私の知らない所でまた何かが動いているのかしら?
都市ギネヴィアは眠らない都市でもある。
重工業産業が著しく発達し続けるこの都市は、
眠る事を人に許してくれないのだ。
年中無休で稼働し続ける炭鉱都市と同じ様な活気で包まれていた。
巨大な溶鉱炉は鉄を生産し続け、
ガンガンと打ち鳴らされるハンマーの音は鳴りやまない。
ファルスティン内で使用される「便利な物」は全てこの、
都市ギネヴィアで生産できるように整えられているのだった。
それは初期の町を作り上げた叔父様の意地だったのかもしれない。
だがそのお陰で都市ギネヴィアは巨大なエネルギーを、
取り扱える事に慣れた場所となれなのだ。
それが先鋭的な空間を作り出して、この世界においてはオーバーテクノジーの、
塊なのである。
当然それらを守る為に都市ギネヴィアは、
城塞都市化しているとこは言うまでもない。
未来の外交を支える港をしても受け入れられる様に初期設計の時から、
鬼の様に考えられていた動線は、町がこのまま数十万人都市へと、
成長してしまってもそれを受け入れる度量は確かにあった。
…バルダー家のお屋敷と巨大な港湾都市に新たに製造拠点となる事を、
目的とされたこの都市は明らかにこの世界では異質であるだけなら、
まだしも、その先の「成長させた後」までも考慮されているから、
私が自身の都市計画の参考にするのには十分な凄さがあった。
この都市は工業都市でもあり、その先に訪れる巨大な港湾エリアは、
更に拡張され交易機能も時期が来たら拡張され成長する事が決まっているのだ。
2年と経たないうちに新しいエリアが完成して増え続ける領民を、
飲み込み続けるのだろうね。
多数の積み荷を降ろして鉄馬へと積載する事を前提とした場所すら、
既に事前に用意されているのだから…
叔父様のタイムスケジュールででは交易の開始は秒読みなのかもしれない。
それだけならまだしも…
更に鉄馬のレールは伸ばされ続け領内にある貯蔵施設へと伸ばされた場所から、
運び込まれる物資の量もかなりの量。
それを武器に生産物の一大加工拠点と言う側面も当然の様に持つ。
ファルスティン内に鉄馬のレールを引くついでに作られた大型の、
倉庫から取り出される加工前物資はそのまま都市ギネヴィアへ搬送されて、
加工後に各所へと送り出される。
そこまで設計されて組み立てられた計画都市は、
もはや常人では理解できないのだった。
もちろんこれだけの要素を含みつつ、円滑に都市運営がされているのは、
最初からそう言う風に「作られていた」からに他ならない。
町の敷地面積という点では既に領都を凌駕するスぺースを、
消費するようになっているものまた事実で…
鉄馬の広がりと言う点でもベッドタウンと言う考え方すら、
都市ギネヴィアを中心とした場所が出来上がりつつあるのだ。
既に鉄馬による環状線の設計すら用意された場所があるのだから…
人口密度は更に上昇するのでしょうね。
で、だ。
その急発展する土地の一等地に構えられたバルダー家のお屋敷は、
言うまでもないが特別な配慮の下に完成している。
完璧な機密保持の下作られた大切な場所なのである。
…言い方を変えればここはゼファード・バルダーが残した、
ファルスティンの為ではなくてバルダー家のギネヴィアの為の場所なのである。
その一角にファルスティンのスぺースとして私は生活しているから、
「安全」なのである。
けれどそれに反比例するように警備は厳重になっている事は理解していた。
同時に私に渡されない情報も増えている気がするのだ。
リラーナとグラファイスが裏で動いている事は理解しているし、
私に報告が上がらない部分も多い。
それは私の判断には必要が無いからと言う意味で弾いているのでしょうけれど、
実際私が判断する領内の生産物と輸出する為に作る物色々の原材料と人員配置、
それらの資料は事細かに送られている。
同時に都市エルゼリアの建設計画は順調で問題が発生している所はほとんどない。
全て順調なのだ。
だからこそこの重警備となっている事が気になってきているのかもしれない。
無駄に配置されている?複数人での警備体制で武装も当然持っている。
「安全なのよね?」
「はい?」
「…この頃は警備の量も増えているわよね?」
「…そうですね」
リラーナはそう返事を返してくれるが、
グラファイスはにこりと笑いかけてくれるだけで何も示してくれない。
これは此方から聞けという事なのか判断に迷ってしまう。
「ねぇグラファイス?貴方は何かを知っているの?」
「もちろん知っておりますよ。
警備計画を組んでゴーサイン出しているのは私ですから。
場所の都合上アルフィンとも協力していますが、
その辺りも抜かりはないです」
「それは領都で何か良くない事が起こるという事なのかしら?」
「エルゼリア様に伏せていても仕方が無いので教えておきますが…
王国は程よく混乱し始めております。
それだけで警備が増強される理由はお判りになられるかと」
「ああ…
やり過ぎたのかしら?」
「どうでしょうね?
けれどかの場所は動揺が激しくなりつつあるそうです。
なので、この場にいる者達は「安全な事を利用した予備兵力の増強」と、
考えて戴ければ幸いです」
「受け入れたのね?
お父様?それともお兄様?」
「アネス様ライセラス様両方です」
「そう…
お兄様のブレーキも壊れ気味なのかしら?」
「王国側が逐一こちらの気分を逆撫でしてきているのですよ。
理解が出来ませんが時間をかければ王国は動けなくなりますから。
…やりたいのでしょう」
王国が何をやりたいのか?
そんな事考えるまでもない。
戦争をしたいのだ。
今のまま戦争をすれば王国だってただでは済まない。
けれどやらなければ確実に削り落とされて最後には潰されると、
理解したくないがしなくてはいけない人が増えて来たという事なのだ。
向こうがそのつもりなら…
こっちは全力でバックアップするまでなのだが。
私はファルスティンが負けることを許すつもりはないし、
ファルスティンが有利に戦えるようになる為にだったらもちろん、
色々とやらかす準備は出来ている。
「にしても、急に騒がしくなったと思うべきなのかしらね…」
「いいえ私見ですが未だライセラス様とアネス様の手の上ですね。
エルゼリア様の行った事も地味に作用し始めていると言う意味でも、
ありそうですが…」
「決定打になる様な事をしたつもりは無いわよ。
王国への出荷を止められていないでしょう?」
「その辺りは、ライセラス様達が剣を握りしめている事と…
思いのほかターシャ様が好戦的だったと言うべきなのかもしれません」
「ライゼンもリリーも止めに動いているのでしょう?」
ライゼンはお兄様の半身。
補佐役としていつも傍にいる幼馴染で気心の知れた仲。
殆どの事は二人で決めていたと思うけれど。
「当然です。
ですから程よくきな臭くなってきているのですよ。
既にアネス様が動いて「ライン」を引いてしまった以上、
負けませんが今の所「撃退」する事が限界ですから…」
「ああ…
そうなのね」
「あとは王国の何処が戦場として選定されるか…
そんな所でしょうか。
少なくともラインの「向こう側」でやる事だけは確実です」
「…随分と「お喋り」になってくれて私としては嬉しいけれど、
どうせなら早めの報告をお願いしたいのよ」
「それは出来ません。
私は「ファルスティン領領主ライセラス伯爵閣下」より、
「聞かれた場合のみ答えてやってくれ。
書面化する事は軍事情報の観点から許可は出来ない」
重く釘を刺されてしまいましたから」
「それは随分と私に気を使わせないようにしているみたいね?」
「ライセラス様の考えを述べるのであれば、
正直、王国との政治的な関わり合いからエルゼリア様を遠ざけたいのでしょう。
今ファルスティン領内で一番大切なお方だからと言う意味もありますし」
「…理解は出来るけれど納得したくない現実ね」
「左様ですか」
「さようですよ」
グラファイスとのやり取りは、そこまでで終わりだった。
それ以上は聞いてくれるなと言った具合で、
まだ何かしら隠しているみたいだったけれど、
それ以上は私も問い質す事はしなかった。
けれど…
それは少なくとも「王国側」は私達の作り上げた物を、
力づくでも奪い取る事を積極的に仕掛けたい。
そう言う事なのでしょうね…。
だから仕方がありません。




