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魔力解放、そして轟音

 夏の午後六時。

 それでも空はまだ明るい。


 初めての部活動は、月野の乱入とチャイムによって強制終了となった。


 帰宅した優一は自室へ戻る。

 リルは興奮冷めやらず、部活動の感想を延々と語り続け、

 ジルは今夜の戦闘に備え“盾”――人間の姿を整えていた。


 帰り際、魔王から連絡先を渡された。

 今日の一件で、彼もすべて察したらしい。

 協力関係は、さらに一段階深まった。


 スマホが震える。


 登録されていない番号。

 だが、誰かは分かる。


 優一は悟られぬよう、ベランダへ出た。


「もしもし」


『我だ。今、話せるか』


「大丈夫です」


『勇者を覚醒させる方法。途中で遮られたな』


 優一は小さく息を吸う。


「正直……馬鹿げてますよ。今さら思いついた自分が恥ずかしいくらいで」


『構わぬ。我は全力で手伝う。失敗しても、可能性は残る』


 胸が熱くなる。


「魔王さん……」


『呼び名はどうでもいい。それで?』


 優一は話した。

 ここ数週間、勇者と生活して気づいた“弱点”。

 月野の存在を踏まえて練り直した作戦。


 成功率は低い。

 だが、他に道はない。


『なるほど。奴の本質を突くか』


「正直、自信は……」


『やってみよう。勇者が空振りでも、もう一つの問題は解決する』


「今夜の実験次第です」


『見学してもよいか』


「もちろん。あと敬語やめましょう。同胞なんですし」


『……なら、お前も敬語はやめろ』


「わかった。じゃあ今夜、結果を見ててくれ」


『ああ』


 通話が切れる。


「今夜で、全部決まる」


 拳を握った。


   ◇


 夜十一時。


 予想通り、月野からの電話。

 優一はワンコールで出て、三人で集合場所へ向かう。


「揃ったわね」


 住宅街の外れ。

 月野は腕を組む。


「今日も基本は同じ。でも、ジルだったわね?」


「ジルだ」


「そう。それ。魔力を一時的に解放して強いシビトを呼ぶ。面白い発想ね」


 月野は息を吐く。


「今まで魔力切れが怖くて考えもしなかった。でも今は四人いる。それに――」


 ちらりとリルを見る。


「どこかの魔法使いも、多少は使えるようになったみたいだし?」


 リルの頬が膨らむ。


「嫉妬ですか? 見苦しいですね。まあわたしと対等……いえ、少し下くらいにはなったみたいですし? もっと強い敵でも問題ありませんよ。わ、わくわくしますね!」


 完全に虚勢だった。


 優一とジルは目を合わせ、無言でため息。


「最初から全開は危険よ。数を減らしてから」


「分かってますぅ!」


 いつもの日常。


 だが、今夜で終わるかもしれない。


   ◇


 一時間半。

 通常のシビトを処理。


 かつては恐怖だった。

 今は違う。


 実力差が明確になったからだ。


「そろそろ数が減ったわね」


「やりますか」


「わたしが解放する。あなたはやらないで」


「同時にやったら倒せなくなりますもんね。分かってます!」


「はいはい」


 月野の空気が変わる。


 風が巻き起こる。

 小石が浮く。


 魔力解放。


 肌が焼けるようにヒリつく。

 優一だけが、強烈な違和感を覚える。


 これが異界の力。


 やがて、嵐が止んだ。


「……こんなに出したの久しぶりかも」


 静寂。


 そして――


 ドンッ!!!!!


 地面が震える。


「早い……!」


 一分も経っていない。


 住宅街の闇に響く轟音。

 魔力に釣られた存在が、もう現れた。


「行くわよ」


「分かってます! わたしが前衛!」


 リルが駆ける。

 月野は屋根へ跳ぶ。


「俺たちも行くか」


「ああ。優一は後ろだ。何かあれば守る」


 低く響く声。


 こんな状況でその台詞は反則だろ、と一瞬思いながらも、


 優一は頷く。


 闇の先。


 轟音の源へ。


 今夜の結果が、すべてを左右する。


 ――そして彼らはまだ知らない。


 現れた“それ”が、

 想定していた強敵とは別次元の存在であることを。

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