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ぺたの終わり、そして始まり

戦が終わった。


夜の都を覆っていた火と煙は、朝焼けの光とともに静まっていった。


勝者は、鳥羽院側。

白河院派は敗れ、後ろ盾を失った者たちは追放され、一部は命を落とした。


けれど、それは“勝った”という実感にはつながらなかった。


京の街には、焼け跡と、泣き声と、言葉を失った民たちの沈黙だけが残っていた。


「……終わったな」


清盛が、燃え尽きた御所跡を見下ろしてつぶやいた。


鎧の隙間から見える肌には、いくつもの擦り傷と血の跡。

それでも彼の背筋は、どこまでもまっすぐに伸びていた。


「お前、無事でよかったよ」


「お前もな。ぺた騎士団、初戦にして生還。快挙だな」


「いや、もはや騎士団ではないだろ……」


「姫と村娘、二人を救出。戦線を駆け回り、民を守り、都を脱出。

お前の武勲、あの藤原定信ですら文句をつけられまい」


「ま、変態にしては頑張っただろ?」


そう言ってふたりで笑った。


けれど、心の奥には――どうしようもなく、静かな空白があった。


その夜、小夜と斎子姫、そして俺は、北山の山荘にいた。


戦禍を逃れたこの場所だけは、鳥のさえずりが聞こえ、風が枝を揺らす音が心地よかった。


「……平和ですね」


斎子姫がそう言うと、小夜も静かに頷いた。


「都の焼け跡が、まるで遠い夢のようです」


ふたりのあいだに、気まずさはなかった。


すでに互いを認め合い、それぞれの胸の内に、俺との絆を育てていたからだ。


(俺は、どちらかを選ぶべきなのか?)


そんな問いは、まだ答えが出せなかった。


でも、ひとつだけ――はっきりしていたことがある。


「俺は、“ぺた”を通して、この時代に生きていきたい」


「変態の誓いですね」


「ええ、ぺたの誓いです」


小夜と斎子姫が、同時にくすりと笑った。


それはまるで、嵐のあとに咲いた花のような――穏やかで、美しい笑顔だった。


朝が来た。


俺はひとり、山道を歩いていた。


都へ戻るわけではない。

かといって、旅に出るわけでもない。


「清盛と約束した。“武士の未来”を一緒に見届けるって」


それが、俺の“ぺた道”の新たな始まりだった。


“変態”としてではなく。

“思想家”としてでもなく。

“ひとりの人間”として――この時代を、歩いていく。


そう、ぺたの終わりは、新しい“生き方”の始まりだった。


(第3章へつづく)



次エピソードから第三章「風雲、保元の乱へ」

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