召使とぺたの誤解
朝風呂を済ませ、衣をまとった俺は、庭先に設けられたあずまやへ通された。
柔らかな春風が流れ、梅の香りが漂う。
「朝餉をお持ちいたしました、若様」
ぺたんこだった。
昨日から担当してくれている召使の少女。年の頃は十五かそこら。
艶やかな黒髪を高く結い、眉を細く整えた上品な顔立ち。
けれど、胸元はまっすぐ平らに落ちている。
(ピピッ。PETA:89%)
「おぉ……ありがとう」
俺は手を合わせながら、木の膳に並んだ料理に見入った。
焼き魚、炊いた小豆飯、青菜のおひたし、そして味噌汁のような汁物。
どれも慎ましくも丁寧な盛り付けで、思わずよだれが出そうになる。
「この……味噌汁、うまっ」
「それは“豆汁”と申しまして、大豆をすり潰して煮たものです」
「マジか。平安豆乳スープじゃん」
「とうにゅ……?」
首をかしげる彼女が愛らしい。
その仕草一つ一つが、俺の中のセンサーをビリビリ刺激してくる。
「ところで若様……」
「うん?」
「わたくしの胸、何か……お気に召さぬところでも……」
「は?」
彼女はうつむき、膝の上で指を組みながら言った。
「その……昨日から、わたくしを見るたび、視線が胸元に……あの……」
「あ、いや、それは……!」
ちがうんだ。君のぺたが至高だから、ついセンサーが反応して……!
「気に障りましたら、お叱りくださいませ。ただ……その……」
耳まで赤くして俯く彼女。
誤解だ。俺はむしろ褒めてるのに……!
「違う! 全然違うから! むしろ……むしろ……」
「むしろ?」
「俺は……君のそれを……崇拝してるんだ!!」
「…………はい?」
空気が止まった。
庭の小鳥すら鳴くのをやめ、風も凪いだ。
「わたくしの……胸を……?」
「いや……ちが、いや、ちがわなくも……!」
取り返しのつかないことを言ってしまった。
「えっと、君の名は?」
「は、はる……です」
「はるさん! 君は俺のぺた道にとって、理想の……」
「わあああああああああっ!!!」
「お、おぉうっ!?」
彼女は真っ赤になって逃げていった。
膳の汁椀がぐらぐら揺れたまま。
(……しまった。完全に変態扱いだ)
自業自得だ。
でも、俺は誓う。
この世界で、誤解されようとも、ぺたの美徳を広める――
それがこの魂に課せられた使命なのだから。
(第7話につづく)
毎朝6時に投稿しますので、お楽しみに!
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