いも完成品を見てからでいいというらしいし。


 一先ず防具はこれで大丈夫だろう。

 次は武器だな。



序盤といえばお買い物。

定番ですね。

ついでに普通の高校生の求めるちょっと変わった防具も注文です。


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