叔父様の夢のマイホーム計画は順調…?に進んでいる訳がないわよね。
次回の更新は明日の20時です。
それでも叔父様の夢の悪だくみはバレていない事を前提に考える。
そこには何故か私が効率的に動ける様になる為の執務室は当然の様に作られて、
資料を溜め込んで置くための資料庫は、防火扉を何層にも作り込んで、
作られる機密エリアとして仕上げられる。
作成側の人間と言う物は、えてして作成が完了してしまえば、
そのマニュアルは必要としない。
次を作る為によりよく改善された物を作るから今のマニュアルを必要としない。
だからマニュアルを軽視するし、完成品にしか興味が無いから、
その製造の工程の最適化なんてもちろん考えない。
凡人は天災が作ったマニュアルを整理して自分で創れるようになっているが、
その工程を助けてくれる物を天才は残してくれないから天災となるのだ。
そう言った意味で、鉄馬を作り上げるマニュアルを作り上げたアリア叔母様も、
また天才なのだと実感させられる。
だが、今その天災達に関心している訳にはいかなかったのだ。
用意された羽ペンでその区画整理がされた屋敷の一角に貴族として必要とする、
来客用のスペースや、雇い入れるメイドや使用人達のエリアも確保すると、
叔父様の用意していた屋敷の区画は全然足りない状態となってしまったのだった。
資料の格納エリアや機械の製造場所は叔父様いわくギリギリまで減らしたらしく、
「う、うーんこれ以上削れないかなぁ…
でも可笑しいな?どうしてこんなにスペースが足りないんだろう?」
「そうね、私達の領都にあったお屋敷より、大きく作ったのよ?」
そりゃ、王都のバルダー家に貴族の使用人が住まう場所なんて、
確保されてなかったでしょうに!
叔父様と叔母様が貴族として立ち振る舞うのは何時だって、
ファルスティン家の屋敷のみなのだ。
貴族としての立ち振る舞いをする為の衣類はアリア叔母様は最低限しか持たず、
それでも足りない時はミーシェお母さまお古で済ませてしまっていたのだから。
貴族の持ち物の量としてはギネヴィアなんかを当然下回る。
その代りに、叔父様が作った「安全の為」の物は当然、
お屋敷の一角を占拠する程度には揃えられていた。
叔母様が叔父様と一緒に作業するために用意された品々は数知れず、
一番の大物は「解析機関」を効率よく動かせる様にする為の、
良く解らない接続器具だろう。
数人の人間で入力する事になる解析機関の「基本」を一人で、
しかもたった数分で終わらせてしまえるその解析機関捜査専用の作業着は、
解析機関を扱う人間には欲しくてたまらない物かもしれないけれど、
叔父様は決して叔母様以外の為にその作業着作らなかった。
ギネヴィアの分すらないのだから、他の人間の為の物を作成する事を、
頼む事も当然許さなかった特別な作業着なのである。
現在は新しいお屋敷に運びこまれて大切に保管されている物だけれど、
その作業着の事を知っているアルフィンとギネヴィアも、
当然その作業着を欲しかったみたいで、叔父様に頼んだ事が在るらしい。
けれどその作業着はやっぱり作ってもらえず、
そして何より、その作業着は真似して作る事が出来ないみたいだった。
ともかく、そう言った叔母様の大切な物は領都の時に立て積み可能な、
収納式にコンテナに詰め込まれて、
用途応じて取り出し積み替えしながら収納してあったのだ。
その収納スペースは超効率的であり、
叔父様と叔母様が魔改造した屋敷の中で非効率極まりない超効率的な、
収納をしていたのだからそのスぺースを失えば、
作ったお屋敷がどれだけ広くたって足りなくなるのは目に見えている。
「…最低限これだけの場所は必要なのです。
ギネヴィアが必要としなくとも、
ギネヴィアを支える人には、「絶対必要」です!」
「わ、わかったよ…。
仕方が無いから、3階建てにするのを諦めて5階建てにするよ」
「は?」
「工期を短縮するために削った材料を搬入して作り直すよ」
それは「楽がしたかった」叔父様が手を抜いて用意しておいた、
増築計画の一部だったのだった。
それはサプライズ第2弾として成長できるお屋敷として、
旅行から帰って来た時に、自分立ちの住むスペースを増築分として、
作り上げてしまおうって思って用意して置いた部分を、
完成させて形にするよって事だったのだ…
もちろんアリア叔母様も承諾済みの事で旅行から帰ってきたら、
速やかに私やライセラスお兄様に外交成果を引き渡して、
当然の様にお屋敷に作った自分専用の機密エリアをポンと作成して、
その中に引きこもって研究を始めてしまうという、
叔父様にとって夢の様な計画…
面倒事を此方に全て丸投げする計画がある事を、
冒険の旅に出る前から決めていた辺り、
叔父様は「面倒事」を持ち帰ってくるつもりだったと、
面倒事が必ず起きると言う確証があったと言う事なのだろう…
「…そう言う事なのですね?」
「な、何のことかな?」
「アリア叔母様もそのつもりだったんですね?」
「私はゼファートじゃないからワカラナイノヨー」
「…まあ良いでしょう。
ともかく冒険は必要な事だと思いますし、
計画も目的地も既に見つけてあるって事なのですね…」
「色々あるけれど、相手がいる事だから。
こっちの都合だけで決まる事じゃないからね」
叔父様はそう言いながら真剣に返事をしてくれた。
外交とは究極の利害関係の構築に過ぎない。
だから、こちらが提示できる物に価値をどんな形であっても、
作らなくてはいけないと言う事なのだ。
叔父様は一回目の海外の接触でその要望を聞いて、
2度目で接触でその利益を最大限にするべく動くって事なのだろう。
でなければこの時代に置いてあんな予想以上に大きな船舶を作る必要はないし、
船の大きさは、そのまま高い造船技術を見せつける事にもなる。
ほとんどを叔父様のハンドメイド風味で作り上げたとしても、
ファルスティンの技術力をかさ上げして見栄を張ったとしても、
「外交」という点で威圧する為には必要不可欠と見積もったのだとは思う。
あの船の大きさは言い変えれば「叔父様の焦り」の表れなのだから仕方がない。
とはいえ都市ギネヴィアの象徴ともなる大きく区画使ったバルダー家の、
お屋敷はそれから直ちに叔父様の手によって増築が始まるのだった。
港湾都市ギネヴィアの象徴としても当然の様に増築を進められて、
叔父様直々にに建設して内装を仕上げていく事になれば、
もちろん一日や二日で仕上げられるはずもなく…
その叔父様の怪しい動きは「ギネヴィア」に完全に把握され、
一週間たたない内にサプライズ計画は破棄される事となるのは、
仕方のない事だった。
ギネヴィアがいないのであれば問題は無かったのだけれど、
もうここは、この都市はギネヴィアが統括する場所なのだ。
そうなってしまえば流石に叔父様と言えども物資の流れを責任者である、
ギネヴィアに知らせずに動かす事は不可能で、
アルフィンも当然の様に不穏な物量の流れを掴めばギネヴィアと相談する。
よって結果は目に見えているのだった。




