孤独の終焉と、黄金の勇者
「うわああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
真夜中の住宅街に響く絶叫。
優一は全速力で駆けていた。
背後には――勇者。
いや、もはや獣。
唾液を撒き散らし、プリンだけを見据え、銃弾の如き速度で迫るダラク。
(強化魔法なかったら百回死んでる……!)
角を曲がる。
跳躍。
空から降ってくる影。
「うおおおお!?」
紙一重で回避。
そして目的地へ辿り着く。
「着いた! 後は任せました!!!!!」
優一はプリンを天へ放り投げる。
ダラクの視線も天へ。
――その先に。
「っふ。やっと姿を拝めたぞ。勇者よ」
空中に立つ魔王。
次の瞬間、空間が閉じる。
勇者と魔王を隔てる結界。
優一は膝をつき、祈る。
成功しろ。
全て。
全部。
※
「手を出さないで! これはわたしの戦いなの!」
一つ眼と対峙する月野。
特大魔法が直撃する。
――しかし。
片手で弾かれた。
絶望。
炎に包まれたあの日が蘇る。
膝が崩れる。
一つ眼が迫る。
終わり。
そう思った瞬間――
「ちょっと、何諦めてるんですか!」
リルの声。
ジルの防御。
仲間。
その言葉が、月野の止まっていた時間を動かす。
独りじゃない。
とっくに終わっていた孤独。
涙を拭い、立ち上がる。
「足引っ張らないでね」
「そちらこそ!」
三人が並ぶ。
今度は復讐じゃない。
共闘だ。
※
「さあ、勇者よ――」
「ガルルゥゥゥ!!!」
魔王の言葉など届かない。
プリンへ飛びつく勇者。
魔王は避ける。
ため息。
そして。
「なら、これならどうだ?」
プリンの蓋を捨てる。
勇者の速度が跳ね上がる。
そして――
魔王は、食べた。
「辞めろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」
地鳴り。
結界が震える。
魔力が爆発する。
獣ではない。
怒りだ。
奪われる怒り。
初めての喪失。
金色の光が身体を包む。
バチバチと弾ける魔力。
髪が黄金に染まる。
――勇者の印。
「プリンんんんんんんんんん!!!!!!!!」
地面を砕き、瞬間移動の如き速度で魔王へ。
光の剣が出現する。
斬撃。
魔王の頬に赤い線。
沈黙。
そして魔王は笑った。
「フハハハハハ!!! そうだ。それでこそ勇者だ!」
黄金の勇者。
怒りを得て、初めて“勇者”になる。
「さあ第二回戦と行こうじゃないか!」
夜が割れる。
勇者と魔王の本気がぶつかる。
そしてその衝撃は、結界の向こう――
一つ眼との戦場へも届こうとしていた。




