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【1】学院(4)

美味しかった。食事の時間はやはり至福。乱された心もだいぶ落ち着いた。アティーのそれを見計らったように隣で、食後のデザートを食し終わったカナリヤが話しかけてきた。


「もうすぐ、修了式ですわね~。あ~美味しかった~♪」

「そうですね。」


あと数日で12歳のクラスが終わり、残り学院生活もあと2年。とはいえ、2年はアティーにとって長い苦痛の時間に感じる。


「ねぇ、アティー、お願いがあるの。こんどのお休みに、アレギレアに遊びに行きたいのだけど、案内役を頼んでも良い?」


「えっ?…アレギレアにですか?」

「そう。アティーが前、話してくれたじゃない?協会の物語。」


いきなりのカナリヤのお願いに、内心あせる。


「協会の物語ですか・・・。」

「そ~う!私もその物語をきいてみた~くなったの!ぜひ協会に行ってききた~い♪」


たしかに、アティーの父親が治めるクロード領にある教会の話をカナリヤにしたことはあったが、その時、カナリヤはいつもの調子でほわほわと聞いていただけであった記憶があったため、なんで今更?と少し疑問に思ったのだ。


「だ、ダメですよ。仮にもカナリヤ様は王女様じゃないですか。城への訪問ならまだしも、協会へなんて。」


そして、カナリヤにはクロード城ならまだしも、協会にはきて欲しくないという感情が渦巻く。


「ぬ~。いいじゃないー。アティーが言ってたのよ~?たまにルーナ様もいらっしゃるってー。だったら、私も良いでしょう~?」


ルーナ様とは、【ルーナ=アレギレア=ラトルワ】(4)

アレギレアの第一王女とラトルワ帝国第二皇子の娘で、階級はラトルワの貴族となっていた。ラトルワの貴族階級は、他の王族とほぼ同等だ。彼女は、なぜかアレギレアの次期王様であるアルト様と一緒によく協会に訪れていた。それは、クロード領の協会にいる年老いた神父が、アルトの祖父にあたるためでもあった。そのちょっと変わった神父の話す物語。アルトもルーナもそれをききにきているようだった。アティーもそれがとても気に入っていた。そんなような話をした記憶はある。


「いいんじゃないの?」


「アドル…。」

どこから聞いていたのか、食器を下げようとしていたアドルが後ろにいた。


「アティーじゃ頼りないだろ?俺がご案内するよ?グルクの王女様。」

「ほんとですの♪ぜひぜひお願いしたいですわ~♪協会の物語~♪」


ほわほわんとした笑顔でどこかよくわからない間ののびた話し方でカナリヤが答える。それになぜか心がもやもやした。


「クロード領のあの教会だろ?どうせ俺もクロードに滞在予定だったし。クロード男爵に連絡いれとけば可能だろう?」

「俺も行きたいアレギレア!アドル。いいよな。な?」


赤毛のツンツン頭のジンがのってくる。


「ジン大丈夫なのか?学院卒業後にフラフラして。」


学院を卒業した生徒はたいてい国での仕事や教育が始まるため、国外へ遊びに行くなんてことはない。アドルもジンも、14歳のため、今年で卒業だ。


「だいじょーぶ!俺、5男だよ5男。気楽なの。」

「私も3女なんですの!気楽なの~♪」


カナリヤがジンに真似て嬉しそうに言う。そういう問題なのか?とアティーは心の中で突っ込んだ。


「どうせだったら一緒に学院から直で言った方が楽だろ?というわけで、アティー。お前クロード男爵に連絡入れとけよ。お前らは各自の親に連絡ー。」


そんなアティーの突っ込みを無視するように、アドルは話をすすめていく。


「おー!」

「・・お~♪」

「・・・」


「いいな。よし。じゃあ、いこうぜジン。また、修了式後なカナリヤ王女。」

「俺たちは卒業式だけどねん。じゃーね。カナリヤ王女、アティーもよろしく!」


アティーは待ち遠しかったはずの休みに陰りがみえたことで、心がまた重くなるのを感じた。


アティー=クロード=アレギレア(12)

カナリヤ=グルク(12)

アドル=フェーべル=アレギレア(14)

ジン=クルー=シルタルジー(14)

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