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全魔力解放、そしてプリンの帰還拒否

実力差は圧倒的だった。


 三人で挑んでようやく拮抗。

 いや、わずかに押されている。


 それでも――もう諦めない。


 月野が魔法を放つ。

 リルが補助し、月野が疲れれば交代する。


 二人は中距離を維持し、呼吸のように攻撃を繰り返す。


 だが一つ眼がどちらかを狙えば、終わりだ。


 その均衡を支えているのは――


 ジル。


 盾として、一撃一撃を受け止める。


 盾は砕け、身体も限界だ。


 それでも退かない。


 退けば、後ろが死ぬ。


「お前たち。全魔力を使え!」


 ジルの咆哮。


「失敗したら……」


「どのみち、それでダメなら負けよ」


 月野が即答する。


 リルの不安を、月野が額を小突いて吹き飛ばす。


「仲間でしょ。勝てるわ」


「……情けないですね。行きます」


 二人は手を交差させる。


 全魔力解放。


 体内に残す余力はゼロ。


 すべてを右手に。


「行きますよ!」


「避けなさいよ!!!」


 二つの魔法が絡み合い、一つに融合する。


 空間が軋む。


 一つ眼が退こうとする。


「逃がすかよ!!!!」


 ジルが押さえ込む。


 そして――


「魔観光殺法では死なないぞ――離脱!」


 本体である盾を投げ捨て、身を引く。


 直後、光が爆ぜた。


 一つ眼を呑み込む、極大の魔力。


 爆発の中心で、黒い影が――消えた。



「その程度では我を倒せないぞ。いや、プリンを取り返せないぞ」


 魔王がさらに一口。


「それ以上、食うなああああああああああ!!!!」


 勇者、さらに強化。


 突進。


 拳。


 だが寸前で止まり、跳躍。


「無駄な動きを」


 魔王が視線を落とす。


 勇者の手には――プリン。


「いつの間に!?」


 ゴクリ。


 飲み込まれる。


 沈黙。


「ふぅ。うま。……で、あんた誰?」


 正気。


「我は魔王だ」


「へえ。じゃ、帰るわ」


 背を向ける勇者。


 魔王、怒る。


「無理やりでも帰ってもらうぞ」


 ブラックホール展開。


 強制帰還魔法。


「いやだああああああ!!!!」


 吸い込まれる勇者。


 その胸が――光る。


 勇者の印。


「帰りたくない!!!!!」


 叫び。


 魔法、消滅。


 帰還魔法が破壊される。


「これが……真の勇者の力か」


 だが暴走。


 空間魔法も崩れかける。


 魔王は最後の切り札――予備のプリンを突っ込む。


 甘さが世界を救う。


 勇者、気絶。


 印、消失。


 地上。


 祈り続けていた優一。


「作戦は」


「失敗だ」


 勇者は戻せなかった。


 だが。


「ここまでやってくれて嬉しいよ」


 優一は笑う。


「もう少しだけ、友人と一緒にいられる」


 魔王の胸が熱を帯びる。


「あちらは?」


「勝ったらしいぞ」


「じゃあ一勝一敗だな。プロジェクトX、引き分け」


 二人は並ぶ。


 勇者は転がっている。


 月は静かだ。


 負けではない。


 勝ちでもない。


 だが前に進んだ。


「次こそは」


「ああ」


 魔王と一般人。


 奇妙な同盟は、まだ続く。

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