仲良し3人組 まずいの種類
今回は仲の良い3人が3方向にズレています。
昼休み。会社の喫煙ルーム。
換気扇の音だけが、やけに大きい。
「よう、新婚。最近どうよ?」
「ん?…よう。メガネ、おにぎり。」
「どした〜。喧嘩でもした?」
「……実はさ」
新婚が、ぽつりと言った。
火をつけたタバコを見つめたまま。
「嫁、まずいんだ」
一瞬、空気が止まった。
「……マジか。」
メガネが低く言う。
おにぎりも、口を開く。
「……どのくらい?」
新婚は少しだけ間を置いた。
「……結構、きてる」
沈黙。
「でもさ」
メガネが口を開いた。
「結局、お前が選んだんだろ?」
咄嗟に新婚が顔を上げる。
「……は?」
「最後までしっかり面倒見ろよ」
新婚の眉がピクリと動く。
「最期なんて言うなよ」
「いや、現実見ろって」
メガネはため息をついた。
「もう限界なんだろ?顔に出てるぞ」
「だから違うって――」
おにぎりが割って入る。
「いや、でもさ」
「今、かなり辛いよね?」
新婚がおにぎりを見る。
「外でどうにか出来ないの?」
「は?」
「帰り付き合うけど。いい店知ってるよん」
「外でとか何言ってんだよ」
メガネうなずく。
「いや、それ正解かもな。一回距離置いた方がいい。俺も行くよ」
「そっ、一回リセット〜」
新婚が一瞬固まる。
「距離ってなんだよ」
「リセットってなんだよ」
「まだ新婚だぞ」
メガネとおにぎりが顔を見合わせる。
「だからだよ」「だからでしょ」
ハモった。
「今のうちにだろ」
「無理しないで」
新婚のこめかみがピクつく。
「だからって、それは違う…だろ?」
真剣にメガネが言う。
「何が違うんだよ」
「隠すなって。見てたら分かる」
おにぎりも続ける。
「そうだよ。限界来る前に対処しないと」
「対処って…なんだよ」
「だから外で――」
「違う!!!」
喫煙ルームに声が響いた。
沈黙。
換気扇の音だけが、やけに大きい。
メガネが口を開く。
「でもさ、そういうのって顔に出るって言うじゃん?」
「気がつかなかったのか?」
新婚が即座に返す。
「気がつくわけないじゃん。急だぞ!!」
メガネとおにぎりが同時に反応する。
「……ん?」「……は?」
メガネが首をかしげる。
「急?」
「そうだけど。」
「嫁さん気が強すぎて、お前の立場がまずいって話だよな?」
おにぎりがすぐに否定する。
「バカ、違うって!飯まず嫁の話でしょ?」
新婚は、深く息を吐いた。
「……普通に体調だよ」
「最近ずっと悪そう」
二人が止まる。
「ずっと、気持ち悪そう」
間。
「……あ、そっち?」
メガネが言った。
「そっちも何もねえよ」
おにぎりが頭をかく。
「いや、てっきり……」
「何だよ」
少しの沈黙。
メガネがタバコをもみ消す。
「……もしかしてあれじゃね?」
おにぎりもうなずく。
「あれかもね。」
新婚も、少しだけ力を抜いた。
「あれってなんだよ。」
メガネが言う。
「このクソ鈍ちんが、結婚後2人でなんか作って無いか?」
新婚答える。
「パズル?」
「……鈍すぎて気持ち悪い」
おにぎりにディスられる。
空気が、少しだけ戻る。
「お前試されてるんだよ、お子ちゃまだし。嫁さん性格悪そうだし」
「よく考えてー。」
2人がじっと見る。
その時。
新婚がぼそっと言った。
「あれかっ!」
「マジか?」
「……うん辻褄合う」
ふたりは顔を見合わせる。
「マジで心配したじゃねぇか」
「僕はワクテカしてましたよー」
「今日は早く帰れよ。」
「ありがと、メガネ、おにぎり」
新婚の顔が明るくなった。
休憩が終わる。
「でもおにぎり、お前すげーな。」
「ん?」
「……飯まず。よくわかったな。」
間。
喫煙ルームに、小さく笑いが広がった。
換気扇の音は、相変わらず大きかった。
読んでいただきありがとうございます。
この作品はコントをイメージしながら作りました。
次回作は全6話。ifの話です。
ifの後日談みたいな位置付けかな。
よろしければ足を運んでみてください。




