王家からの手紙は私に笑いと感動を与えてくれる。
次回の更新は明日の20時です。
国全体で食糧価格が高騰して大変な事になっているらしいから、
ファルスティンも大変だろう?
私の力を使ってファルスティンを支援する事も出来ると思うのだ。
だから、一つ話し合いをする場を設けてくれると信じている。
私とエルゼリアが協力すればこの国難も乗り越える事が出来るから。
二人の愛を確かめあう良い機会だと思うし、王家の力も見せられるぞ。
…みたいな?
「私達は「何に」助けて貰えば良いのかしらね?」
「もちろん王家に「助けられて、あげられるべき」なのではないでしょうか」
「…そう、なの?」
「認識能力が欠如してる事だけは理解して差し上げて置けば宜しいかと」
いや本当にどうお返事を返してあげたら良い物か…
話し合いの場って何よ?
私は何の話し合いを持つべきなのよ?
ふと同性の意見も聞いてみたいなぁと思って、
グラファイスに手紙を読ませて感想を聞いてみたのだ。
「頭のねじが外れてしまったみたいですね…
壊れた機械は叩いて治すのが宜しいかと思います」
「そうね。機会が出来たら全力で叩いてもらえる?
戯言は聞きたくないから、それこそ天に昇れる様に力いっぱい」
「はい。ご用命賜りました」
アホな手紙だけれど一応「王家」からの手紙なのだ。
捨てる訳にもいかず引き出しの中に投げ捨てると、私は大きくため息を付いた。
アレが?王家の送って来た私の結婚相手候補だったのかと思うと…
「王国は長くないかもね」ではなくて「王国本当に滅びるかもね」と、
考えるしかなかった。
第2王子殿下がご丁寧にも私達を心配して送って下さった、
余計な心遣いと私への恩着せがましい真心が感じられるお手紙は、
私の執務室にいるリラーナやグラファイスとその他に種類を整理していた、
侍女達やメイド達の動きを止める位には衝撃的な内容だったのだ…
本当に王国の王子様なのかと問い質したくなる衝動に駆られるけれど、
それ以上に私自身が「王家」に対しては、信じたい部分もあったのだ。
何せ「次代のファルスティン伯爵」には、全ての権限が与えられているのだ。
それは何時だって独立する準備を進められるという事で、
王国との経済的な繋がりはファルスティンには必要ないのだから。
何時だって「中立」か「敵」としかならないファルスティンに対して、
一体何を考えればこういったお手紙が届けられるのか…
本人が「勘違い背伸び野郎」であっても周囲は止めると思ったのだ。
「会いたい。合って話をしたい」なんて言って来ているけれど、
此方は会う必要はないし会って話す様な親密な仲じゃない。
無いのにもかかわらずこの手紙には、私と第2王子殿下は会うべき的な、
そう言った文脈で書かれそれ以上に「会いに来い」的な形なのだ。
支援してやる代価に私に王都に挨拶に来いと…
そう、捉える事の出来る内容だったのだ。
そうなってくると話が変わって来てしまう。
「…ライセラス様に取り次ぎますか?」
「そう、ね」
どんな手紙が来ても、ライセラスお兄様の対応は変わらない。
つもりだったのだけれど一応王国の王子様からの私への呼び出しなのだ。
そう考えれば「愛の?手紙」と割り切ってしまうのも、
それはそれで問題になりそうな内容だった。
恩を売りたい。
私と会談を持ちたいと行動をおこしている事だけは評価するべき?
事なのかもしれない。
与えられた情報とその責任の取り方としては最悪だろうけれど、
無視してお返事を返さなくては確実に次に私へ届けられる「お手紙」の内容が、
悪化した物になる事だけは確かなのだ。
それをライセラスお兄様は容認するつもりでいる。
いるのだが王国側サイドはファルスティンとの間を、
もう良好に保つつもりがないと判断しても良い物か…
変な話ではあるのだが、王国側の態度が腑に落ちないのだ。
第2王子が「暴走」出来たと捉えるべきなのか。
はたまたもう王子周辺も「お花畑」が作られているのかによって、
私の対応だけではなくて、お兄様の取る対応も変わってくるのだから。
たかが手紙だけれど非情に面倒な構成になっていたのだ。
これを此方が混乱させる為というのなら、
それ以上考えなくて良いから楽なだが。
本当に嫌な反応をしてくれる。
それを差し引いても一番の問題は「会いましょう」なのである。
それは手紙の構成上「私がお願いに上がらなくてはいけない事」となる。
手紙の内容で何故かファルスティンは王国に助けて貰う立場なのだ。
現実的に助けて貰うかどうかはさておき第2皇子殿下の中では、
ファルスティンは困窮している事になっているのだからたまらない。
だから?
―困っている可哀そうなエルゼリアは第2皇子殿下に助けて貰う為に、
王都に赴いて王城で跪いて救援を乞う―
事でも、想像なさって悦に浸っているんじゃなかろうか。
お兄様に代替わりして「独立国家並みの権限」をファルスティンに渡した、
本当の意味を第2皇子殿下は理解できていない。
いや、するつもりもないのかもしれない。
けれど少し思った事があるのだ。
既に卒業生の第2王子は何故か「婚約者」がいないのだ。
問題児だから婚約者を付けられなかったのであるなんて簡単な理由なら、
私も納得できることだった。
もしくは婚約者は死んでしまったとか?そう言った設定が、
ある様な気がしてならない。
王子は無知だが無能じゃない気はするのだ。
いくら何でも無能すぎれば王都での生活に支障をきたす事は確かなのだから。
そう考えればこのご都合主義すぎる「学園」を内包している所為で、
崩壊寸前にまで追い詰められた設定を盛り込まれた王国は、
私達の登場を待たずに崩壊しているはずだから。
乙女ゲームのいい加減な世界を再現してしまえているこの世界では、
普通ならアリエナイ貴族の厳しすぎる階級社会を内包している割に、
階級に対する捉えられ方が緩すぎるのだ。
学園内は無礼講階級は関係ないと歌いながら、
クラスを「貴族」と「平民」で分けている時点で、そんな立て前は、
現実の中ではない物とされる。
下級の爵位の人物が上級の爵位を持つ者に、
不用意に話しかける機会を与えて良いはずがない。
基本中の基本の事だけれど「乙女ゲーム」の舞台となった「学園」では、
そんな基本すら流される。
これを「乙女ゲームの設定だから」と言って流してしまう事は、
簡単だけれどそれを実際の貴族社会でできてしまったら、
上位階級の人は誰かに話しかけられ続け陳情が終わらず一歩もその場から、
歩けなくなってしまう事になるのだ。
厳しい階級社会には指揮系統を明確にして、
無限に湧き続ける「陳情」と言う名のお願いをさせない意味もあるのだ。
けれど、本当に貴族子息達を育でるのであれば、
失敗できる「学園」で、失敗出来る内に階級社会に慣らされるべきだと思う。
けれど、実際学園でやっていた事は、
厳密な貴族階級を「なあなあ」にする事でしかなくて。
果てには「なあなあ」になるから、めんどうくさくなったのか、
「貴族と平民は」学園では平等で「身分なんてない」事になって、
誰でも楽しく話しかける事が出来る場所と変化して都合よく、
「生徒達」が歪めて独自の解釈していた事は、
確認するまでも無いくらい明確な事実の歪め方だった。
何時の間にやら「上位貴族階級の生徒達」が自分達の都合の良いように、
学園の規律を変えていった事の集大成が、
ソフィアも気兼ねなく楽しめるあの「学園」という「幻想」であり、
貴族の教育の場として作られたはずの理想の成れの果てだったのだ。
私は自分の身に降りそそいだ「婚約破棄」と言う物を、
そういう風に自然と処理していたのだったけれど…
思い出してみれば、
―上位貴族がどれだけ権力を乱用しても許されるかを、確認する場所―
でしかなかったのかもしれない。




