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はじめての平安ごはん

あずまやに残された膳の前で、俺はひとり静かに箸を取った。


(……さて)


改めて目の前の料理を見つめる。


焼いた鯛の切り身。炊いた小豆飯。青菜のおひたし。

そして例の「豆汁」――平安時代の味噌汁的存在。


(腹が……減った)


さっきの“ぺた混乱”で心が疲弊していたが、胃袋は正直だった。


箸を構えるとき、ふと気がついた。


(……箸、太っ!)


現代人の感覚からすれば、平安時代の箸はまるで木の棒。

細やかな盛り付けもない。見た目に騙されてはいけない。


恐る恐る、豆汁をすする。


「……!」


とろりとした舌触りに、わずかに塩気のある優しい風味が広がる。

大豆本来の甘味が、胃にじんわり染み渡る。


(うまい……!)


「やるじゃねぇか、千年前の日本!」


次に、小豆飯。

一口運んだ瞬間、ふわりと鼻を抜ける香ばしさ。

もち米と小豆の、絶妙な甘味と塩味のバランス。


(これは……雑穀ブームより先を行ってるかもしれん)


おひたしは、ほろ苦さがほどよいアクセント。

鯛の焼き身は、淡白ながらも皮目が香ばしく、噛むたびに旨味がじんわり出てくる。


「なんて贅沢な朝ごはんだよ……」


俺は箸を止めず、夢中で平安グルメに食らいついた。


どれも派手じゃない。味は素朴。

でも、それぞれの素材が生きていて、調和してる。


まるで、ぺたんこ女性たちのように――

控えめだけど奥深く、知れば知るほど美しい。


「……これが“平安の味”ってやつか」


完食した膳の上に、静かに手を合わせた。


そのとき、後ろからそっと足音が。


「……あの、若様」


振り返ると、さっき逃げたはるさんが、顔を真っ赤にして立っていた。


「その……さきほどは、失礼いたしました」


「いや、こっちこそ変なこと言ってごめん」


「いえ……あの……わたくしの胸が……若様の理想というのは……その……」


彼女は頬を染めながら、指をもじもじさせていた。


「……ほんとうに、変わった方ですね」


「はは……よく言われます」


「でも……嫌いでは、ありません」


――ぐああああああああああ!!!


こ、これは……!


地味に、いや、確実に……フラグが立った……ッ!!


俺の中で、ぺたセンサーが高らかに警報を鳴らす。


(ピピピピピピ!! PETA共鳴反応:100%)


俺は思った。


この世界……最高かもしれない。


(第8話につづく)

毎朝6時に投稿しますので、お楽しみに!

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