第6話 黒龍の元に。
セイリュウとロンは大分分かりあえてきた。しかしセイリュウは一つの質問だけにはいつも言葉を濁してきたのだ。
それは
「黒龍は何者なの?」
という質問である。
町についたロンとセイリュウは町の上空に黒いうごめくものを見た。すぐに雲に隠れてしまったがあれは黒龍だと直感した。その時にセイリュウがつぶやいた言葉をロンは聞きもらさなかった。
「兄上…」
確かにセイリュウはそう言った。
その言葉を聞いてロンは悟った。
その日の夜。セイリュウは重い口を開きはじめた。
「実は黒龍は我が兄上である。昔、兄上は守護龍としてある土地にいた。兄上は優しい龍だった。数十年経ったある日、人間は町の周りの全ての生き物を捕り始め、そして捕り尽した。兎、亀、蛇、虫…生けるもの全てだ。その次は兄上に目を向けられたんじゃ。兄上は怒った。人間の自分勝手な考え、生命をかろんじた態度、自分に刃を向けた人間の目。それから兄上は黒龍となり理性を失った。ただ人間を破壊するのみ。そんな兄上の姿を見ていて我は兄上が可哀想になったんじゃ。」
ロンは黙って聞いていた。目を瞑りながら。
「だからといって兄を殺す理由は無い。」
ロンは全てを聞いてゆっくりと言った。
「黒龍を止める方法はないのかい?」
ロンの言葉にセイリュウはしばらく反応を示さなかった。
「…あるにはある。しかし…」
「しかし?」
ロンは言った。
「しかし…それには我の命だけではなくぬしの命も必要なのだ。それだけは避けねばならん…」
「俺の命でよければ喜んで捧げよう!」
ロンはまるでそんなことかと言わんばかりである。
セイリュウはしばらく考え、口を開いた。
「その方法は…。ロン。お前も龍になるのじゃ。龍とは形があってないようなものでな…。人間で言う所の精神を具現化したものなのじゃ。ロンと我が兄上の中に入り、兄上の精神を正しい方向へ直せればよい。だがその後はどうなるかわからん。精神が消滅するか兄上の中に取り込まれるか…良い結末はないであろう。それでもよいのか?」
ロンは静かに頷く。
「もともと人間のせい。ならば俺一人くらい捧げてやろう。」
次の日、ロンは龍になった。セイリュウが呪文を唱え腕輪を外すとロンの体の痣がロンの体から離れ始めた。
ロンの痣は赤くなり空を舞う。
ロンの精神が痣に取り込まれる。
ロンは赤き龍となったのだ。
セイリュウと共にロンは逃げる黒龍の元に向かい、ついに黒龍に追い付いた。
黒龍の体にロンとセイリュウは飛び込み黒龍の精神の中へ入っていった。




