表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/67

裸で目覚める貴族の館

「ん……あれ?」


目が覚めると、着ていたはずの直衣が消えていた。

代わりに、肌に直接触れるふとんの柔らかさと、微かな香の匂いだけがあった。


「……裸?」


身体を起こすと、そこにはひのき造りの豪奢な風呂。

朝日が障子から差し込み、湯煙がゆらゆらと漂っている。

そして、その湯船のすぐ脇で、布を持って控えている少女がひとり。


――ぺたんこ。


(ピピッ! PETA:92%)


「お、おはようございます。若様。朝湯のご準備が整っております」


「いや、あの……君、なんでそんな堂々としてるの?」


「?」


この時代、風呂に入る=裸を見せ合うことに大した抵抗がないらしい。

俺の中の現代人としての羞恥心がざわつく。


が、同時に――ぺたセンサーが唸る。


(……落ち着け、俺。これは“信仰”だ。信仰を汚すな)


意を決して、湯船へ。


「熱ッ! けど……気持ちいいな」


平安の風呂文化、やるじゃん。

お湯は少しぬるめだけど、身体を包むような優しさがある。

薪の香りと香木の香りが鼻腔をくすぐる。


「若様、湯加減はいかがですか?」


「完璧です。ぺた的にも」


「はい?」


「い、いや、なんでもない!」


少女は少しだけ首をかしげると、布をそっと差し出した。


「お身体をお拭きします」


「だ、だいじょうぶ自分でやる!」


「しかし、それでは――」


「だいじょうぶ! 俺、ぺたの前では理性が危ない!」


「……?」


理解不能という顔をされる。だろうな。俺だって何を言ってるかわからない。


それでも俺は、両手で顔を覆いながら、湯の中に滑り込んだ。


この世界、試練が多すぎる。


でもなぜだろう。

心の奥底で、どこか懐かしいような、満ち足りた気持ちが芽生えていた。


裸で目覚めた貴族の館。

このぺたで満ちた世界――もう少し、悪くないかもしれない。


(第6話につづく)

毎朝6時に投稿しますので、お楽しみに!

感想・評価など励みになります!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ