バレてしまえば儚い物。計画は正当な使用者によって適切に修正される。
物が動けば人が動く。
人が動けば自ずと情報は漏れる物なのである。
この時点でサプライズはもう無理。
叔父様の夢の計画は破断している。
どんなに誤魔化そうとしても、誤魔化しきれる筈がないのである。
責任者を通さない物資の融通には限界があるし、
まして巨大な研究施設兼工場兼お屋敷を増築する為の物資の横流しなんて、
絶対に不可能なのだ。
都市区画の図面を見られれば誤魔化すのは当然不可能で、
叔父様の甘々だったサプライズ計画が、
成功するはずがないのだ…
無理ですよ。
叔父様?貴方の娘であるギネヴィアは頭のねじが無くなったバカではないのです。
「新しい工場を作ったんだよー」
「お父様?そんな計画は認めませんよ?
そもそも何ですかこの土地の専有量は?
工場だけでこんなに消費させる訳にはいきませんよ」
「で、でももう作っちゃったし…」
「壊しましょうね?」
「それは…」
「壊しましょうね?」
計画を嗅ぎつけられた叔父様はその日、初めて娘夫妻に負けたのである。
結局の所、責任者であるギネヴィアの許可の下、バルダー家のお屋敷は、
ギネヴィアとアルフィンを中心として、
ほとんど工場研究区画は再設計となり、
貴族エリアは私の要望を全てギネヴィアが通したのだった。
その辺りは貴族の娘としてギネヴィアも許容しなくてはいけない事だと、
思ってくれたみたいでそれ相応に豪華なお屋敷となりそうで何よりだ。
「元々港湾地区の発達と区画拡張は予定通りなの。
だからお屋敷に全ての研究を集約するつもりはないし、
本当に守りたい物となればそんなに多くはないはずなのよ…
お父様は認めたくはないみたいだけれどね」
「そう、なの?」
「そうなのよ。
でも0を1にした人だから全てがお父様にとっては重要な事であって、
その技術に順位を付けられないのはお父様の一番悪いところかもね」
「ああ…けれど、気持ちは分かるわ」
「共感してげるのは良いけれど…
これからは私達の時代なのよ?
私達が決めていく事なのよ。
何時までもお父様の後ろを歩き続ける訳にはいかないのよ」
ギネヴィアの言葉は痛いほどに正論で、
世代交代をした意味と言う事を私以上に自覚しているって、
思わされてしまったのだった。
何時までも叔父様達について行く訳にはいかないと思いつつ。
それでも私達の前を走り続ける叔父様にギネヴィアはその手を、
叔父様の背中に届かせようと必死に背伸びをしているのかもしれない。
そして叔父様はこれから旅に出るその間叔父様の「技術の足」は止まるのだ。
それはギネヴィアが叔父様との差を縮められるチャンスなのだ。
このチャンスをモノにするべく、与えられたマイホームではなくて、
初めから自分のマイホームを作り上げるのだ。
ギネヴィアもアルフィンも目を血走らせながら、
叔父様の用意したバルダー家のお屋敷を改修していく。
その姿を建築の錬金をしながら眺める叔父様の目はとても嬉しそうだったのだ。
そしてその隣に立って作業を補佐するアリア叔母様もまた、
その手が止まる事は無かったのだった。
バルダー家は今日も仲良し?なのである。
「…エルゼリア様?解っていると思いますが、
お仕事が溜まりつつあるのですよ?
バルダー家にかまけている場合では無くなって来ています」
「そう、ね」
予定外のバルダー家の間取りの設定と修正に時間を取られた私は、
そのまま港湾都市ギネヴィアに用意されていた執務室で、
新しい事に忙殺される事になってしまっていた。
リラーナの準備が良かったのかどうかだ解らなかったのだけれど、
領都に直ぐに帰れない事を察知していたのか、
数日内に領都でこなしていた事務作業が都市ギネヴィアで行えるように、
手筈が整えられていて、駅の近くにある行政用の建物と、
何故かバルダー家の新居にファルスティン家の居住区画が、
リラーナの手によってねじ込まれていたのだった。
「この際ですので技術の進捗状況とエルゼリア様が望んだ、
食文化の発達の為に都合の良い此方で当分の間は、
過ごすのが宜しいかと存します」
「もう簡易と言えないほど揃ってしまったからね…」
「そうですねエルゼリア様が望んだ高効率化の成果が出ております」
「そうね…」
要望で上げていたいくつかの項目は港湾都市ギネヴィアの方が、
都合が良かったという点もある。
手っとり早く食文化の発達を促したかった私は、実現可能かどうか、
はさておき魚の養殖を行える場所が欲しかった。
当然、海が近い場所が選定されて更に言うのであれば、
港湾都市の工業エリアに汚染されていない、
ちょっと離れた場所が理想となる。
鉄馬のレールは延長の準備は万端で直ぐにグラファイスの部下に頼んで、
近場に養殖場に適していそうな場所を探して貰う事になり、
まずます私は港湾都市ギネヴィアから離れられなくなっていくのは、
言うまでもなかった。
叔父様の冒険の旅への出港はバルダー家の完成をまって出港する事になり、
「ぼ、冒険が、冒険が遠ざかるぅ~」
と嘆きの声を出していたのではあるが、
港湾施設で叔父様の搭乗を待っていた船長は、
更に待たされる事になってしまっていたがもちろん何も言わない。
どうにもこの巨大船舶の船長に抜擢された人は、
叔父様の信頼厚い人だったみたいで(同然かな)、叔父様の考えていた、
サプライズを聞いた時こうなる事は理解していたみたいだった。
と言うより、ギネヴィアと内通していたっぽい?
考えれば当然でもう叔父様は責任者じゃないのだから仕方がない。
港湾地区の管理はギネヴィアの仕事。
当然、出港の許可を出すのもギネヴィアなのだ。
ライセラスお兄様の出した物は出港許可の形を取った外交用の委任状。
出港と言う点では、新しい許可書が必要という事になってしまったのだった。
色々あるとは思うけれど…
父親を送り出すと言う意味ではギネヴィアにとっても一区切りなのだ。
気持ちの整理もあるだろうし、
お屋敷を受け取って直ぐに「はい行ってらっしゃい」とはならないだろう。
その辺りを叔父様はちょっと軽く見過ぎているのかもしれない。
けれど、叔父様のギネヴィアに対する愛は本物であり、
ライセラス兄さまからの委任状さえあれば無視して就航できるところ、
娘の「命令」をちゃんと聞いて大人しく従っている辺り律儀と言うか…
「愛」なのだろうなぁって思うのだ。
他国との外交の接点は一日でも早い方が良い。
それを理解しつつ愛娘との楽しい「工作」を楽しいんでいる姿は、
微笑ましい一家団欒でちょっとうらやましくも感じてしまう。
だが、それでも時間が流れるのは止められない。
叔父様はその魔法の錬金を遺憾なく使用してお屋敷の改修だけは半月程度で、
終らせてしまい残りの半月で内装まで完璧に仕上げてしまったのだった。
完成式典のような事は時間の関係上もう無理で、
叔父様の想定した出港の予定をギリギリまで遅らせて使って作られた、
バルダー家の新しいお屋敷は完成するのだった。
それはギネヴィアにとって必ずファルスティンに帰れば、
母アリアと父ゼファードがいるって言う安心感から卒業しなくては、
いけない日が来てしまったという事に他ならないのだ。
お屋敷完成の日細やかなパーティーの後、
私はリラーナとグラファイスを引き連れて早々にパーティー会場を後にした。
当分はあの4人が一緒になって会話する事は無いだろうからね。
私がいると「技術」の話はできないし。
ギネヴィアもアルフィンもきっとアリア叔母様とゼファード叔父様に、
聞いておきたい事が山の様にあるはずだから。
行政区画に戻って私は割り当てられた私室に戻って、
久しぶりに窓から外を見たのだ。
その風景は前回来た時と同じく、ゼファード叔父様が執念で作り上げた、
綺麗な港湾地区の工業地帯の風景をまた私に見せてくれた。
変わっていない。
けれど変わろうとしているこの都市の風景を見て、
私は不思議な気分い浸っていた。
私達が都市を発展させる以上この景色もいつかは変わる。
けれどそうしなければいけない事なのだ。
次代は既に進み続けて、何時までも叔父様に頼った未来だけを見ている訳には、
いかないのである。
これでエルゼリア達は叔父様の出港を見届けて、
また時間が飛ぶ事になりそうですね。
次回を最後に叔父様の登場は当分なくなる予定です。
当分の間、叔父様は冒険の旅に出て貰います。
楽しい外交の旅となるでしょう。
物語的な事を言わせてもらえれば、
ゼファード叔父様は万能チートキャラなのです。
アリア叔母様も半分そうですが。
彼等ゼファード夫妻が万能すぎで…
助けて叔父様!
↓
しょうがないなぁ~
↓
問題解決!
エルゼリアもギネヴィアも叔父様に頼ってしまって、
領地運営がスーパーイージーモードとなります。
資金無限資源無限のシムシティやシティスカとなります。
ファルスティン対オースヴァインの話も、
叔父様の超兵器を使いオースヴァインを一方的に蹂躙する展開となり、
ファルスティンが世界征服に乗り出す超展開も可能となるのです。
シリアスな展開は皆無となり一線を越えない様なギリギリのやり取りは、
なくなり戦争は速攻で終結します。
しかしその後は勝ちすぎたファルスティン対世界という構図となるでしょう。
色々と収拾がつかなくなりそうです。
その為ダラダラと睨み合いをするべきなのです。
ライセラスを中心とした物語を展開する時に勝てるのに、
一筋縄ではいかないじれったさとアネス・ファルスティンの活躍に、
あたふたする第2王子等も連載が始まったらお楽しみ戴けたらなと思います。
とはいえ叔父様は「気分」によって直ぐに戻って来てしまうので、
ファルスティンがピンチになる事はきっと無いでしょう。
因みに叔父様の作った物はファルスティンにおいては、
一部は量産化も済んでいて、革新的な技術ではなくなって汎用的な公開技術と、
なってしまっています。
なので、その辺りの物となると別に隠す必要はないのです。
それでも叔父様にとっては技術を作った思い出があるので「重要な基礎技術」と、
なってしまっているのです。
もう誰でも作れる物なのでファルスティン内ではそんなに機密に当たりません。
海外に流出しても特に困らないものでもあるので、
ギネヴィアはその辺りの皆が知ってしまった技術を、
機密として扱うのを辞めて整理し始めているのです。
過度の機密主義は技術を停滞させますし大切な所はギネヴィアが抑えていますから。
工場の在り方も変わってきているという事なのです。
天災が作り上げた物を秀才の娘が誰にでも扱える物へと、
仕上げていると言った所でしょうか。




