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悪役令嬢は何もしない。けれど叔父様は世界を変えてしまいました。  作者: VLS
貴族令嬢としての始まり 与えられた役目を果たす為に
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王子様の素敵なお手紙は私に届いた物だけじゃなかったのね…

次回の更新は明日の20時です。

リラーナの姿とよりビシッと着せられた特別な傍付き用の衣装を堪能したら、

その内実用的な「衣服」を望むようになるんだろうなぁ。

なんて間延びした考えに浸りながら、

私はリラーナと部屋の外で待っていたグラファイスを引き連れて、

お兄様と会談を行う部屋へと案内される事になる。

とは言ってもその移動も一苦労なのだ。

私用の区画を抜ければ、今度はお兄様の統括エリアに入る事になる。

それだけでもそれなりの距離を歩く事になった。

言うまでもないけれど、屋敷全体は複雑な構造となっていて、

自分の関係ないエリアならその構造は解らない。

万が一攻め込まれた時の最後の砦となるべく叔父様が設計したこのお屋敷は。

地下は叔父様の解析機関のスペースで、

その上の地上部分は式典用の大広間が大半を占めている。

そしてその上は大まかに3つに区画分けされたエリアとなっている。

真っすぐ行けば近いはずのエリアは何度かの会談の上り下りを繰り返して、

お兄様のエリアのまだ使われた事のない「会談用」に用意された部屋に、

私はたどり着いたのだった。

既にお兄様は部屋の向かい合わせに置かれた椅子へと腰掛け、

ゆったりとくつろぎの姿勢を取っている。

隣にはターシャ義姉様もいてその後ろにはリリーとライゼンもいる。

領内の重大な決定するのに必要とされるメンバーがそろっていたのだった。


「お待たせしてしまいましたか?」

「いや。私達も今しがた着たところだ。

まだ予定の時間になっていないし、どうだ一杯?」


そう言いながらライセラスお兄様と、

ターシャ義姉様は優雅にお茶を飲んでいた。

お兄様も任命式で着ていた式服を身に着けている。

当然、義姉様も。けれど今日のドレスは腰回りの余裕がありそうだった。

私の腰回りと同じかそれより少し細い程度。

苦しそうなそぶりはしていなくてちょっとほっとした。

私にも直ぐにお茶が入れられて差し出されるとそれに口を付けたのだった。

味はほのかに甘くまろやかで飲みやすくとても好みの味だった。


「あ、おいし」

「ターシャの実家が送って来たそうだ。

新しい産業とかでお茶の葉を生産し始めるとか」

「…まだ少量しか出来ないみたいですが…、

売り物になる目途はついたのでしょうね」


はぁ、とため息交じりで返事をするターシャ義姉様。

けれどぽつりと言葉を漏らしたのだ。

「趣向品を作っている場合じゃないでしょうに」と。

義姉様の心配事も理解できる。

義姉様の実家ももちろん食料の高騰を起こしている事は言うまでもない。

その支援をファルスティンにしてほしいという手紙が来ていても、

おかしくはないのだ。


「お兄様?義姉様の御実家に食糧支援は?」

「ん?ああ、王国が変な事をしていなければ足りているはずだ。

もともとターシャの実家には小麦の余剰生産分の一部が別口で送られている」


ターシャ姉様の実家はファルスティンからそう遠くの土地ではないから、

要請があれば何時だって支援できる場所にある。

一時、領外への鉄馬の延伸先をどうするかをアネス父様とゼファード叔父様で、

検討した事があったのだ。

そのレールの伸ばす先は王都ではなくて所縁の地が望ましいとして、

候補が義姉様の御実家・ルクレイン領だったのだが、

領地防衛と言う点に置いてきな臭い王国と対峙する以上、

未来の延伸先とする程度に留めたのだった。

とはいえターシャ義姉様の御実家のファルスティンへの偏見は、

何度かのお兄様を伴っての義姉様の里帰りで別の方向にひん曲がっていた。

それはそうだ。ライセラス兄さまの大切な奥方となった、

ターシャ義姉様がお兄様を伴っての里帰りが「普通」で済む訳が無かったのだ。

完全フル装備のパワードスーツ?魔道アーマを着込んだうえ、

魔法の武具で完全武装した護衛騎士50名が付き、

その上にリリーが傍に控える。

義姉様の移動の補佐に更に3名のメイドが傍に控え、

2名の馭者が姉様の馬車を操作し多頭引きの馬に馬車を引かせる。

その義姉様の乗った馬車も立派な大型の物。

その他に荷物運び用の3台の大型馬車が追従する、

何処のお姫の移動だよ的な車列でご実家に里帰りされたのだ。

実家に着くまでの間、何不自由する事ない旅路だったと言うし。

到着した集団にルクレイン領の皆様はさぞ驚かれた事だろう。

まぁファルスティン製の馬車、

とりわけアネスお父様と、ライセラスお兄様が使う馬車は、

叔父様のフルカスタマイズが施された「馬車」の形をした「何か」なのだ。

鹵獲されても良い様なレベルで仕上げたとかなんとか言っていたけれど、

快適な移動を保証する「馬車」は姉様が嫁いで来た時に一台増備されて、

義姉様専用の物が用意されている。

言うまでもないがギネヴィア専用の馬車もあり私の馬車は現在製造中らしい。

そんな良く解らない洒落にならない集団に護衛されて、

ルクレイン領にご帰宅なされた義姉様の扱いを見た姉様の実家は、

態度を変えざるを得なかった。

余剰の小麦も持って行ったし、

貢物と言う訳では無かったけれど便利な叔父様の簡易機械も渡したしね。

なにより義姉様のその時のお姿が「伯爵夫人」の格好だったのだ。

王国の正式な「格式」にあった訪問着を身に着けて到着したお姉様の姿に、

お姉様の御実家は恭しく迎え入れるしかなかったそうだ。

実家に帰るのに伯爵夫人の姿をして「訪問着」と言う形で正装して戻った、

娘の姿にルクレイン男爵は驚かざるを得なかっただろうしね。

ファルスティンに「伯爵夫人用のドレスを用意する余裕はない」と。

見られただろうしね。

里帰りをした二人の姿は伯爵位を持っていても、

格下として扱って良いとされる「ファルスティン貴族」の姿はなく、

王国貴族として相応しい格好で礼儀を守るライセラスお兄様の姿を見れば、

ファルスティンの偏見を置いておいて、

粗雑に扱う事は出来ない「里帰り」となった事だけは確かだったし。

礼を尽くされたのだからそれに相応しい対応をせざるをえなかっただろうし。

それからと言うもの定期的にターシャ姉様の御実家はファルスティンから、

「おすそわけのお届け物」と言う名の「支援」が行われていた。

辺境も一男爵だったお姉さまの実家もファルスティンの余波を受けて、

じわりじわりと豊かになってはいたみたいだった。

少なくとも生きるのに精一杯ではなくて新しい「何か」をする余裕は、

あるみたいだし?

適切に「おすそわけの贈り物」が行われる義姉さまの実家は、

言葉は悪いけれどいわゆる、経済的にファルスティンの制御下にあり、

王国の経済動向とは無縁でいられる状態だったみたいだった。

それはこの王国に訪れている食糧難であっても

「おすそ分けの贈り物」が増えるだけ。

ファルスティン製の小麦と言う事を義姉様の実家の領民も理解しているから、

抵抗なく送られた小麦は消費されているみたいだった。


「領地は何の問題もない平和だって手紙も来ていますから…

新しいお茶の生産が上手くいったと喜ぶくらいです。

心配はしていないのですが。

何というか我が親ながら緊張の留め金が外れたかのようで、

のほほんとしていて…

不安になります」


勝気なタイプの儀姉様の御両親はとてもマイペースになってしまっていた。

一時は他の貴族に弱みを握られて陥れられそうになった時もあったけれど、

いまや無風でどこ吹く風。

王国との繋がりを最小限に抑えて巻き込まれないようにする事で、

自衛を行っているみたいだったし。

その判断は正しいと思う。

けれどそれ以上にこれから荒れる事が確定した王国にルクレイン領は自衛を、

進めなくてはいけなくなってくるだろうけれど、

義姉様の言った「のほほん」が、本当だった大変な事にもなりそうで、

心配になるのは当然だとは思う。


「けれど、今は私の実家の事はどうでも良い事。

あのふざけた「手紙」とライセラスにも届いた手紙に対する、

方針を決めてしまいましょう」


ターシャ義姉様はそう言いながら、

今日の議題に題して話題を戻してくるのだった。

それは確かに「ファルスティン伯爵夫人」の姿で優先すべき領内の、

問題事をしっかりととらえて解決策と言うよりこの問題の対応方針を、

話合う時間が始まるのだった。

けれど、その前にリリーからリラーナに手渡された、

ライセラス伯爵閣下に届いた手紙に目を通す事になったのだ。

リラーナから受け取った手紙は2通で、一つは王太子からの手紙で、

もう一つは第2王子殿下の手紙の様だった…


「これは?」

「まずは現状把握と言う意味でも、目を通してくれ。

でないと話し合いにすらならない」

「解りました」


返事だけして、私はその中身の手紙を読み始めたのだ。

読みはじめたのだが…


まずは王太子の手紙に書かれていた事は、



久しぶりだ。

元気か?

お前にこうして手紙を出すのは初めてだが、

私はお前の事を良く覚えているぞ。

いま私はちょっと問題を抱えていてな。

それを解決するのに協力させてやろうと思ってペンを走らせている。

国王陛下から王国内に発生している「食料危機」の状態を、

王太子として解決して見せろと課題が出たのだ。

そこで思い出したのだが「学園」時代にお前によくしてやったことを。

大丈夫だ。

お前が忘れていても私は覚えている。

そこで思いついたのだ。

私が国王に即位した時の贈り物の前払いとして、

ファルスティンが抱えている食料(小麦の事かな?)を、

王国に納める許可をやろうと思う。

支払いはまあ、なんだ。

王国に尽くせる「栄誉」を与えてやれると思うのだ。

この「栄誉」を持ってファルスティンの国内の信用度が上がり、

他の貴族からもバカにされなくなるだろう。

お前が馬鹿にされるのを見ていて私も悲しい気持ちになっていた所だ。

丁度良い機会を用意させてやれたと思う。

素晴らしい提案だと思わないか?

良い返事を待っている。



なんだこの手紙?

提案?栄誉?いや、それ以前に…


「お兄様と王太子殿下はお知り合いでしたっけ?」

「いいや。学園での接点なんてない。

何せ周囲の貴族達も「ファルスティン」に係る事を、

させたくなかったみたいだし本人だってそうだろう。

会話と言っても、いや会話自体したことがない。

影口位ではないかとは思うが…

ターシャ、話しかけられたことあったか?」


姉様はフルフルと首を横に振った。

同じ学年だったターシャ姉様もまた、

王太子の事は知っているみたいだったけれど、

それ以上に近づく事はしなかったみたいで…


「少なくとも私がいる間は、話しかけてきた事なかったですね。

それに王太子と生活するグループ自体が違ったでしょう向こうは、

「高貴な方々」でしたから、会話などありえないでしょう」

「そう、なんだよな…

しかし手紙には見ての通りで、一体何がしたいのか。

本気でこちらを怒らせたいのか?

…まぁもう一枚も読んでくれ。

おまえにとっては頭がおかしくなりそうな事がかいてある」

「は、はぁ…」


そう言われて今度はお兄様に届いた2枚目の手紙を読む事になる。

2枚目の差出人は第2王子殿下からだった。



ライセラス伯爵閣下。

唐突なお手紙を出す事お許しください。

ですがこの思いを止める事は出来ないのです。

私とエルゼリアは魂で繋がり愛し合ってしまったのです。

ですがライセラス公爵閣下の許可が出ない事には、

我が愛しのエルゼリアは素直になって私に笑顔を向ける事が出来ないのです。

任命式でエルゼリアは私に言いました。

「ファルスティンと王国何方を選ぶのか」と。

今の私なら答える事が出来ます。

私はエルゼリアを選んでやる事が出来ると解ったのです。




…は?

私はあまりの衝撃にいったん手紙を読むのを辞めてしまった。

わ、解らない。ってか解りたくない。


「…選んでやる?って、何言ってんのこの人…」


ぽつりと零れた言葉に、

私の後ろで控えているリラーナとグラファイスの二人は、

「え?」「は?」

とだけ、言葉を漏らした。

私の呟きは聞こえていたらしい。

いや、そう言った問題じゃない。

私は自分の眉間に深いしわが出来ている事を自覚しながら、

それでも手紙に視線をもう一度戻して続きを読む。




あの時エルゼリアに言われた通り、

私にはファルスティンに赴き、エルゼリアを納得させられる覚悟が出来ました。

だからこの覚悟を持ってエルゼリアとの結婚を認めて戴きたい。

そうすれば私は何の憂いもなく王都からファルスティンに戻ってしまった、

エルゼリアを王都にある私の離宮に移り住まわせる覚悟があります。

少々時間はかかりましたが覚悟が出来た事を喜んでいただきたいのです。

私は絶対にエルゼリアを守ります。

だからライセラス・ファルスティン伯爵閣下。

貴方はエルゼリアに持たせられる物も用意して、

ファルスティンで待たせて置いてくれれば良いのです。

後は私が責任をもって迎えに行きます。

そこで、結婚の許可を戴けると確信しています。

後は私が迎えに行きたい気分となる覚悟を固めた様に、

貴方もエルゼリアを手放す覚悟を決めるだけなのです。

良い返答をお待ちしています。


エルゼリアの愛する第2王子殿下より、

エルゼリアを手放す覚悟の決まらない

ライセラス・ファルスティン伯爵閣下へ。




?????

はい?


「何これ?」


本当にナニコレーーーーーーーーーーーーーーーーー



じぶんで解決できない事は解決できそうな奴に解決させようとする、

王国の王子達なのでした。

彼等の手紙は妄言と寝言で出来ています。


因みに領内の商人の正体は、

バルダー家が作り上げた生産物の取引を担当する、

セールスマン兼運送業者と言った立場が正しい。

基本バルダー家が作り上げた物で領民が欲しいと言えば手つけ金代わりに、

小麦袋をもらい、後日品物納品の代わりに「残りの小麦」を計量して、

代金として受け取るのがお仕事。

なので純粋な商人ではないし、納品先は家に限定されるから、

外商は商品を買えない。

商品の納品は登録領地で登録された住所にしか届けないし、

その住所と個人名が領地の名簿になければ、手つけ金代わりの小麦は、

取られたままになるうえ発送されない。

領民を懐柔して代理役をたてる事で飼う事も出来るが、

そこまでしてほしい高品質な貴族用の物は、ごく一部しか売りに出ないし、

その取引は領内の商人にしか扱わせて貰えない。

何処まで行っても外商は稼げないのだ。

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