表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/37

漏洩

 その後も、取り調べは小一時間ほど続いた。

 その間、遊間は一言も口を挟まずに、ただ取り調べの様子を静かに眺めていた。

 取り調べが終わり、遊間たちが部屋から退出しようとすると、浅瀬の傍らにいた刑事が遊間たちを呼び止めた。

「なんだ? 僕はこれから、失われた繋がり(ミッシング・リンク)の正体を確かめに行くので忙しいんだ。つまらない用件なら、その後にしてくれ」

「ですが、あなたたちを決してこの部屋から出さないようにと浅瀬課長が……」

「決して出すな、だと? 何の権限があって、そんなことを……」

 遊間が言い返そうとしたその瞬間、浅瀬が顔を真っ赤にして部屋に戻ってきた。

「貴様ら、とんでもないことをやらかしてくれたな!」

 部屋に入ってくるなり、浅瀬は怒鳴り声を上げる。

「とんでもないことだと?」

 怒鳴られるようなことに心当たりのない遊間たちは、皆きょとんとする。

「これを見ても、まだしらばっくれるとでも?」

 浅瀬はそう言うと、一冊の週刊誌を机の上に叩きつけた。

 雑誌のタイトルは「週刊レムリア」。

 芸能人のスキャンダルから、企業や政治家の汚職疑惑、果ては真偽不明の陰謀論に至るまで、衆目(しゅうもく)を集めるためならどんなネタでも垂れ流し、日々世間を騒がせている悪徳週刊誌である。

「この三流週刊誌がどうかしたのか?」

 叩きつけられた雑誌に侮蔑(ぶべつ)の眼差しを向けながら、遊間は浅瀬に尋ねた。

「どうしたもこうしたもない! 表紙のこの煽り文を読んでみろ!」

 浅瀬の指さした煽り文に遊間は渋々目を通す。


 沈黙の歌姫AKIHA、実は殺されていた?! 都民に忍び寄る、連続殺人鬼の魔の手。

 警視庁大失態。止められぬ予告殺人。犠牲者は既に三名。


「ふむ、事件の情報が流出しているようだな」

「『ふむ、事件の情報が流出しているようだな」、じゃない!」

 遊間の素知らぬ態度に、浅瀬の怒りが膨れ上がっていく。

「まさかとは思うが、僕たちが情報漏洩したとでも言いたいのか? 何の証拠もないのに?」

 あらぬ疑いをかけられ、遊間も流石に不快そうな表情を見せる。

「貴様らが捜査に加わるまで、この事件に関する情報漏洩は一度も起こっていないのだぞ! 貴様らの仕業に決まっている!」

 浅瀬の怒声が部屋中に響き渡る。

「それは少し暴論過ぎるかと……」

「お前は黙っていろ」

 原木が遊間たちに助け船を出すも、浅瀬はそれをぴしゃりと押さえつける。

「とにかく、だ。()()()()()()が起こってしまったからには、これ以上、貴様らをこの事件の捜査に関わらせるわけにはいかん。現時刻をもって、コンサルタント探偵としての契約は終了とし、以後、貴様らの現場への立ち入りを禁止する」

「何だと?! 事件の謎が解けるまであと少しというところで、この僕を解任する気か?」

「事件の謎が解けるまであと少しだと? タイムマシンによる犯行だなどと適当な推理を披露しておいて、虚勢を張るのもいい加減にしろ」

「くっ」

 痛いところを突かれ、遊間は何も言い返すことが出来ない。

「おい、お前たち。こいつらを外へつまみ出せ」

 勝ち誇った顔をしながら、浅瀬は部下たちに命じる。

 遊間は抵抗を試みるも、刑事四人に取り囲まれ、為す(すべ)なく部屋の外へと連れ出されてしまう。

 魔門、三上、咲良の三人も、遊間に続いて無抵抗のまま刑事たちに付き従う。

 遊間たちが部屋の出口に差し掛かったところで、浅瀬が再び口を開いた。

「もしもだ。仮に貴様らの他に情報漏洩の犯人がいて、その証拠を持ってくることが出来たなら、その時はまた貴様をコンサルタント探偵として再契約してやる。まぁ、そのようなことはあり得ないと思うがな」

 浅瀬は遊間たちが廊下の端まで連れていかれるのを確認すると、すっきりとした顔で部屋の扉を勢いよく閉めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ