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悪役令嬢は何もしない。けれど叔父様は世界を変えてしまいました。  作者: VLS
私の知らない所で事態は急激に動き、私にはそれに応じた新しい役割が与えられる。
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船には夢と野望と悪巧みが乗り私はそれを留める術を持たない。

「女帝の様な雰囲気が出ているよ」

「はい?」



女帝って何?

とは言えそれを補足する様にアリア叔母様が言葉を付け足してくれた。


「責任者として貫禄が出て来たって事ですよ。

ゼファードと違ってね?」

「それは酷いなぁ~。私にだって貫禄位あるよ」

「そうね。役に立たない貫禄があるわね」

「冷たいなぁ」

「私が温かいから大丈夫なのよ」

「そうだね」


私には理解できない会話が繰り広げられていくのだった。

けれど二人から放たれる雰囲気は柔らかく、

なによりアリア叔母様の位置が変わっていたのだった。

任命式によって爵位を失ったゼファード叔父様は自由だ。

もちろんアリア叔母様のそう言った意味で自由になったのだから、

周囲から大目に見て貰らえる様になったという事が大きいのだと思う。


「役割を果たせば貴族の義務は熟さなくても良い」


その立場が二人を解放的にしている事だけは理解できてしまった。

そしてその方が二人にとっては好ましいのだとも。

叔父様や叔母様の周囲にいる使用人もまた爵位を譲った以上、

必要以上に厳しい作法を二人に求めない。

だから任命式後半年もたたずにこんな事になっていてもおかしくはなかった。

下手すれば今になってギネヴィアに弟か妹が生まれるかもね?

なんて考えられる程度に二人の距離は近すぎた。

とはいえ、締める所は占める。

書類整理が一段落すれば執務室の休憩スペースで、

二人で並んで腰かけたソファーの前に、

私も腰を下ろす事になる。

私の後ろには勿論リラーナとグラファイスが立っているのだが、

その風景を見て、またしても二人はニコニコし始めたのだった。

リラーナの背中の鞄に入れていたお兄様からの預かり物を取り出してもらい、

手渡して貰えば、その数点の手紙を目の前の机に置いて、

叔父様達に確認してもらう。

ライセラスお兄様から預かってきた許可書を渡す状況になれば、

二人の顔は真剣な物になっていた。


「…アネス兄さんも仕事が早いね。

アレを見れば早くしないといけない気分になるのは解るけれど」

「「アレ」とは?」

「第2王子の事だよ。

やらかすのは目に見えていたって事だろうね。

お陰でライセラス君から出港許可書が貰えたから嬉しい限りだね」


私の知らない所で色々「外交面」の話も進んでいるようで、

叔父様の濁した言葉の意味をちゃんと理解する事が今の私には出来なかった、

けれど少し思う所もある。


「叔父様?叔父様は出航して何処に向かうおつもりなのですか?」

「ん?ああ夢と希望とロマンあふれる未開の地を見つけて、

探索するのさ!そして財宝を見つけて、ありったけの夢を詰め込んであるはずの、

海賊のお宝を見つけてウハウハするんだよ!」


本気なのか嘘なのかその隣にいたアリア叔母様もニコニコしながら頷いていた。

そんなバカな。


いやいやいや。


そんな訳の解らない物の為にあんな港湾施設に時代背景にそぐわない。

巨大船舶を作ったなんて私は信じない。

信じてあげない。

真面目は話を極力おちゃらけて話そうとして、

私の追求から逃れようとする叔父様。

けれど、本当に冒険の旅に出るのであれば今を逃したら、

その真意を聞く時は二度と来ない気がしたのだ。


「計算高くここまで作り上げた叔父様が「海賊の宝」程度を求める為に、

冒険に出るなんて考えられないのですが?」

「そんな事ないよ!きっと海賊は私達を満足できるお宝を持っているさ!

あとは、定番だけどここまでの冒険がお宝だったっていうオチでも許すよ!」


なんとか勢いで押し切ろうと考えている事がなんとなく解ってしまって、

それで納得するべきなんだね!っていう雰囲気を物凄く作り出していた。

叔母様もニコニコで、決してその笑顔を崩さないのだ。

これ以上聞いてくれるなと。叔父様の言っている事で納得して頂戴と、

いわんばかりに叔父様の可笑しな言い訳に突っ込みを入れないのだから、

更に怪しくて、私には聞かせられない事を始めようとしているのではないかって。

確信めいた思いをいだかされる結果となっているのだった。

けれど現実として「夢」を語る叔父様はどうしてもあの巨大船舶を、

出航させなければいけないと考えているみたいだった。

それはきっと叔父様だけが描いていて知っている未来の鱗片に「何か」が、

あるんだと考えるしかなかった。

だからこそ聞いておかなくてはいかない。

叔父様が何を見ているのかを。


「…そんなに状況が悪いとお考えなのですね」

「やっぱりエルゼリアだけは騙せないのかな?君も知っているからかな?」

「何をそんなに恐れているのです?」


一種のブラフだったのだけれど、それでも合格と言わんばかりに、

叔父様は「焦り」を教えてくれたのだ。


「この世界に本当に「私のやらかした」様な事を考えなかった人はいたのかな?

往年ファルスティンは「オースヴァイン」に世界へと繋がる扉に、

蓋をされ続けているんだよ。

そしてオースヴァインは変化を恐れる国だった。

世界の技術発展の流れで停滞して変化していないのは何処でも同じなのかな?

停滞して変化していないのはオースヴァインだけだったりしない?

技術の先端をファルスティンは走り続けているつもりだけれど、

私というか私達はオースヴァインしか知らない。

けれど世界はオースヴァインだけじゃないし、

その外は魔法による強力な発展していたりしないかな?

どうにかしてそれを確かめたいんだ。

オースヴァインを経由した情報は確実に歪むんだ。

歪まないとオースヴァインは滅ぶからね。

オースヴァインは暴発するまでファルスティンと世界を分断し続けるだろう?

そうなれば、世界(他国)と私達が接触した暁には、

オースヴァインが抱えている負債を背負わされることになりかねない。

だからその前にどこの国でも良い「フィルター」のかかっていない他国を見て、

ファルスティンがオースヴァインとは別の国だと認識してもらう必要が、

絶対に必要なんだよ」

「王国の暗部を背負わされる?」

「可能性は相当高いと思うよ。

だって歪みながら虚勢を張り続けた結果が今のオースヴァインだし。

立地条件の良さと無駄に広大で使えない土地以外を、

持ち合わせていないんだから要らない人員をファルスティンに、

捨てて来た様にオースヴァインに革命が起きて新政権樹立と同時に、

要らないゴミをファルスティンに押し付けるくらいはするでしょ?


―貴国が、オースヴァインを放置したからオースヴァインは潰れたのだ―


ってさ。

言ってきそうじゃない?」

「他国は美味しい所だけ取られてゴミカスだけを押し付けられる。

それを阻止するには、オースヴァインに決定的な「何か」が起こる前に、

他国と話を付けておかないと。

交渉事をするって意味でね。

もうファルスティンは領主ではなくて、

国家として他国と同じ土俵に立たないといけない所まで来ているんだよ。

オースヴァインの縋りっぷりと頓珍漢な交渉の進め方を見ていれば、

他国は逃げ出すだろうしね?

王家は下手すれば亡命先をファルスティンにと考えてもいるんじゃないかな?

この食糧危機を発端として王国各所で関係のひび割れと、

切り捨てが着実に行われるだろうしねぇ。

せっかくの接着剤(格安小麦)を貴族のプライドで捨てちゃったから。

もうこの波は大きくなるだけだよ」


それは王国崩壊後の王国の処遇を決めるテーブルに着くために、

他国と陸路ではない繋がりをもって、

交渉のテーブルにファルスティンが付くための椅子を探す為という事だった。

王国はこの状態のままではいられない。

それは私でもなんとなく理解できていた。

ファルスティンとしてこれ以上王国に好きにさせないと言う気持ちは、

当然の様に私にもあったし「王国を切り捨てる」という事は、

当然視野に入っていた。

けれど王国の悪しき文化を擦り付けられるとまでは考えていなかった。

確かにどういった結末を迎えるにせよ確実に「廃棄物」が出る事は確かで。

その廃棄物がファルスティンに捨てられてはたまらないと言うのが、

叔父様の考えみたいだった。


「私はね?オースヴァインを潰してしまっても良いのかと考えているんだ。

新しいゴミ溜めとなって存続してくれていた方が新しい国境線を引くのには、

便利な場所とできるんじゃないかとも考えているよ。

けれど、そう考えられるのはきっと私が王国に対して恨みもあれど、

不干渉でいられたからであって、エルゼリアを奪われたと思っている、

アネス兄さんは止まれない。

同時にライセラス君もファルスティンの王国に捨てられた領民の気持ちを、

考えたら簡単には止まらないだろうし。

二人はきっとオースヴァインが滅んだ後に来る「問題」は放置するだろうから。

国境となる場所は荒れるだろうしねぇ~

現在のファルスティンの国境の砦までで、

線引きを出来てしまえばきっと楽だけれどライセラス君がルクレイン領を、

見捨てられるかどうかは50対50程度の確率じゃないかな?」


流石に、放置まではないと思うけれど…

干渉はしなくなるだろうしね。

確かに王国内に取り残される義姉さまの実家のルクレイン領を考えると、

お兄様は王国に引きずられる事になりかねないと言う叔父様の考えも、

否定はできない事だと思う。

国境を越えて入ってくる侵入者を皆殺しにしてくれれば問題ないけど、

なし崩し的に王国の考えに染まった人間がファルスティン内に、

潜り込む事になれば、やれオースヴァインを復活させろと、

騒ぎ立てられるかもしれない。

絶対に面倒な事になる。


「最速で、王国の崩壊は後2年程度はかかると思うけれど、

いきなり戦争が勃発するとなると読めなくなるから、

他国と正しいつながりを作っておかないとね」


つまり戦後処理を迅速に行う為に他国の高官と交渉をしに行くって、

叔父様は言いたいのだ。

「冒険」はその方便であり、他国を偶然見つけて交渉してしまう為の、

言い訳という事なのだった。


「せめて孫が平和に暮らせるくらいの国にはしたいと思うよ」


叔父さまはそう言いながら手渡された出向許可書を手に取ったのだった。

もちろんその許可書には他国と出会った時の交渉する全権利も付随する。

国として立つためのファルスティンの準備なのである。


実は密かに作られていたバルダー家新居関連。

そして、加速し続けた叔父様はライセラス達が殺る気になった事から動きます。

動かなきゃいけなくなりました。

しかし叔父様としては一番大切なのはもちろんギネヴィアなので、

アネスとライセラスの殺る気は嬉しい限り。

オースヴァイン以外の国と交渉を始める為に叔父様は、

冒険の旅へと出るのでした。

その為の出港許可書と言う名の、外国と交渉の全権代理人としての証を、

叔父様は受け取ったのです。

ファルスティンが国として立つための準備でもあります。

独立を宣言したとしても、他国が承認してくれないといつまでたっても、

ファルスティンはオースヴァインの一部としてしか認められませんから。

まともな交渉をするファルスティンと、

伝統の虚勢を張り続け交渉にならないオースヴァイン。

国交を結ぶのはどちらが良いんでしょうね?

海外に国として認められないのであればそれはそれで良いのですが、

国外に侵略された時王家が縋るのはファルスティンである場合、

状況は最悪となるのです。

ターシャの実家であるルクレイン領を人質に取る可能性も捨てきれないので、

ライセラスは難しい判断を迫られるのですよ。

ルクレイン領の領民と領主達を全員引き取って引っ越しして貰えれば、

それで事たりる事ですが、土地に愛着を持っていたらそれも叶いませんし。

この物語はあくまでエルゼリアを中心に物語が進んで行くので。

王国とのやり取りは薄くなっていくのかもしれません。

何せ、叔父様が海外と取引を始めてしまったらエルゼリアは、

そちらに付きっ切りになりますからね。

叔父様が動けば動くほど、エルゼリアの仕事も増え続けるのです。


対オースヴァイン戦の前線に立つのはライセラスであり、

その隣に立つのはターシャなのです。

アネスも物理的に関わってきますが、

第2王子のドレス事件があった事からエルゼリアとギネヴィアは、

対王国戦からは外されて遠ざけられる事となりました。

このままオースヴァイン王国対ファルスティンの話は、

エルゼリア視点のこの話からは遠ざかっていくのでしょう。

ライセラスから話は聞いて戦争準備はするでしょうが、

それ以上は逆に隠される立場となってしまいました。

どんどんエルゼリアだけ王国から遠ざかっていっていますね。



ターシャとライセラスの話はもはや国家間戦争のやり取りです。


命がけでオースヴァイン王国を存続させる為に

ファルスティンに集る王太子と、

無茶な王太子からの要求を拒否し続け、

防備を固め続けて侵攻に備えるライセラス。

前線ではアネスが要塞を強化し続け遂に小競り合いまで始まる。

その時王国の第2王子が動いたのだ!

第2王子が未来の妃となるエルゼリアを捕らわれたファルスティンから、

救い出す「正義」を掲げた聖戦となる戦争が今始まる!

私兵を募りファルスティンに向かう第2王子とその「正義を掲げる貴族の戦士達!」

遂に戦いの場は整えられた!戦の始まりなのである!


という訳で、新しく同時間軸での物語が開始します。

しばらくの間。

「悪役令嬢の兄夫婦は妹を守るために全力で戦う」

の更新を始めます。

一話は同時刻に更新してあります。


これより物語内で登場人物が二つの物語を飛び越えて登場していく事になり、

キャラクターが二つの物語の中で行ったり来たりをする事になります。

補足説明を書き足して更新をするので毎日更新は行えるかどうかは微妙です。

ご了承くださいませ。

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