幕間③ 公開されなかった記録
――マモリたちとの連絡が途絶えて数カ月が経った頃。
『展望』に1人立つグレイムは、突然大きな声を張り上げた。
〈あああああああああっ、マモリいいいいいいいいいいいいい〉
スピーカーから出る音が割れるほどに大きく、その叫びは誰もいない砂漠にただ響き渡った。
〈カナタああああああっ、オレを置いて行かないでくれえええええええ〉
遥か彼方の宇宙に向けて、『展望』に立ち、毎日のように叫んだ。
〈頼む……オレを……ひとりぼっちにしないでくれ……〉
グレイムの声に人はおろか、精霊さえも答えてくれなかった。
宇宙は気が遠くなるほど広く、星の輝きはその空間ではあまりにも頼りない。
気付くとグレイムはその広大な夜空に恐怖さえ覚えた。
カメラはそんな、孤独な『隕石X』の状況を淡々と記録し続けた。
♢ ♢ ♢
〈この記憶はブラザーたちに見せるべきじゃねえな〉
グレイムは動画編集ソフトのシークバーで範囲を選択、映像をカットする。
〈オレの心境を表すシーンとしては必要だが、過度な同情を誘いたいわけじゃない。これで2人がオレを哀れに思って塔を出られなくなったら本末転倒だ〉
映像を作りながら、自分でも驚くほど自分の過去を俯瞰している。
それほどに長い年月が経ち、諦めがついたということだろう。
〈悪いな……マモリ、カナタ。お前らの声、もう忘れかけてたよ〉
グレイムは編集ソフトを閉じると『ライブラリ』から出た。
※『隕石Xの物語 ③』の〝映像が微かに途切れた〟部分に入る予定だった部分です。