8/67
ぺたの価値観、ここにあらず
朝餉を終えて、庭を散歩していた俺はふと気づいた。
この世界に“ぺた信仰”は存在しない。
目に入る女性たちは、すべて緩やかな装束に身を包み、柔らかい曲線を漂わせていた。
けれど誰ひとりとして、それを“誇っている”わけではなさそうだった。
「貴族の奥方とて、胸の大きさなど語りませんわ」
はるさんの言葉が耳に残っていた。
「じゃあ……俺は異端中の異端ってわけか……」
けれどそれでこそ燃えるというのが俺の魂である。
この世界の常識に、“ぺた”の価値を刻み込む。
――それが俺の使命。
(ピピッ……微弱反応:PETA63%)
ふと、遠くの回廊に少女の後ろ姿が見えた。
小柄な体、控えめなシルエット。
反射的にセンサーが動いた。
「お、おい待て! そこの君!」
少女がくるりと振り向いた瞬間――
(PETA……99.9%)
俺の運命が動いた気がした。
毎朝6時に投稿しますので、お楽しみに!
感想・評価など励みになります!