表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/37

第二の事件

「代々木か」

 今度は遊間だけが即答した。

「しかし予告ではあれだけ日時と場所をぼかしていたのに、()()()()()はしっかりするのだな。面白い」

「待ってくれ、遊間。なぜ、代々木なんだ。解説してくれ」

 遊間が一人で勝手に納得していると、三上が悔しそうに尋ねた。

「なんだ、三上。まだ分からんのか? 禁煙しているせいで、脳が鈍っているんじゃないか?」

 遊間はからかうように笑った。

「いいか? まず『3-2=1』の式。これが表すのは(tree)だ。3は英語で『three』。そこから2番目の文字を引くと『tree』。つまり、この式は1が(tree)であることを示している。

 そう考えると、二行目の1の羅列は木が16本並んでいると捉えることができる。16本の木、即ち、4×4本の木。続けて読めば、44木(よよぎ)だ」

「合っているのか?」

 三上が原木に尋ねると、原木はこくりと頷いた。

「はい。二番目の事件も予告通り、八月二五日に代々木の住宅街で起こりました。

 被害者の名前は目黒(めぐろ)(ゆう)。三十四歳の男性で、職業は投資家」

 原木が被害者の顔写真をスクリーンに映し出す。

 すっきりとした短髪に黒縁眼鏡をかけた、生真面目そうな男だ。

「ほう、三十四歳の若さで投資家か。起業して成功したのか、あるいは実家が太いのか……」

「いえ、そのどちらでもないようです。所謂(いわゆる)デイトレーダーらしく、株の売買だけで月に数千万円ほど稼いでいたとか」

 遊間の独り言を耳ざとく聞き取った原木は、手元の資料をめくりながら答えた。

「……なるほど。で、肝心の事件については?」

「事件が発覚したのは、八月二五日の午後四時ごろ。

 女性から、同居人の男性が自宅の浴室で倒れていると通報があり、現場近くの警察官が駆け付けたところ、彼が頭から血を流して亡くなっているのが発見されました」

「死因は頭部外傷か?」

「はい。この事件でも凶器はまだ見つかっていませんが、恐らく鈍器で殴られたものかと」

「なるほど、落ちが見えてきたな」

 遊間は愉快そうに、くっくっくっと笑い出す。

「それで、事件はこれで終わりじゃないんだろう? 三つ目の予告状を見せてくれ」

 遊間のその言葉に、原木は一瞬驚いた表情を見せるも、すぐに平静を取り戻して、三つ目の予告状をスクリーン上に映し出した。

「三つ目の予告状はこちらです」



 警視庁の諸君、目黒有の事件の捜査は順調に進んでいるかね?

 なに? 時間が足りない?

 残念だが、私も暇ではない。早速、次のゲームの始まりだ。


 8月30日


 10+9=19


 に警戒せよ。


 山手線の悪魔

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ