2/67
営業マン、ぺたをかばって散る
朝から暑かった。
都心のコンクリートは熱を蓄え、照り返しが顔面を刺すようだった。
俺は安売りスーパーの特売チラシを抱え、炎天下をひた走っていた。
「……マジでやってらんねぇ」
俺は加藤清光。営業マン。28歳、独身、趣味は“ぺた探訪”。
女性の胸のサイズが控えめであればあるほど、心が安らぐ体質だ。
部長からは“変人”と呼ばれ、後輩からは“童貞臭”と嘲られている。
だが俺は、この信念を貫いて生きてきた。ぺたんここそが至高だと。
そんな俺の足元に、不意に少女の影が差し込んだ。
「……あれ? おい、危ないって!」
ランドセルを背負った女の子。小学1年生くらいか。
その小さな体が、信号無視して交差点へ飛び出そうとしていた。
俺の体は自然と動いていた。
「やめろ、そっちは――!」
目の前に迫るトラック。
白と青の車体が、信じられない速度でこちらに向かってくる。
――間に合わない。
そう思った瞬間、俺はその子を突き飛ばし、自分の体で庇った。
がしゃあああああああん!!!
激しい衝撃。
鈍く、冷たく、鉄臭い世界が、俺を包んだ。
……痛くなかった。
ただ、遠くのほうで少女の泣き声が聞こえていた。
(……無事なら、それでいい)
意識が、闇に沈む。
気がついたとき、そこは――真っ白な空間だった。
毎日投稿します!




