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異世界の剣客  作者: dadandan
ペルーベンの街 
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ダイクの宿の食堂は今日も賑わう

毎日更新してみる。

ただ垂れ流しているの間違いですねww

商業区の酒場や宿屋からは、ガヤガヤと賑やかな声が聞こえてくる。

飲食店は一番忙しい時間であり客の声に混じって厨房の中からも威勢のよい声が聞こえてくる。

ダイクの宿も食堂スペースで一般の客に料理を出している。

しかし聞こえるのは、客の声とそしてひときわ大きい女性の声だ。

声の主は女将ことメイだ。

「なぁんだい!男はブツクサ文句言わずにチャッチャと食っちまって、さっさと帰って自分の嫁さんを喜ばしてやるもんだよ!!」

こんな女将の気性に惹かれてか繁盛している。

「うちのひとを見てご覧よ!! 仕事は出来るし、文句は言わない! あんたたちもうちの人みたいになれば嫁さんたちも幸せだろうにねぇ!!」

女将が惚気ながら客達に言っている。

「そんなの俺らにゃあ無理さ! うちのかかぁにだって尻に敷かれてるのに女将さんみたいのを嫁にしたら身がもたないぜ!!」

「ちげぇねぇ!! 全くダイクの旦那は俺らの大先輩だからな!!」

「女将さんと比べたら俺らんとこのなんてお嬢様だぁ!!」

客達は口々に笑いながらそう言い合う。 

「あんた達~!よっぽどあたしを怒らせたいのかい!? さっさと払うもの払ってお嬢様方のお相手に精を出すんだね!!」

こんなことを言い合いつつこの客達はまた今度もこの店に来るのだろう。

話題のダイクはというと、食堂で勝手なことを言われていても全く気にもとめず、黙々と注文をこなしている。

その動きはさながら精密機械のように無駄がない。 そして

「・・・あがったぞ。」

間違いなど起こすこともなく次々と注文の料理が出てくる。

「あいよっ!!」

そしてそれを受け取ったメイはどんどん料理をテーブルへ運んでいく。

この完璧なコンビネーションで今日もダイクの宿は繁盛していく。



そしてその一角に三人の男の姿を見つけることが出来る。

伊織にエリオット、そして商人ギルドから帰って来たアルフレッドである。

「そうですか! じゃあ無事に登録できたんですね! おめでとうございます!!」

アルフレッドはハンターギルド登録の顛末を聞いて自分のことのように喜んだ。

「ありがとう。まぁちょっとした問題もあったが、無事落着したしな・・」

「そうですね。 しかしあの時のイオリ殿の手腕はお見事でした。 イオリ殿は腰の剣を用いて戦われるものと思っておりましたが、素手でもあれほど強いとは!」

エリオットはハンターギルドでの一件を思い出しながらそう言う。

「そういうエリオットも素手で瞬く間に奴らを手玉に取っていたじゃないか。」

伊織はそう返す。

「まあ私は槍の師匠に耳にタコができるほど言われましたからね――」

「「武器がないからといって敵は待ってはくれない」」

エリオットの言葉に伊織の言葉が重なる。

数秒の沈黙とともに同時に笑いあった。

得物は違えどやはり通る道は一つらしい。

――伊織。刀を振える戦いだけが存在するわけではない・・ この時勢では刀が無くとも戦えなければ生き抜けない。――

これは若先生の言葉だ。戦いの中に身を置くのであればいついかなる時もいかなる状況でも戦えなければならないとの教えは流派にも組み込まれている。

伊織は刀のみでなく空手や柔術を元にした、徒手での戦闘術も同時に叩きこまれている。

エリオットも槍だけでなく、格闘術も教えられている。

ハンターの仕事では武器を持ち込めない状況での護衛依頼などもあるからだ。

――いいか坊主・・・武器の無いときの護衛中に悠長に敵と対峙してる余裕なんて無ぇと思え。 一発で相手の意識を奪えなきゃこっちが不利になる。――

これはエリオットの師であるハンターの言葉だ。 その言いつけ通り先の戦いにおいても的確に相手の意識を刈り取っている。

そんな二人の様子を見て、アルフレッドは心から安心していた。

――イオリさんはこの大陸でもうまくやっていけそうだ・・この人を信じたのは間違ってなかったなぁ――

伊織と会えて本当に良かったと普段はあまり信じていない太陽神に感謝するアルフレッドだった。

「改めまして、ハンターのエリオットです。 こうしてあったのも何かの縁です。よろしくお願いしますね。」

そうエリオットは自己紹介し右手を差し出す。

「行商人のアルフレッドです。こちらこそよろしくおねがいします! 御用の際は是非僕に!!」

エリオットの手を握り返しつつそう答えた。

偶然の出会いでも顧客獲得に余念がない。

「アルフレッド・・ここにエリオットを連れてきたのは、実は一緒に依頼を受けないかと誘われているんだ。 まぁその依頼を受けるかどうかは別にして、少し依頼を受けてみようと思っているんだ。 だから大まかな君の予定と許可をもらおうと思ってな。」

伊織はエリオットを連れてきた理由を話す。

「そうですね・・イオリさんが依頼を受けるのは僕も賛成です。このペルーベンにいるうちは護衛の必要も無いですしね。」

アルフレッドはそう答える。 

「色々な経験を積むのはいいことですよ! パークシティへの護衛もハンターギルドを通してイオリさんのランクアップの足しになればと思っていましたし。」

アルフレッドは嬉しそうにそう言った。

「ここは取り敢えず1週間分抑えてありますが、恐らくもう少しいることになりそうですしね。 エリオットさんと一緒に受ける依頼っていうのはどんなものなんですか?」

そのアルフレッドの問いにエリオットが答える。

「ペルーベン近くの村を占拠している盗賊の討伐依頼です。 村の代表が命からがら逃げ出して来たんですが、騎士団が動くまでには時間がかかるのでこちらにも依頼が回ってきたみたいです。 敵の戦力は最低で15~20人程度で何人かの村人を人質に取って村を支配しているようです。」

そうエリオットが説明する。

「ふむ、正面からでは攻めづらい状況だな。 こちらの戦力は?」

伊織はそう尋ねる。

「そうですね、なるべく少人数で行こうかと思っています。 作戦は夜明け直前に奇襲をかけようと思っています。ですので少数精鋭で人質を奪還しつつなるべく静かに敵戦力を削って行きたいですね。」

エリオットが作戦案を示しながら答える。

「そうだな。その作戦なら人質奪還チームと陽動チームの2チームに別れ、人質奪還後陽動をかけ敵を惹き付けつつ人質を安全な場所まで誘導し、その後挟み撃ちにするのがいいだろう。」

伊織がエリオットの作戦に追加のアイディアを出す。

「敵の練度にも寄るがその場合、最低でも二人づつの計四人か、陽動三人をにして計五人というところだろうか。」

伊織がそう締めくくる。

「いいですね。その作戦で行きましょうか。陽動チームには腕のいい三人組を知っていますのでそいつらに声をかければ揃うと思います。奪還チームは私達でやりましょう。」

作戦はこうして煮詰まった。

「この概要ですと全て落着するまで大体2週間といったところでしょう。アルフレッドさん、その間伊織さんをお借りできないでしょうか?」

最後にエリオットはアルフレッドに判断を仰ぐ。アルフレッドは伊織の護衛依頼の依頼主であるのだからこれは当然のことといえる。

「もちろんです!! 私の方でも準備にそのぐらいかかりますので、連絡さえ途絶えなければ全く問題はありません。」

アルフレッドはエリオットの礼を重んじる姿勢と冷静な分析能力に好感を覚えていた。

――イオリさんが褒めるぐらいだから、かなりの実力を持ってるんだろう。この人となら大丈夫そうだ。――

アルフレッドはそう考え

「伊織さんがんばってくださいね!!」

と素直に初の依頼達成を祈るのだった。

「ありがとう、アルフレッド。 エリオット、その陽動担当の三人組とも顔合わせが必要だな。」

アルフレッドの優しさに感謝しつつ、伊織がそうエリオットに切り出す。

「もちろんです。そちらの方は私が明日つなぎをつけておきましょう。 それはそうと、イオリ殿に頼みがあるのですが・・・」

エリオットは手配を約束しつつ伊織にそう尋ねた。

その細い目の奥に微かな高揚感を感じさせつつ続ける。

「――私と立ち合って頂けませんか?」

その時、アルフレッドは一瞬背筋が凍りつくのを感じたという。

周りの喧騒が聞こえなくなっていき、この世界にこの二人だけしかいないような錯覚に陥る。

「もちろん木剣での立ち合いで構いません。 あなたの手腕を見てから、あなたの剣を感じてみたくなりました。」

すると伊織は冷静に

「もちろん構わないさ。 俺もエリオットの槍捌きを見てみたい。 それに・・・お互い新たな糧を得られそうだしな。」

そう言った。 しかしその言葉の中にも隠し切れない高揚感がある。

――あぁ・・・この人達はこういう人間なんだ。 この人達の道はこういう道なんだな。――

アルフレッドはなんとなくそう感じた。

時間は関係なく、認めた人間とだからこそ戦ってお互いを更に理解しようとするのは武に生きる人間にとっては避けられないことのようだ。

武に生きるとはそういう側面も持っているのだろう。

「場所はどうしますか?」

「ここの中庭を貸してもらうとしよう。」

「わかりました。 では明日、昼過ぎにまた改めて伺いますのでその時に。」

「そうだな。 楽しみだ。」

「私もですよ。」

先ほどの作戦を決めるのよりもトントン拍子に決まってしまった。

その様子をアルフレッドは見ていることしか出来なかった。

この空気に入れるのは、同じく武に生きる者だけだろう。



この日はこうして解散した。

伊織は久しぶりの手応えのある立ち合いにわずかに心を踊らせるのだった。

そしてそれは自分の宿に帰るエリオットも同じだった。


こうして伊織の長い一日はようやく終りを迎える。

新たな戦いの予感を感じさせながら。


次回遂に伊織とエリオットが戦います!!

今までで最高の戦いになればいいなとおもいます。


伊織は脳筋タイプではありませんが、基本はバトルジャンキーですww

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