プロローグ:クラウンキラー
※ この作品はフィクションです。実在の人物や団体、事件などとは関係ありません。
2225年。日本。
かつては東京と呼ばれていた土地。
2020年ごろから海外の移民の受け入れが増え続け、この時代には純日本人も少なくなってきた。十人集めて三人いれば多い方だ。
しかも生活は良くならないまま、増税も止まらず30パーセントにまで届いた。煙草なんてひと箱、税抜価格平均2.200円になる始末。
もうこの国はおしまいだ。
誰しも心の中で唱えている。
しかも我々の心を疲弊させていることはそればかりではない。
2026年、とある月の13日の金曜日。
その歴史的な日に初めての〝アビリティ所持者〟が誕生した。
アビリティ、すなわち超自然的な能力。俗に言う異能力者である。
まるでコミックや小説のような話に誰もが興味を持ち、賞賛した。
それこそヒーロー活動をするアビリティすら出てきた。
アビリティは徐々に増えていき、日常に溶け込みだす。
名のある科学者だったか、はたまた動画投稿サイトの考察主が何気なく呟いた。
「アビリティの能力ってさ、なんだか死に方みたいだよね。炎とか雷とかそれっぽいのも多いけど、触れた相手を老いさせるとか不健康にさせるとか。——これは俺の妄想だけどさ。その人の前世の死因が能力として出現してるってことじゃないの?」なんて。
最初は根も葉もない噂だった。
ただし検査の元、アビリティの脳にもっとも恐怖を与えるものは自身の能力に関係したものだった。
恐怖症で前世の死因が分かる、そんな非科学的な結論。
アメリカの大統領まで「そうに違いない」と言うのだからなんらかの証拠が出たのだと思う。
アビリティの能力は前世の死因である。
つまり彼等は不慮の事故や殺人事件の被害者なのだ。
火災で亡くなった者、入水による死、交通事故、他殺。
なんて哀れなのだろうか。
しかし民衆は思った。
では電気は? 落雷か、はたまた……。
他人を縄で縛りつけるアビリティは? 拘束されて他殺、はたまた……。
ひとりの赤ん坊のアビリティで、結論が出た。
〝2189年、7月17日。ギロチンを無数に出現させることが出来る赤ん坊が誕生〟。
アビリティの能力は前世の死因である。
これは確定事項だ。
よって事故・他殺と思われるアビリティは被害アビリティと尊重され。
処刑・自死と思われるアビリティは加害アビリティと呼ばれ、差別の標的とされた。
そんな差別にも負けず警察官になった男がいた。
アビリティはギロチン。新聞の赤ん坊。
加害アビリティが、なんて反対意見も多かったが、彼以上に真面目な人物はいなかった。
いつも笑顔で他人のことを思いやれる好青年である。
加害アビリティのせいか、巡査部長からの昇進はなかなか出来なかったが幸せな家庭を持つことが出来た。
妻と息子、男はそれだけで十分だと、いつも笑顔を絶やさなかった。
けれどささやかな幸せは続かなかった。
連続殺人鬼であるピエロ姿の大男に、息子の命を奪われてしまう。
間もなくして路地裏で死体が発見される。
ギロチンで身体の四肢・あらゆる部位を切り落とされた肉片が散らばっていたという。
顔も確認出来ず、指紋を照合してようやくピエロ姿の連続殺人鬼であると公表された。
その殺人は家族愛による復讐であったけれど、現場があまりにもおぞましかったため、息子を奪われた男は兇悪殺人犯として刑務所に収監されることになった。
刑期は120年、仮釈放なしの終身刑。
しかも犯罪者としての異名まで付けられてしまった。
〝クラウンキラー〟。
これがギロチンという加害アビリティを持った男の顛末である。
鬼灯 建。今や珍しい純日本人。あれから十年経つから今頃36歳になる。
「鬼灯巡査部長。……いえ、クラウンキラー。この刑務所から出て、私の指揮下でアビリティおよび異常犯罪者の退治をする気はありませんか?」
自分よりも遥かに若い女性警官が手を差し伸べる。
あやの屋と申します。
高校生時代に練っていた作品のリメイク。
異能者VS異常者がテーマです。元々はヒーロー物でした。
影響作はほとんど海外作品。バッ⚫︎マン、羊たちの⚫︎黙、クリス・⚫︎ーターのミレ⚫︎アム。お察し下さい。
ブックマーク、評価いただけたら大変喜びます。
一読ありがとうございます。
暗いテーマにはなりますが救いのある物語にしていきたいです。




