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小さなアリと、大きな木の実

「うんしょ、うんしょ」


その小さなアリは、とても大きな木の実を見つけました。

しかし大き過ぎて、一匹では運べません。

なので触覚を使って仲間と交信し、助けてもらう事にしました。


「すごい大きい木の実を見つけたんだけど、運ぶの手伝ってよ。場所はタンポポ丘の近くなんだけど」


5匹のアリ仲間に連絡します。


「えー今オレ持ち場離れらんないし」

「女王様から言われてる事以外、なにもやらない様にしてるんだ」

「友達と遊びに行く予定があるから、ちょっと無理かな」

「布団から出たくない」

「わかった、すぐ行くねー」


一匹が来てくれる様です。

アリの巣の構成員は、8割が働き者というのが一般的な割合のはずですが、僕のいる巣は少し違う様です。


「まったー?」


ギーが来てくれました。


「ううん、まってないよ。来てくれてありがとう」

「木の実ってこれ?おっきいねー」


ギーは木の実を軽く持ち上げるようとしましたが、びくともしません。


「二人で運べるかな?」

「ともかくやってみよう!」


ともかくやってみます。


「うんしょ、うんしょ」

「うー、無理かも」

「そう…だね」

「はー」


そうこうしてる間に、日が暮れて来たので二匹は巣へと帰りました。

夜ご飯を皆んなで食べていると


「みんな、どうして今日手伝いに来てくれなかったの?あの木の実があれば、この巣をもっと大きく出来るのに」


ドーが言うと


「持ち場離れられないって言っただろ」


カーが答えます。


「持ち場よりも、木の実の方が大事でしょ。僕はみんなの事を考えて行動してるのに、どうして分かってくれないの」


ドーが言うと


「持ち場だって大事な仕事だろ」


カーが答えます。


「木の実があれば、皆んなに栄養が行き渡るんだよ!何でそれが分からないの!面倒くさかったからこなかっただけなんでしょ!ちゃんと働いてよ!」


ドーが怒ると


「自分だけがみんなの事考えて仕事してるみたいに言うなよ!オレだって真面目に働いてるんだよ!」


カーも怒ります。


他の皆んなは


(ご飯が不味くなるなー)


と思いながら黙って食べていました。


すると、ドーが


「もう知らない!」


と言って出ていってしまいました。


「ギー頼む」


マローが言うと


「うん、任せて」


ギーがドーの後を追いました。


「全く、お前らいつも喧嘩ばかりだなー」


マローが言うと


「あいつが突っかかってくるから悪いんだよ」


カーが答えます。


「困った物ですね。でも明日は手伝いに行ってやりますか」


デンが言うと


「僕は行かないから、後よろしく」


トンは布団に入りました。


「オレも行かないから」


カーは言うと部屋に行ってしまいました。


「バラバラだな俺たち」

「困った物ですね」



ーーー翌朝ーーー


ドーとギーは朝から木の実へ向かいました。

二匹で力を合わせると、ほんのちょっとだけ動かせます。

それを繰り返してジリジリ巣を目指します。


「はー、3分の1ぐらいは来たかな」

「んー、3分の1は言い過ぎ、5分の1ぐらいかなー」


二匹がちょっと休憩していると


「おーい!」


マローとデンが来てくれました。


「わー、来てくれたんだ。ありがとう!」


ドーがお礼を言うと


「昨日は手伝いに来なくてごめん」


二人は謝ってくれました。

ドーも、自分にも独りよがりな所があったと謝りました。


「よーしじゃあ4人で一気に運ぼう!」

「おー!!!!」


今度は4匹で運びます先程よりズンズン進みます。


「はあはあ、半分ぐらいは来たかな?」

「いや、半分は言い過ぎだよ、3分の1ぐらいかな」

「巣が遠い…」

「みんな、もうちょっとだよ。がんばろー」

「おー!」


4匹で運んでいると


「よう、オレも手伝うわ」


カーが来てくれました。


「カー!?持ち場はいいの?」

「ああ、交代の時間になったから。それと、昨日は言い過ぎた、ごめん」

「ううん、こちらこそ、持ち場より木の実の方が大事とかひどい事言ってごめんなさい。持ち場も大事な仕事なのに」

「いいって」


仲直り出来ました。


「よかったねー」

「素直が一番」

「よし、一気に運ぼう」

「おー!!!!!」


5人になってさらにズンズン進みます。


「もうちょっとだ、巣が見えて来た」


誰かが言ったところで、ポツポツと雨が降って来ました。


「やばい、急がないと川が出来て流されちゃう!」


5匹は大急ぎで運びますが雨の勢いはどんどん強まり


「みんな、せっかく手伝ってもらったのにごめん!もう諦めよう!これ以上は危険だよ!」

「あと、もうちょっとなのに!」

「うー」

「諦めるしかないのか」

「何とかならんか」


お手上げ状態、万事休すと思ったその時


「おーいみんなー!」


トンが来てくれました。


「トン!?寝てたんじゃないの?」

「布団が湿気を吸うとさ、すごく重くなるんだよね、だから出ちゃった」


照れ笑いを浮かべるトン、ですがこの中で1番の力持ちでした。

トンが力を込めると、もの凄い勢いで木の実は動き出しました。

トンはこの時のために、ずっと寝て力を溜めていたのでした。(たぶん)


「これならいける!」


あっという間に巣に着いて、みんなで解体して中へ運びます。

木の実はとても美味しかったので巣のみんなが喜びました。

そして女王様からも褒められ、巣はもっと大きく、仲間はもっと増えたのでした。


おしまい



大きい木の実を運んでいる小さいアリを目撃したので、書いてみました。

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