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異世界の剣客  作者: dadandan
剣客降り立つ
3/47

この世界の今 安定した戦乱

またまたこっそり更新です。

爽やかな朝の風が吹き抜ける。辺りは太陽の日差しとともにまた新たな一日が始まる。

朝の空気を頬に感じつつアルフレッドは目覚めた。

まだ眠い目をこすりつつふと向かいの寝袋を見ると、すぐさま飛び起きた。

「なっ!? いない!!」

朝の苦手なアルフレッドにとって最高の気付薬になったようだ。

向かいの寝袋で寝ているはずの伊織がいないのである。

――どこ行ったんだ、イオリさんは!!――

地理に不案内な伊織がそう遠くに行くはずはないと、辺りを探してみるとその予想通り伊織は近くの木立に一人で佇んでいた。

しかし声をかけようと思った瞬間、アルフレッドは立ち止まってしまった。

「ふぅぅぅ・・ ふっ! ふっ! ふぅっ!」

そこには見えない何かに向かって刀を振るう伊織がいた。

「すごい・・なんてすごいんだろう・・・」

思わずつぶやいてしまうアルフレッドだったが、とにかく“すごい”としか言えなかった。

それは一つの流れのように見え、一見すると舞にも見えた。

しかし彼の振るう刀には明確な重みがあった。 そう、人を斬り伏せるだけの重みが。

アルフレッドは生まれて始めて剣を振るう姿を美しいと感じた。

この時伊織は型を遣っていた。 型とは本来攻め手と受け手の二人で行うものであるが、伊織はその両方を代わる代わる一人で遣っている。

こうして型を遣い込んでいくことが剣術の稽古の基本である。

余談ではあるが、剣術があふれていた頃に剣を合わせた相手の流派が聞かずともわかるのは、この型が基本はあれどそれぞれ異なっているからといえる。

もちろん完全にわかるわけではない。


伊織がアルフレッドの視線に気付いたようで、刀を収めた。

「あぁ、おはよう。 驚かせてしまったかな。」

伊織がアルフレッドの方へ歩きつつ言った。

アルフレッドがよく伊織を見てみると、あんなに激しく刀を振るっていたのに汗一つかかず呼吸も全く乱れていない。

「すごいです! あんあにすごいものを見たのは生まれて始めてですよ!!」

興奮気味にアルフレッドは続ける。

「それにあんなに動いているのに汗一つかいてないじゃないですか!」

「そんなに大したことじゃないよ。今日は涼しいしね。俺の先生たちはもっとすごいよ。」

笑うように伊織は答えた。

彼の言っていることは謙遜のように聞こえるが実はそうではない。

大先生に言わせれば

「汗なんて自由に出し入れ出来るものさね」

との事である。実際どんなに暑い日の稽古であろうと刀を握っている時は汗一つかかないのだから本当に出来ているのだろう。

「さぁ、朝飯を食べて出発するとしよう! 恥ずかしながら腹が減ったからな。」

笑いながら伊織がそう言う。

「そうですね!私も気づいたらお腹が空いて来ました。」

アルフレッドも笑いながらそう答えた。

二人は笑いながら朝食の用意をする。

この二人はなかなかいいコンビなのかもしれない。

 



朝食のあと、用意を済ませ二人はまた街道を歩きはじめた。

「街までは後どのくらいだい?」

伊織が涼しげにそう尋ねる。

「そうですね・・ 昨日と同じぐらいのスピードなら今日の日暮れまでにはペルーベンの街に入れるでしょう。」

「ほう、ペルーベンというところに向かっているのか。」

「はい。パーカー共和国とアレクトス王国との貿易で栄える街です。そこから共和国の首都パークシティに向かいます。あそこならイオリさんのお国の情報もなにか掴めるかもしれません。」

伊織は昨日の夕食時にアルフレッドにありのままを話している。 全く見ず知らずの土地に来てしまったこと、来た方法も帰る方法も全くわからないこと。 もちろん技術的なことははぐらかしていた。

なぜなら街道に出て気付いたことだが、馬らしき蹄の跡と(わだち)を微かにだが見つけたからである。

これは馬車かそれに類するものが通った痕跡であることと、そこまで頻繁に通っていないことを表していた。

そして野盗達がロングソードを使っていたことからしてここにはまだ近代の機械は無いであろうと予想していたからである。

そしてまもなくその予想は正しいと証明されることになる。

そしてアルフレッドは伊織のその格好、特に履物すら履いていなかったことからその話を信じることにした。

最もその頃には伊織の人となりを信頼出来ると見込んでいたからというのもある。

そしてこのまま大きな街に向かおうということで、昨夜の話は決着した。

「そうだな・・それにいつまでもアルフレッドにたかっているわけにもいかないからな。なにか仕事を見つけなければ。」

「イオリさんならハンターギルドに登録してハンターになってしまうのが一番手っ取り早いと思いますよ。」

「ハンターか。 どんな仕事なんだ?」

「そうですね・・ 荒事専門の何でも屋ってところですよ。 商店や有力者の館の警護とか、行商の護衛とか、盗賊討伐の助っ人とか、危険な場所への探索・・・ まぁそんな感じです。 それにギルドカードは身分証明にもなりますから旅が楽になりますし、それがないとパークシティに入ることが出来ないんで。」 

「なるほどな。 それは俺にピッタリそうだ。」

「まぁ他にも商人ギルドや職人ギルド、魔術師ギルドに船舶ギルドなんかもあるんで・・」

「ちょっと待て。」

いきなり伊織が声を上げる。

「魔術師ギルドってことは魔法師がいるのか。」

「もちろん。まぁ数は少ないですがそれなりには・・ 当然でしょう?」

さも普通のことのようにアルフレッドは答える。 どうやらこの世界では当然のようだ。

「そうか、とするといきなり魔法が飛んでくることもあるわけか。 アルフレッド、魔法のことを詳しく教えてくれ。 どういったものなんだ?」 

伊織の声に自然と熱が入る。  初めて見る反応に少し困惑気味にアルフレッドは答える。

「まぁ炎や氷が飛んできたり、砂嵐が起きたり色々ですよ。 僕が見たことのあるものだと人を一撃で倒せる程のものはそんなに見たことがありません。 専門家じゃないので詳しくはわかりませんが・・・」

「なるほど・・・」

伊織が頷きながら考えている。

――使う人間によっては人を一撃で倒すか。 “見た”と言うことは銃弾ほど速くも小さくもないということだな・・・ 実際に見てから判断すべきだが取り敢えずは銃と同じように対処するか・・・――

「ありがとう。 ペルーベンについたら魔術師ギルドも覗いてみるよ。」

伊織は爽やかな笑顔でそういった。

「いえいえ、大したことじゃありませんよ。」

アルフレッドは嬉しそうにそう答えた。

「しかし、このパーカー共和国にはギルドが多いんだな。」

伊織が興味深げに尋ねた。

「そうですね。 パーカー共和国は元々東のバクラン帝国から独立した国で、独立の英雄、豪商パーカーの名を取って出来た国です。 だから商業が盛んで自由な国風なんですよ。それに北には太陽神国、西にアレクトス王国と貿易に適した立地ですしね。」

アルフレッドの説明は続く。 それを聞き逃すまいと伊織は集中して聞いている。

「それに中央に神国から流れるレントレス川という大陸最大の川と、南の海に群島があるので、船舶技術は大陸で一番ですよ。 もちろん海軍も最大戦力を保持しています。 今から行くペルーベンはこの国で第3の都市です。」

「そうか。たしか帝国と王国は泥沼の戦争中だったな?」

「そうです。 基本的に北の山脈の谷間ににあるお互いの要塞で対峙していて200年近く小競り合いが続いています。 どちらも大規模な要塞攻略戦を何度か仕掛けていますが、落とすだけでも一苦労といった形ですね。 共和国はその戦争中に独立した国です。神国は太陽神教の聖地なのでどちらも攻められませんし、この戦争には不介入です。何度か不可侵条約の締結を仲介していますけど。」

「なるほど。 かなりの膠着状態なんだな。」

「そうですね、現在は定期的に小競り合いをしてお互いの防衛力を計りながら内政と軍備拡張をしていますね。 神国と共和国内でも諜報合戦という感じです。」

「ふむ・・ 最初に来たのが共和国で良かったかもしれないな、他の国なら即座に殺されるか、何もわからず前線に送られていたかもしれない。」

ほっとしたようすで伊織はつぶやいた。

未だにわからないことも多いがどうやら天は伊織を完全には見捨てていなかったようだ。



この後は他愛もないことを話しながらもお互い話題は尽きなかった。

アルフレッドの妹リサの話や商人としての下積み時代の話。

伊織はというともちろん修行の話、っと言うより人間離れした先生方の武勇伝だ。

特に大先生が40歳も年下の娘を妻にしていると聞いた時のアルフレッドの顔は傑作だった。

まぁこの話題はいずれまた触れることもあるだろう。



そして辺りが夕陽により真っ赤に染まる頃、街道の先に高い城壁に囲まれた街が見えてきた。

ここまで狭かった街道は大きな街道に合流し、そこかしこに馬車や行商人、そして鎧を着こみ剣や槍を携える者達など様々な人々が一同に城壁に向かっている。

「見えて来ましたね。 ようこそイオリさん! ペルーベンの街に!」

そういうアルフレッドの顔は何処か誇らしげだった。

この先にまた新たな出会いと、新たな戦いが待ち受けていることを感じながら希望に満ちた目でそれを見つめる若き剣客だった。


真っ赤な空をただ一羽の(とんび)が切り裂いていく。

完全に説明回ですね。

地理はインドを大きくしたものを大雑把に分けていると考えてくださればわかりやすいと思います。

そして大先生は最強ですwww

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