通貨の形を信用と実績でねじ伏せてしまえる…の?
次回の更新は明日の20時です。
ながーい時間を使った私のお着換えは無事に終わり、
私は久々に困惑するリラーナの姿を見る事になった。
針子さん達に作らせていたリラーナの新しい「式典用の特別な傍付き用」の、
侍女服は言うなれば、綺麗に着せる為に作られた物。
自分で着るならある程度サイズに余裕がないと着られなかったりする。
けれどそれ以上に着せられる形を取れるなら、
嫌らしい突起物やデザイン性に置いて犠牲にせざるを得ない、
留め金やボダンは背中側に設置できるのだ。
だから、大まかにいつもリラーナが着ている傍付き用のボタンを全て、
後ろ閉じにしてあげて、その上に背負う鞄すら背中で固定式にしてあげれば、
いつも以上にスッキリとした皴の無い、
特別な傍付きの衣類を身に着ける事が出来るのだ。
複雑に織り込まれた関節部もあてがいながら着せられれば、
より一層傍付き用の衣類は高貴な演出となる。
デザインは洗礼されスタイルの良いリラーナの立ち振る舞いは、
より綺麗に演出される事になり、
どこかの良家の御令嬢と言っても過言ではないのだ。
ゼフィラの一族は王国内では貴族爵位を認められていないが、
ファルスティン内では貴族の様な扱いを受けてもおかしくない立場なのだ。
領内に余裕が出来てくれば自ずと私の身の回りの侍女達には、
そう言った「着せて貰う」衣服を着て貰わないといけなくなる。
広告塔としての役割もあることながら、
私の身の回りの経済構造を少々変える必要があるからだ。
少なくとも「王国」との関係を切れない以上、
私達の周りだけで、王国との経済的な繋がりを持っておく必要がある。
実際領内には、少なからず「王国の通貨」が入って来ている。
問題はその通貨が領内で「ファルスティン内で使われない」事なのだ。
所謂管理社会の様な形になっていたファルスティンの経済活動は、
基本その日払いの現物支給からスタートしてしまっている。
だから、通貨に関する信用度が低すぎるのだ。
何が言いたいかって、お金で物が買える物がほとんどない。
王国通貨は信用されないって事だった。
「お腹を満たす事」「暮らす場所」そして「着る物」これらと交換できるのは、
領内で生産された「小麦」なのだ。
生きる事に必死だったファルスティンの領民達にとって、
「食料」の価値は計り知れなかった。
そして、長期保存が効いた小麦はそれだけで価値があり、
通貨取引の代わりを出来てしまったのだ。
その小麦を消費する事によってより良い物を買う事に慣れてしまった、
領民達にとって「貨幣」は何の意味も意味をなさない。
大物を買って小麦の取引をするのであれば領の行政が、
そのやり取りを補佐する事に自然となっていたのだった。
自然と銀行の様な役割も行政が請け負う様になり信用度と言う点でも、
王国民にはともかく、ファルスティンの領民にとっては信用しない理由がない。
その絶対的な信用に答えて来たアネスお父様の信頼は固いものだった。
大型取引ともなれば状況は更に変わるのだが、
そもそも大型取引を行う領民はほとんどいない。
結局ある水準に達していない限り、通貨経済には移行できない上に、
叔父様はとんでもない事を言ってしまっていたのだ。
「「魔法」なんて不思議パワーがあるから、
信用取引はある一定のレベル以上でないと成り立たないよ。
経済規模も現在のファルスティンでは足りないからね。
通貨取引なんて制定しても領内に向けては今は意味をなせないね。
それに領民の「購買意欲」はファルスティンで生産されている物で、
「満たされてきてる」からしょうがないね。
でも一番の理由はさ「そこ」じゃないんだよねぇ?
錬金、って万能でね?
王国と全く同じのフルコピーした完璧な
「偽造通貨が作りまくれる」んだよねぇ…。
「金」はこの世界でも採取と発掘は難しいとされているけれど、
錬金できてしまうし?
そうすると希少だから価値がある「金」の価値はどうなるかな?
その気になれば「黄金の延べ棒」大量生産してさ?
黄金の価値大暴落とかできるんだよコレが。
これから重工業が発達すれば、自ずと必要になる「金属」は増加するから、
ファルスティン内部においてはある一定以上の「消費」が見込めるけれど、
「王国貴族達」が希少金属として価値を作り上げた「金」は、
やる気になるとさ、簡単に価値が落とせるんだよねぇ…
本物の「ハイテク産業(電子部品製造)」が発達したら、
まぁ金属の価値も変わってくるかもしれないけれど…
自分達が価値を担保している物を壊されるとどうなるんだろうね?
そんな訳で、魔法があるから希少金属を使った信用が作れない。
信用が作れないから現物取引は辞められないと思うよ」
「では叔父様はファルスティンは貨幣経済に変われないとお考えですか?」
「いいや。君なら解るだろう?偽造防止の紙幣を造れば良いだけだよ。
技術レベルの上昇と共に材料と構造を変えた「紙幣」を作りつづけて行けば、
良いんだけれど、それって通貨を管理できる「国」にならないと出来ないでしょ?」
「そうですね…」
「領内だけで使える物も考えるけれど、結局「為替」をしないなら、
今のままで良いんじゃないかな?
通貨管理は手間がものすごくかかってメンドクサイのに、
手間をかけても今は「利益」を生まないから。
用意はしてあるよ?後は兄さんとライセラス君次第だから。
どっちに極振りするのか解らないし。
けれど本気で戦う事を決めた時には、ね?」
にんまりと笑っていた叔父様はともかく、厄介で捨てられない王国通貨を、
領内に蔓延させてダメージを受ける事はしたくないのだ。
だから、価値があると見せるだけの取引を私達だけで行う意味もある。
外からやって来た商人達が店を構えても売れない理由がその辺りにもある。
領内の商人達はお客が買いたい物があった場合は、
「小麦を持参して物々交換する」事を許せるのだ。
溜まった小麦は行政に持っていけば、
行政が預かって溜めて置く事も許されるし。
商人が望めば「王国通貨」に変更する事も許される。
逆もまたしかり。
けれど外商はそうはいかない。
そう言ったファルスティンの商人達が受けられる恩恵は外商には、
受ける事が出来ないのだから。
仮に大量に取引に成功したとしても、手に入れた小麦を持って、
領外に出たとしても輸送費だけで足が出る。
ましてその小麦を使ってファルスティン領内で領内の商人から物を、
買おうとすれば同じ商人だから足元を見られるしどうあがいても、
赤字を垂れ流す事しか外商にはできないし。
領外への大量売却という大型取引は「領内の商人」にしか、
ファルスティンは仕事を回さない。
独占禁止法とか?そんなものは未だこの世界にはなくて、
もちろんそんな法律は「貴族」が許さないから、やりたい放題なのだ。
さぞや外商達は撤退したい事だろう。
品物を運んでも売れないし。
買いたい珍しい物は高すぎて買うだけで赤字となる。
特殊な製品は基本的にバルダー家から、
ファルスティンが直接買ってしまっているから市場には出回らない。
けれどお抱え商人は貴族の意向も聞かなくちゃいけないから大変だね。
商人達はともかく問題となる「王国通貨」の裏付けは「希少」な「金」で、
作られていること前提なのだ。




