第4話 宿命。
「ここは我の中の世界である。」
ロンは不意に声のする方に振り向いた。そこには一匹のトカゲがいた。青い鱗を持ち掌にのるくらいの大きさだ。
トカゲは続けた。
「お前には痣があるだろう?その痣を見せてくれぬか?」
ロンは服をめくる。
いつもは青紫色の痣であるが鮮やかな青になっている。
「やはり。では我にささげよ。」
ロンは何のことだかわからない。
…何か違和感がある。ポケットの中が動いている?
ロンはポケットに手を入れた。そういえばツァオにもらった石が入っていた、と思い出しながら。
石は微かに振動しながら青白い光を放っていた。
トカゲは叫んだ。
「それじゃ!我が鱗!」
トカゲが青白い石に触れた瞬間、石にヒビが入り二つに割れた。
中から青白い気体が出てきた。トカゲは深く息を吐くと勢いよくその煙を吸い込んだ。
次の瞬間、周りを包んでいた世界が変わった。木々は成長し水は透明度を増す。
ロンはわけがわからなかった。何が起きてるんだ?ここはどこだ?コイツはなんなんだ?
「ココは我の世界だといったじゃろう。正確に言えば我が精神世界である。我は黒龍との戦いで滅ぶ寸前であった。しかし滅ぶわけにはいかない。我はトカゲに姿を変え身を潜めた。ある程度までは力が回復したがやはり主がいないと治りが遅いものだな。」
ロンは黒龍、という言葉に反応した。
ツァオじいさんがよくしてくれた伝説の中に出てくる龍のことでは…?そういえばコイツはセイリュウと名乗っていたな。…でもまだよくわからない。そもそもなんで僕なんだろう。
トカゲは言った。
「お前は我が主の生まれ変わりである。我が主は死ぬ間際に俺と同じ痣を持つものが現れるまで待て、と言った。お前と同じ龍の痣だ。」
なんでコイツは俺の考えてる事がわかるんだ?ロンは思った。
「お前は今我の一部である。当たり前であろう。」
トカゲは言った。
「さぁ、旅に出るぞ。黒龍を探さねば。」
トカゲは続けた。
「待ってくれ。どうやって探すんだ?何をしようとしてるんだ?」
ロンは初めて口を開いた。
「まずは我が鱗を探さねば。アレで我は元の姿に近付くのだ。そして黒龍を見付ける。黒龍も恐らく弱っているだろう。我が力を取り戻していけば場所はわかるはずだ。なんとしてでも黒龍を倒さねば。」
「今からおぬしを祠に戻す。先程取りかけた箱の中には腕輪があるはずじゃ。その腕輪の中でしか我は外でうごけん。腕輪をつけられるのは主の生まれ変わりであるそなただけなのじゃ。」
トカゲはゆっくり諭すように言った。
その次の瞬間、世界は歪みロンは意識を失った。