AとBが出来たのだからCが作れるの。
玩具が欲しくて駄々をこねる子供の様に。
となると何時までも働いてくれる人を確保する事は難しくなるって事で、
領内には「余剰」を作り出して置かなくちゃいけないって事なのよね…
さて…
であれば私がやらなくてはいけない事は決まった。
都市エルゼリアにこれ以上人員を裂く訳にはいかない。
現在建設が終わった場所で一部を初めから決めていた服飾関連の、
デザイナー施設だけは何時でも稼働できる状態にまで作り上げている。
それはそのままローテーションを組んで、私のドレスの作成場所として、
機能させ始めれば良いと考えている。
服飾産業は大量生産を前提とした物は都市ギネヴィアに置いておいて、
一品物のオートクチュールみたいな物を中心とした、
少量の生産の者だけを都市エルゼリアに配置すると言う方向で考えている。
いざとなった時は避難者に対しての一時的な仕事と言う意味でも、
ある程度の産業を都市エルゼリアにも配置して置くつもりだったし。
少なくとも衣食住の部分で衣類に関してはもう王国には負けないし、
負けるつもりは無いのだ。
衣類関係はこれで用意として、次の問題を解消しておかないといけない。
叔父様の置き土産は多々あるのだ。
直近で戦いが起きなかったとしてもやれる事が多いのだ。
そう考えると前線で消費される物をこの都市ギネヴィアで、
生産しても良いという事になる。
重工業都市ならではの物で…
いや地熱エネルギーを使った領都でも生産は可能なのだけれど、
それ以上に鉄鋼製造の過程で発生している熱エネルギーは、
もちろんこの都市ギネヴィアに計り知れない余剰エネルギーを生み出している。
叔父様が無理して作り上げた巨大船舶の影響で付随産業の発達が著しいのだ。
巨大船舶の建造は構造材が違うだけで城を立てるのに似ている。
だから冒険をすると言う名のもと作り上げられた豪華客船として、
仕立て上げられていたあの船の内装やらなんやらは「一種の城」と同じ様な、
作りとなっている。(動態である以上船の方が複雑になるけどね)
船舶を作るのは一つの町を作るのにも似ているがそれはおいおい。
問題は都市建設が出来る力が造船にもあるって事であり、
叔父様が作り上げた大型船舶の2番艦を建造するのにその人員も、
割かれているって事だった。
ともかく、余計な造船をする位にはまだ都市ギネヴィアには余力がある。
だからその余力を使って未来の為のストックを貯めるに越した事はないのだ。
鉄馬が出来ているという事は高圧ボイラーが作れるという事で、
高圧ボイラーがつくれるという事は言い変えれば「圧力釜」が作れるのだ。
そして造船に始まった外装の金属を作れるという事は、
その材料となる薄い合板も当然製造できるし、造船用の鉄の加工技術は、
そのまま複雑造形を可能として薄い鉄板の製造も当然できる。
鉄馬の車輪が作れるという事はそのまま丸い物が加工できると言う意味で…
そして港湾都市であり養殖と言う漁業が始まった事で衛生概念の基礎も、
当然作られた。
という事は、
「缶詰が作れるわね」
「何それ?」
ぽつりとつぶやいた私の言葉に、
当然の様にギネヴィアは反応してくれる。
当然と言ってしまって良いのか解らないが、
多種多様な食材が集まる都市ギネヴィアは新しい料理を生み出し、
発表する事が一種のブームになりつつある。
この辺りで料理コンテストなる物を開催すれば、
良いエンタメになると思うが今はそれ所ではない。
言い変えればある程度の味付けも勿論できる様になって来ているという事で、
その完成した料理を常温で長期保存できる様になれば更なる食の探求を、
する人も現れて来ると思うし新しい保存形態を発表すれば、
それを通して色々な缶詰も作られると思うのだ。
だが今は出来る事を優先して詰めた物を蒸し上げる高圧ボイラーと、
密閉できる缶詰さえ完成すれば後は過熱処理して、
どれだけ持つか実証実験を行うだけ。
いけると踏んだ私はギネヴィアに材料と量産化の為の機械が作れるかだけ、
問い質す事にするのである。
「出来そうね。
ううん、出来なかったら出来るまで改良するから…
ともかく作ってみたいわ」
「そ、そうなのね」
「出来るようにする為の物は既にあるから…
後は作ってみるだけね。
久しぶりに作業場に入る理由が出来たわ♡」
「そう…
宜しくね」
「ええ。
任せて置いて!」
それはギネヴィアにとっては嬉しい事の様なのだけれど、
その時はどうして嬉しいのか解らなかったのだ。
けれど簡単な事だったのだ。
だって次の日久々にリチェルチェの手で用意されていた衣服は、
もちろん「作業着」なのだ。
久々にドレスを着なくても良いという事は、
ギネヴィアの苦手なコルセットから逃げられて勿論動きやすい格好…
ではなかったのだ。
もちろんリチェルチェが用意していたのは、
ふっくらと膨らんだスカートでこそなかったのだが、
もちろんマーメイドラインのドレスだったのだ。
「リチェ?これは作業着じゃないわ」
「何をおっしゃいますか。
これはギネヴィア・バルダー専用の「作業着」ですよ」
「違うわ、これはどれ「作業着です」ス…」
「ギネヴィア様の特別な傍付きである「リチェルチェ・ゼフィラ」が、
このお召し物を「作業着」と決めました。
だから作業着なのです」
「リチェぇぇぇ…」
「さぁ!お着換えのお時間です!」
隣室から聞こえてくる叫び声は、朝から元気ねの一言で片づける事しか、
私には出来なかった。
というか、未だにドレスから逃げられる場合があるなんて考える事が、
ギネヴィアにできたのだから驚きだった。
「ねぇリラーナ?リチェルチェはそんなにギネヴィアに甘かったの?」
「…私から言うのものなんですが、お口が悪くなっても宜しければ、
「べったべったに甘やかされて」おりましたよ」
「あらま」
「姉様は「お願い」だけは上手でしたから」
そうね。そうだった。
注意した後「お願い」だけして傍付きのメイドとして最低限の、
教育だけしていたのだったわね。
ギネヴィアのドレスは、勿論そう言った場所にギネヴィアを、
連れて行っても良いように仕立て上げられた一品物なのだ。
作業機械への巻き込み防止で装飾品こそ付けられていない物の、
ちゃんとしたドレスであって…
その上から上半身にはハーネスが取り付けらて、
最後にリードをリチェルチェとその部下の侍女達が3人掛かりで持たれていた。
ギネヴィアの信用の無さがうかがえる格好となっていたのだった。
工場の中が危険な事は私も解っているし機械をギネヴィアが直接触る事は、
当然許されないのが解っていても手綱を取り付けられて、
握られる辺り私の知らない所で「やらかした」のでしょうね。
「もう少し。もう少しで良いのよ!
ねぇリチェ!リードを伸ばして!」
「嫌ですよギネヴィア様?前回のお約束を破った分だけ
リードを短くするって言っておいたじゃないですが♡
ですから本日良い子になればリードが伸びますよ。
でも良い子じゃ無かったらまたまた短くなっちゃいます!」
「アルフィン…」
「その事に関しては私からは何も言えませんね…
言えたら、こんな事にはなっていないと思うので」
「あうう…」
相当、何かヤバい事をやらかしたのだろう。
不満そうな姿を見せながらその日は4人に囲まれながら、
ギネヴィアはアルフィンの後ろをついて工場に向かったみたいだった。
けれど、時間がかかるかなって思っていた事はそうでもなくて。
少なくとも殻の缶を作るのは結構簡単に出来たみたいだった。
そしてそれから、試作品の製造に取り掛かり…
実用化するまでにそんなに時間は取られなかった。
基礎技術の積み上げは確実に汎用性を上げて私が望む物を、
バルダー家は用意してくれる。
一つの品物が形になる瞬間だった。




