私達には選択肢がある様に見えて選び取れる物は一つしかない。
今この場でどう対応するのかを決定するのはギネヴィアとアルフィン。
それから私とリラーナにグラファイスの5人。
「考えてみれば見つからない方がおかしかったのよね」
「よく隠し通せていたとみるべきかもしれません」
「そう言った隠れると言う意味でもこの場所は最適だったのでしょう」
「見つかってしまった以上それ相応の対応をしましょう。
私達は黙って蹂躙される事を良しとしませんから。
高射砲を何時でも打てる状態にして照準を付けてしまいましょう」
「エルゼリア様?!」
「間違って誤射したってかまいません。
向こうは完全降伏を求めて来たのですから。
少なくとも剣を突き付けて来ているのです。
こちらだって突き返しても良いでしょう?」
「…そうね賛成するわ」
「ギネヴィア様まで!」
けれど驚いているのはリラーナだけだった。
他の全員は納得と言った具合でグラファイスもアルフィンも
奪わられない為に最大限出来る事をすると言った形を取る考えだ。
唯一リラーナだけこちらが譲歩する可能性を考慮していたのだった。
「相手が此方より優れていないとは考えないのですか?」
「優れているのならこのような愚策を行わないのよ」
そう、どう考えたって相手に対する情報が少なすぎるこの段階において、
こんな無茶である宣戦布告の様な状況になる事自体が、
先読みを考えていないと言ってしまっても良いのだ。
艦隊を率いて占拠を考えているのならそれ相応の動きが必要のはずなのだ。
少なくとも友好的に接して相手の情報を得ること位はするだろう。
私ならそうする。
それすらしないで戦線布告染みた事をして来る時点で意味が解らない。
それに、町を作り始める事を決めたのは他でもない、
あのゼファード・バルダーが設計してきた場所なのだ。
基礎の防衛線力を作り上げ、ある程度の侵攻にも耐えられる様に作っている。
その叔父様の想定していた戦力以上で侵攻されたのなら、
私達が今いくら策謀を巡らせたとしても意味が無い。
「相手が敵対的行動を取った時点でもう私達に選択権はない。
降伏と言う選択が私達には取れない以上、
戦う以外の方法を考慮する意味はない。
リラーナが考えてくれた譲歩による交渉は相互の探り合いという、
妥協点を求める事になるけれどそれをあちらが拒否した以上出来ないのよ。
何かを差し出す代わりに妥協するはないの。
私達の持つ「全て」を所望しているのよ。
これ以上オースヴァインやそれ以外の他の王国だったとしても、
蹂躙されるのを勝手に受け入れる選択肢は少なくとも「私」にはないわ。
王国で婚約破棄された時とは違うの。
私には誰かに付き従うのではなくて戦う「権利」があるの。
今ここで戦う事は都市ギネヴィアを守る事になり、
それはその鉄路の先にある都市エルゼリアを守る事でもあるのだから。
ファルスティンとしても私達に戦わないと言う選択はありえない」
それは確実に拡大解釈であり無駄な自己主張であることも理解している。
この理屈は通らない。
通る訳が無いのだ。
私が与えられたのは「都市エルゼリアの建設と運営」だけなのだ。
それに必要で使える物を都市ギネヴィアにいる間に作っているにすぎない。
私が身勝手に振舞う事を許容されるのはそこまでなのだ。
けれどそれには「気付かない」ふりをする。
あくまで都市ギネヴィアは叔父様が残したギネヴィアの為の箱庭なのだ。
ギネヴィアを守る為に用意された物であって、
外交政策的に用意されていた物では決してない。
ギネヴィアはあくまで作り手なのだ。
使い手とはなりえない。
それはここ数カ月を見て良く解った。
だからこそ守り手としてアルフィンが幼い頃から用意されていたのだ。
どんなに大人びて見せて、色々な事を知っているとしても、
ギネヴィアは剣を持つ事は出来てもその剣を振り下ろす事を良しとしない。
彼女は町に「被害」が出たら問答無用で降伏してしまうだろう。
ギネヴィアは「戦え」とは言えない人だったのだ。
私は…
どうなのだろう?
自分自身の命の代りを誰かの命で支払う事を許せるだろうか?
それを考えてしまっていてはきっとこの先の判断をして行く事はきっと出来ない。
だから今は「考えない」事にする。
後て後悔して吐く事となってもそれを受け入れる覚悟なんて当然出来ていない。
けれど戦わずに殺される事だけは避けなくてはいけない。
平和は終わった。
終わったのだと思いながら話を進めるしかないのだ。
皆が納得してその日の会議?は終わった。
というか私がほとんど決定して確認していただけの様な気がしないでもない。
もう一つ直近で判断しなければいけないのは、
外洋で停泊中の船舶を港に着岸させる事を認めるかどうかである。
その船の中にどれだけの「敵」が詰まっているのかを考えれば、
入港する事は拒否するのは当然なのだが、はてさて納得してくれるかどうか。
接岸箇所はあるのだがいざとなったら沈んで貰うのに、
その後船を撤去する事を考えれば面倒な事になる。
と言う訳で接岸する事を許可する事はさせない方向にしたのだった。
略奪と侵攻を繰り返して補給しながら領土拡大すると言った、
艦隊が来るのならもう迎え撃つ以外の方法はないしね。
都市ギネヴィアに住む大半の領民は奪われる事になれば狂化する。
未だオースヴァインに捨てられてファルスティンに拾われた者がほとんどだ。
奪われるくらいなら最後の一人になるまで戦えてしまう者が大半だ。
せっかく築き上げた自分達で作り上げた都市ギネヴィアを失う事を、
恐れる者のいるのだから。
最悪勝てなくたっていいから奪われるぐらいなら壊してやるが本音なのだ。
デルフィナス王国の使者は、軽く港湾都市を捻り潰してやるっ程度の意気込みで、
きっと服従しろと言って来ている。
都市ギネヴィアの広がりを観察しないで港湾部に面している、
ごく一部しか見ていないのだ。
城塞都市としての機能を持っているこの町は一見すれば広くないのだ。
各所に視界を隠す木々が植えられて海側からすれば小さな港町にしか見えない。
そして巨大な人口の壁である堤防の向こう側に広大な町と、
放物線を描いで投射される高射砲が、数十メートル単位で
海に向かって設置されているのだ。
その高射砲を扱うのはやり方を知っている市民であり、
兵士から鍵を渡さ高射砲を撃って良いと言われれば、
皆喜んで海に向かってぶっ放すのだ。
海に面する都市ギネヴィアは当然の様に「防衛設備」も充実しているのである。
射程が20kに及ぶ高射砲は半島の入り江に侵入した時点で全て射程内となる。
叔父様の様な人がいなければ一方的な射程外から攻撃を行って、
相手を撃沈したいとは考えているけれど、
それだって停泊しているのだったら当てられるレベルなのだ。
移動していたらその限りではないしそんな簡単な事じゃない。
20kという射程は今の技術力で投射できる限界点であって。
必中距離ではないらしいからね。
それでもこの戦闘は此方の得意とする場所で行われれば勝てるという確信を、
私は信じなくてはいけなかった。
けれどその考えは杞憂に終わる。
思いの外外洋からの船乗りと言うのは礼儀を知らないだけで、
そこまで脅威的な戦力差がある訳では無かったという事だった。
そう言った意味ではデルフィナス王国の不幸は、
あと半年早く都市ギネヴィアを見つけているべきだったのかもしれない。
「叔父様の作り上げた巨大船舶を見ればここが「どういった所」なのか、
正しく理解できていたでしょうけれどね」
「デルフィナス王国は運が悪かったと言う意味でしょうか?」
「そうかもしれないわね。
数年の間にここまで立派な都市が出来上がるなんて、
普通ならありえないでしょうから」
いつもの執務室で新しい案件の進捗状況も確認しなら、
それ以上に割合で上陸してきたデルフィナス王国との交渉を、
私達は進める事になった。




