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異世界の剣客  作者: dadandan
ペルーベンの街 
15/47

初依頼の地へ 

金曜日の更新ができず申し訳ありませんでした。

予定があったりで間に合いませんでした。

ということで今回は少し早めに更新です。

一夜明けたペルーベンの街はまた静かな朝を迎えていた。

燦々(さんさん)と輝く朝日。

清々しい空気。

立ち上る炊煙。

しかし、そんな雰囲気の中真剣な面持ちでギルドに集まっている五人の若者がいる。


「これで皆さん登録完了です。 では依頼の達成を期待しています。」

微笑みながら受付嬢は五人を祝福する。

この受付嬢はこの前の者とは別人である。

清楚かつ可憐な印象でペルーベン支部のオアシスといわれるほどに密かな人気を誇っている。

わざわざこの受付嬢を通してギルドを利用する者もいるほどである。

「さあ、これで準備完了です。 では行きましょうか!!」

そう言うエリオットに続き、伊織とウルブズのメンバーがギルドを出て行く。

依頼の受注はメンバー全員の刺青の登録が必要であり、全員で行わなければならない。

これにより、本人確認と本人の意志に反して依頼を受注、取り消しされることを防いでいる。

伊織は集まりの後アルフレッドと共に必要なものの買い出しを済ませている。

とは言っても、道着や袴は置いてあるはずもないので洋品店に特注で依頼を出してある。

現在は革の長ズボンに皮のベルト、麻のシャツにジャケット、靴は新品の革のブーツと非常にラフな格好である。

もちろん腰には大小の刀をベルトに差し込んでいる。

そして肩から円筒形の簡単なバッグを担いでいる。

その中には訓練用の木刀、代えの衣類、作戦時に着るための道着、寝袋に携行用食料等が入っている。

「でも、最初イオリ兄さんだって全然わからなかったよ~!」

そうマルティナが話しかけた。

「そうだぜ! 昨日の格好じゃないから腰の剣を見るまで全く気付かなかった!!」

クリストフも続けて言う。

「そうか、まぁこれは間に合わせの服だからな。 そう思われても仕方ないな。」

伊織は苦笑いとともに答える。

「しかし、イオリ殿はそんな格好でいいんですか? ペルーベン近くはまだ安全ですが、いつ戦闘になるかわかりませんよ。」

ウォルトが尋ねた。

その疑問はもっともなことで、イオリ以外全員戦闘用の装いである。

「いいんだ。 俺の剣術は平服で行うのが基本だからな。 あの道着だって動きやすさ等は考えられているが、防具ではない。 それに刀はかなり切れるからな、革製の鎧じゃあ着ていないのと大して変らない。 だったら身軽な方がいいだろ?」

そう伊織が答える。

実際刀は斬ることに関してはかなり優れていて、革製のものならばそのまま真っ二つに出来てしまう。

金属へはそうはいかないが、全て金属製の鎧などは有り得ず、構造的に弱い部分が必ずある。

そこを狙う様に剣術は出来ているので、金属製の鎧も一定以上の剣の遣い手の前ではあまり意味を成さない。

「なるほど、そういうものなんですか・・・」

実際に威力を見ていないので、流石にこの四人も半信半疑である。

「それはそうと、依頼の内容を詳しく確認したいんだが?」

そう伊織が切り出す。

「そうですね。 では、歩きながら確認して行きましょう。」

エリオットが依頼について話しだす。

「まぁ、概要は以前話したとおりです。 依頼地はペルーベンから南に延びる街道を2日程行った山間の小さな村で名前はパヤッバ村。ここが一週間前盗賊団に占拠されました。 そして4日前に村から逃げてきた子供が、村長であるレバンさん直筆の手紙と依頼料を持ってギルドに駆け込んできたので発覚しました。 盗賊団は村の女性達を人質に取り、村を支配しているようです。」

「なるほど、しかしなぜそのパヤッバ村が襲われたんだ? もっと大都市から離れている村らの方が安全だと思うんだが?」

伊織がエリオットに尋ねる。

「パヤッバ村は良質な鉄鉱石が取れるんですよ。 稀少鉱石の出る鉱山は国によって管理されてますからね。それにバヤッパ村には製鉄施設もありますから。 大方そこの利益目当てでしょう。」

エリオットは答えた。

「そうか、だとしたら村の人間たちはまだ生かされている可能性が高いな。 採掘も製鉄も盗賊団が出来る訳はないし、熟練の職人が大勢いる。 だからこそ皆殺しではなく人質を取っての支配という形を取っているのだろう。」

伊織が自分の考えを述べる。

「恐らくその通りでしょう。 まだ我々にも残された時間はありそうですね。」

ウォルトが賛意を示した。

「では盗賊団の人数ですが、大体15~20人程度とのことです。 頭の名前などはまだわかっていませんが、この規模ですとそこそこの大きさといったところでしょうね。」

エリオットが続ける。

「装備はほとんどが革鎧で数人金属製の鎧の者もいたらしく、得物は雑多だったとのことです。」

「ならば、飛び道具もあると考えておいた方が無難だな。」

「そうですね。ボウガンや弓使いも中にはいるでしょう。」

話は基本的にこの三人の間で進んでいく。

クリストフとマルティナは口を挟まず聞いているだけだ。

「そういえば、基本的なことなんだが。 盗賊団は皆殺しにしてしまって構わないのだろうか?」

伊織がそう尋ねる。

「何か証明や、もしくは生け捕りにしなければならない者なんかもいるのだろうか?」

「それはお気になさらないで構いませんよ。 我々の依頼達成は依頼主の村長かそれに準ずる者に証明書にサインしてもらえば済みます。 あとでギルド職員が確認に向かいますがね。」

エリオットが答える。

この世界では自力救済が法律で認められており、犯罪に対してはその受けた行為を超えない限りは罰せられることはない。

そして、ハンターギルドは公的の治安維持機関と認められているので、ハンターが正式な依頼でした行為はハンターギルドによって以外で処罰されることはない。

「そうか。 なら安心してかかれるな。」

次の瞬間一瞬伊織から発せられた空気にエリオットだけが反応した

「世の中には生きていてはいけない人間がいるものだ。」

そう一人つぶやく伊織の静かな殺気を感じ取れた者はエリオットだけであった。

――お前の剣で救える命があるならば迷わず刀を取れ。無闇に人を殺めてはならないが、その先に人の幸福があるのなら人を殺めることを恐れるな。そしてその業を背負い続けなさい。――

この言葉は伊織が20歳の誕生日の時に若先生が自身の太刀を授けた際に伊織に語った言葉である。

そして、その太刀は今も伊織の腰にある。


ペルーベンの喧騒から離れ、久しぶりの静かで暗い夜である。

天は満点の星々と三日月に彩られてる。

細い街道をグングンと進んだ伊織達一行は行程の半分以上を消化し、計画よりも速いペースで進んでいた。

そして太陽に合わせ、街道を少し外れた目立たない場所で野営を張っていた。

クリストフの作る料理は意外に美味しく、五人は腹を満たした所で交代で見張りに付いていた。

もちろん、一人ずつではなく代わる代わる必ず二人になるように交代している。

そして伊織がウォルトと交代で起きた時にはパートナーはマルティナだった。

「おおぉ~次は伊織兄さんだったのか~♪」

「ああ、よろしく頼むな。」

そう挨拶すると焚き火を囲むようにマルティナの隣に腰掛ける。

「帰ったらマルタの分の木刀も作らなければな。 本当は木刀も自分で作るんだが、今回は俺が作ろう。」

そう思い出したように伊織が話しかける。

「本当に!? やった~♪」

マルティナがうれしそうにそうこたえる。

この二人の会話はお互いに意図せずともこの話題になってしまう。

「そういえば、あたしもイオリ兄さんと同じ剣・・えっと、確か刀っていうんだっけ? それを使うことになるんだよね?」

マルティナが聞く。

「そうだな、俺の剣術は刀を用いる様に出来ているからな・・その剣をそのまま取っておいてもいいし、良ければその剣を刀に打ち直そうとも考えている。 マルタはどちらがいい?」

「そうだな・・この剣はウルブズとしてやってきた全てが込められたあたしの相棒なんだ。 もったいないからって埃を被せておくのは可哀想かな・・だから、打ちなおして! この剣をまた相棒にしたい!」

マルティナは静かに、しかし力強く言った。

「わかった。 しかしその前にいい武器職人を見つけるのが先だな。」

伊織はマルティナに答える。

「それなら、ウルブズ全員の装備の面倒を見てくれてるいい職人さんがいるよ!! その人に頼んでみたらいいんじゃないかな?」

マルティナはそう伊織に話す。

「その親父さんは超頑固だけど腕は確かだし、珍しい武器を持ってったら喜んで作りたくなる人だからさ! それにエンチャントも得意だから一緒にかけてもらえるしね!!」

チーム全員の装備類を全て任せている辺りかなり信頼しているのが伺える。

「エンチャントというと、どういったものなんだ?」

伊織がマルティナに尋ねる。

「エンチャント、正式には物質付加型魔術だね。武器とか防具に魔法陣を刻んで効果を与える魔法のことだよ。 硬いものじゃないと魔法陣が刻めないから、木とか石とか金属が多いよ。 使う人間の魔力で発動させるやつと、魔法石の魔力で発動させるタイプがあるけど、基本的には人間のほうが簡単だから一般的だね~。訓練の時にウォルトが使ってたウォールの支柱もそうだよ。あれを使うと速く、強く、大きいのが出来るんだ!」

そう言うマルティナの言葉に伊織は昨日の訓練での障壁を思い出す。

「なるほどな、そのエンチャントにはどんな効果のものがあるんだ?」

伊織が更に聞く。

「そうだね~色々種類があるよ! まあ多いのは耐久力の上昇とかかな? まぁものすごく硬い鎧とか炎の剣とかもあるらしいけど、魔法使い並みの魔力量が無いと使いこなせないから国の宝物とか貴族のコレクションとかになってるよ。」

そうマルティナが締めくくった。

「そうなのか、なかなか便利そうで不便なんだな。」

「そんなこと無いよ! 武器ぐらいのサイズで耐久力上昇とか重量軽減とかだったらそこまで魔力もいらないからかなり便利だよ!」

マルティナはそう伊織に話す。

実際、耐久力上昇はかなりポピュラーなエンチャントの1つで、中堅以上のハンターや隊長クラスの騎士はほとんどエンチャントされた武器を持っている。

因みにエリオットの槍もエンチャントされており、耐久力上昇に若干の柔軟性上昇と重量軽減の効果がある。

これはエリオットに合わせた重量としなりでしかも強く折れないという特注品である。

「なるほど。ペルーベンに戻ったら案内して貰いたいな。」

「もちろん!!私の刀もほしいしね!!」


この他にも二人は様々なことを語り合った。

お互いこの後に師と弟子の関係になることを意識しなくとも打ち解けていくのにそう時間はかからなっかった。

こうして、街道の夜は更けていく。

初の依頼の地パヤッバ村までもうしばらくの距離がある。


言葉だけは出ていたエンチャントの説明と二人の親睦回です。

武器は軽くすればいいってもんじゃないって思いましてこんな感じの設定です。

要は振るう人に合わせた得物を作るのが重要ってことだと思います。

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