私が見たのは…?
次回の更新は明日の20時です。
じりじりと距離を取って引きはがしに来ているのに、
必死に逃げられまいと努力しているのは解るけれど。
私達は王国を食べさせていく為の食糧ではないのだから。
楽しいお手紙から更に2か月もたつと、
周囲の領主達の選別も始まってしまったみたいだった。
減った小麦を供給してくれる領地はなく仕方がなくなけなしの硬貨を使って、
隣国から輸入という手段を取る事にしたみたいだった。
王太子からの「親友宣言」のお手紙は、お兄様に華麗にスルーされて、
第2王子殿下が私に送ってしまった手紙と相まって色々愉快なやり取りを、
する事になってしまったそうだ。
それはそうだ。
第2王子殿下は、私に会う代わりにファルスティンに、
「食料を支援」して下さると書いてしまっていた。
支援して下さるのに、その支援とは裏腹に「王太子」は小麦を支援しろと、
命令して着ていたのだ。
それだけで矛盾の塊なのだから。
私に対する干渉と言う意味でもあの裏の真意はともかくとして、
それには気付かないふりをしながら、
「食料を支援すると言うは本気なのか?」
と、お兄様は王太子殿下に楽しいお手紙を書き続けている。
ただお兄様より要請があった。
私が構想して現在建設が進んでいる商業文化都市に早い段階で
「学園」を建造して学生寮を建設してほしいとの事だった。
それは言い変えれば「戦争」する事になった時に最前戦となる砦。
そして侵攻先となる領都から戦争に関係のない人々を非難させたいという、
お兄様の考えだったのだ。
もちろん未だ王国と本格的な武力衝突となる事は無いしその予兆もない。
けれど子供達の教育と避難と言う面で考えれば、
新しい都市に纏めて子供達を避難させた方が効率が良いし。
何より山を越えて新しい場所で集団生活を覚えると言う点と、
新しい都市で新しい常識を学ぶには早い方が良かった。
親と離れて暮らす事になるけれど鉄馬を使えばその日の内に、
領都に戻ってくる距離に新都市エルゼリアは作られる。
今でこそ鉄馬の性能の限界で半日の移動を強いられるけれど、
その内長大なトンネルで高速鉄道が開通すれば「通学」という、
概念だってきっと生まれると思う。
その時に私が生きているかは解らないけれど、
それでも未来のファルスティンは、人々の生活は続いて行く。
私はそう信じて今を作るしかないのだ。
戦争を無事に生き延びらせた後、
領都を復興する事が必要になるかも知れない。
その為にも無事に次代を繋ぐ子供達を無事に生き延びらせられる場所を、
余力あるうちに作っておかなくてはいけない。
どう転ぶか解らない以上、私はお兄様の要望には全力では答えなければ、
行けなかった。
「リラーナ、都市の区画の割り当てに、
融通の利くところはまだあったかしら?
極力駅に近い所が良いのだけれど?」
「既に容量一杯まで来ています。これ以上の詰め込みは、
移住時点で混乱をきたすレベルかと」
確かに駅前はもう既に埋まっているし、
正直「学園」を設置するスペースはもうない。
なるべく都市の人口密度は一定にして、
ムラなく発展させるつもりだったのだけれどそうもいっていられない。
「…隣接エリアの造成は何処まで進んでいるのかしら?」
「予定地の30区画中、20区画まで完了しています」
「…アルフィンと相談かしらね。路線密度がまだ余裕があるなら、
近場にもう一つ駅を作ってもらいましょう。
現状いま出来上がっている場所までで現区画の整備は完了として、
隣接カ所に駅を作れるか確認とそれを元に再度区画を割り直します」
「…かしこまりました。
大掛かりな変更になりそうですね」
「でかいクレームは来そうだけれどね。
「学園」はこれから大きな場所を取る事になる。
どうしても専用の「駅」か「駅」の近くに作って置かかければ、
後々後悔する事になるのよ」
「そうなのですか」
「色々と「学園」として作った物は転用する事が出来るという事ね」
「畏まりました。
直ちにアルフィン殿と渡りを付けます」
何度か現地へと足を運んで計画を修正しながら、
私はいつか訪れるであろう「戦争」の事を考えずにはいられなかったのだった。
王国は自らの命を永らえる為に絶対に「ファルスティン」から、
奪わなければならないのだから。
どういった手法を取るのかどういった難癖を付けるのは未だ私には解らない。
ただオースヴァイン王国は私達から搾取する。
その方法だけは考え続けているはずだから。
けれどそれから数日後、私は「王家」の醜悪な「本気」を見る事になるのだった。
正式な従者と共に、第2王子殿下からのプレゼントが私宛に届いたのだ。
私はあの「愛しいお手紙」の返事を書いていない。
沈黙が正解だと思ったし、向こうが私の気持ちを「偽造」する以上、
手紙を返すのすら億劫というより無駄だと割り切ったのだ。
ターシャ姉様もライセラスお兄様も返答の必要を感じていないとして、
無視する事になったのだ。
と言うより今後一切エルゼリアに対して、恋文を送るなと言いたい位で。
いっそのこと、
「カーディルの事が忘れられないのです…」
とでも送ってやろうかと思ったくらいだった。
もちろんお兄様と義姉様にやめなさいと指し留めされて沈黙を、
貫き続ける事にしたからそれはそれでいいと思い込んでいたのだ。
王太子対お兄様といった構図で手紙のやり取りは続いていたし、
私としてはもう王家に煩わされるような事は王都にでも行かない限り、
無いと思っていたのだ。
目の前の都市建設計画の修正で忙しかったからね。
それで突然のプレゼント。
それも巨大な箱に梱包されて私の身長より高い。
黒くて厚い革で外装を包み込んでいて、縁取りはもちろん金属。
8人掛かりで持ち上げられる様に周囲には、取っ手がガッシリと、
取り付けられていていかにも高級そうな物が入れられていますよと、
主張できるような箱なのだ。
王家直属の近衛の兵士が「第2王子殿下」の命令の下持ってきた、
私へのプレゼント。
もちろん中身の確認なんて私が直接見るまでさせて貰えない。
箱を動かす8人の従者と2人の侍女と2人のメイドを引き連れて、
1人の貴族かな?第2王子殿下の代理の貴族…なのだろう。
人物がその箱を屋敷の任命式に使った会場に持ち込んできたのだ。
油断という事も無かったと思う。
警戒態勢は最高潮。
けれど魔法式の爆弾だとしても「抑え込める」という自信が、
お兄様の付き人のライゼンも、
たまたま通りかかって「箱」に興味をそそられて近づいてきた、
アルフィンとギネヴィアも、
そして当然グラファイスも、そう言った脅威から守れると思って、
全員が集まる形となっていたのだった。
もしも守れないならそれは領都全体が吹っ飛ぶような強烈な、
攻撃魔法となるだろうしそうなったらみんな消し飛んで、
ファルスティン領は消滅するから、その第2王子が送って来た、
プレゼントを皆で見る事にしたのだった。
王都から来た第2王子の代理の人も領主以下全員が揃っている状態に、
気分を良くしたのか、私達に座ってよく見る様にと、
椅子を用意する様に促して来たのだった。
余計な時間を取らせてとも思ったけれど、反論したりして、
時間を引き延ばされるくらいなら大人しく指示に従ってやった方が、
早くお帰りになられるでしょうと、
ターシャ義姉様が周囲に促して私達は珍しく全員そろって、
その第2王子のプレゼントを見る事にしたのだった…
勿論リリーやリチェルチェにリラーナもいて、
箱の直近には、グラファイスとアルフィンにライゼンが、
箱を開けた瞬間物理的な脅威を感じれば直ぐに排除できる体制を整えて、
いざ御開帳とあいなって…
皆緊張していたけれどそれ以上に「王家」の第2王子殿下がどれほどの物を、
プレゼントしてくるのかと。
けれど…
キィ―と、音を立てて重たそうなその扉が開かれると、
そこにあった物は…
意味が解らなかった。
皆が呆然として…
誰も反応する事が出来なかったのだ。
けれどそんな中で箱を運んできた貴族が私に声をかけてくる。
「如何でしょうエルゼリア様。
貴女が第2王子殿下の隣に立つためにご用意された
「美しいドレス」で御座います。
寒い地方にお住いのエルゼリア様が直ぐに身に付けられる様に、
温めながらお持ち致しました。
これを身に付ければ何時でも第2王子殿下の隣に、
並んで立つ事が許されるのです」
その箱の中には…
私そっくりの人形が…
私の為にと用意された「ドレス」と言う名の明らかに違う物を、
これでもかと取り付けられている人形の姿が…
箱の中にあった。
「エルゼリア!ギネヴィア!見てはいけません!
リラーナ!リチェルチェ!直ぐに二人を連れて自室に戻りなさい!
それから魔法でも薬でも良いわ直ぐに眠らせなさい!」
ターシャ義姉様の叫ぶような声が聞こえて…
箱の中身は何だったのかともう一度、あの箱を持ってきた貴族に、
確認したいって思って…
けれど、そこで私の意識は途切れたのだった。
アレは…
何だったのだろうか?
さてエルゼリアが気絶してしまったので、
プレゼントの詳細はお察しです。
もちろんこの後エルゼリアにはちょっとした記憶処理が施されます。
まぁトラウマにしない為の処置ですね。
なので、次回は一気に場面転換する事になります。
pixiv版とは少々表現を変えました。
よりマイルドにそして裏側で何があったのかはこちらでは書きません。
詳細が知りたい場合は、
「伯爵令嬢は自重しない。叔父様は旅行に出かけてしまいました【9】」
の2ページ目に記載してあります。
別視点で何が起こったのか。
「伯爵令嬢は自重しない。叔父様は旅行に出かけてしまいました 閑話 ライセラスの誓い【9.5】」
にて語りますがそれもこちらでは飛ばします。
気になる方のみ確認して戴ければと思います。
今のエルゼリアには関係の無い事なので。




