隕石Xに愛を込めて
――……僕はね。歌を歌うことと、それから自由に旅をできること――それが生命にとっての最大の自由だと思う。
――だから、グレイム。僕やカナタと自由になったあかつきには、一緒に旅に出よう。
――旅先で、国も法律も存在しない場所を冒険して、僕たちみんなで歌を歌おう。
――とびきり明るい、祝いの歌だ。作曲経験なんてないが、それは僕が考えておく。
塔が聞いたことのないメロディを奏でた。
トウモリは『展望』からその曲を聞いていた。
『精霊機獣』と『機械兵』、挑戦者たちは動きを止め、砂漠中に響くような軽やかな曲調に耳を傾けた。
その曲は明るく、アップテンポで、愉しい気分になるものだ。
しかしそれと同時に、不思議と泣き無くなるようなノスタルジーがあった。
〈はは……〉
砂から顔を出したグレイムは、その音を聞いて思わず笑った。
旅立ちの当日、マモリが『管理室』に籠って設定していたのは、自分が外に出たときの祝いの歌だと知った。
〈粋なことするじゃねえか。マモリ……〉
グレイムはそれから、繰り返されるメロディに合わせて小さく歌を口ずさんだ。
歌詞もないメロディだけを遥か彼方の宇宙へと捧げた。