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悪役令嬢は何もしない。けれど叔父様は世界を変えてしまいました。  作者: VLS
貴族令嬢としての始まり 与えられた役目を果たす為に
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朝はリラーナに確認してもらう事から始まっていて…そんなに心配しなくたっていいのに。

次回の更新は明日の20時です。

「おはようございますエルゼリア様」

「…おはよう」


どうにも落ち着かないお屋敷の自室で目覚めると、

そこにはもちろんリラーナがいる。

それがファルスティンに戻って来た伯爵令嬢エルゼリアとしての、

朝の始まりだった。

もちろん起こしに来たリラーナは特別な傍付きの侍女服に身に纏い、

任命してリラーナの下に付いた侍女もその後ろに控えている。

ベッドから足を下ろすだけでそこには室内用の履物が用意されていて、

スリッパの様なそれに足を通せば、自然とリラーナが手を伸ばしてくるのだ。

ベッドから立ち上がる事に対しての補助として両手を、

差し出された手に乗せる様に促されるのだ。

私としては介助などされなくとも普通にベッドから立つ事は出来る。

けれどリラーナは私をお姫様の様に扱いたいのか、

一つ一つの動作を確認するかの様に手を乗せる事を促してくるのだ。


「簡単な健康チェックですよ。

私が求める動作をエルゼリア様がいつもと同じ様に出来れば、

お体に異常がないという事になりますから」

「それは解るのだけれど、でもそこまでしなくても…」

「エルゼリア様?お忘れですか御身は既にご自身だけのものではないと。

私達のエルゼリア様であり、ファルスティンの姫なのですよ」

「そんな大げさな…」

「ファルスティンにエルゼリア様の代わりが務まるお方がいるのですか?

いるのなら直ぐにご紹介ください。

直ちに私の部下として雇用し育てますので。

ことお仕事に関してはエルゼリア様の指示に従いますが、

エルゼリア様の私生活の管理はリラーナのお仕事です。

私からお仕事を取り上げないで下さいませ」

「…そう、ね」


どうにもまだ、学園生活の感覚が抜けていないと言うべきなのかもしれない。

学生は、自分でなんでもさせて貰えたのだ。

もちろん小さなことから大きなことまで何でもだ。

あの苦しかった制服も自分で着る事が許されていたという点では、

まぁ便利な物だったと言うべきなのかもしれない。

初日に決定したリラーナは直ぐに自分の部下となった侍女に指示して、

私の身の回りの世話をするチームを作り上げてしまったのだ。

もちろん、初日に拾い上げた新作のドレスを作るデザイナーさんや、

針子さん達も組織的に言うのであればリラーナが直上の上司となる。

私の全ての指示はリラーナを経由して伝達される事に不満はないのだけれど、

少し思う所があって、楽な衣類を作らせたいなと考えていた部分もあった。

単純に言ってしまえばコルセットをしなくても良い衣類が欲しいのだ。

それだけでも、生活が楽になるなぁなんて考えていたりしたのだけれど、

その考えはリラーナによって防がれる事になる。


「エルゼリア様、お気持ちは解らなくはないのですが…

長年の矯正で細くなりすぎてしまった腰回りは、

もはやコルセットなしでは生活する事が難しいかと存じます。

極力、緩い物を用意してお体を戻そうとしていますが…

括れ方が歪で腰が変形しているのです。

戻すには、まだまだお時間がかかりそうです。

「王国」との付き合いが完全に切れてしまった訳ではないのですから、

最低限「伯爵令嬢」のドレスを身に付けられるお体は必要ですし、

なにより…本音を言わせていただけるのであれば、

しっかりとしたコルセットを身に付けられて腰を保護されたお姿でないと、

私達が不安に感じるのです」

「それは、腰が細すぎて折れそうという意味?」

「その通りです。

ボルフォード家伝統の婚礼衣装を着せる為だったとは思いますが…

あの婚礼衣装は悪魔です。

ボルフォード家の公爵夫人が着せられていた婚礼用のドレスは、

「美しい」ですが「人」が着せられる物ではないかと。

婚礼衣装を着せられたまま肖像画も書かれるみたいですし?

一度盗み見た事が在りますが…

あの絵が本当に冗談でなかったのなら人間の着る物ではありません。

限界ギリギリまで腰を絞られた姿でしたから…

肩幅も人としてはアリエナイレベルです。

悍ましいの一言ですよ。

どうやったらアレを「美しい」と判断したのか…

私の美的感覚では解りかねます」


…一体何時の間にボルフォード家の婚礼衣装の肖像画なんて見たのか、

私には解らなかったけれど、話を聞くだけでボルフォード家と言うのは、

「服飾」に係るプライドの持ち方を間違えているんじゃないかって、

思ってしまう。

けれど、そうだったとしてもそうしなくては「伝統」という「既得権益」は、

守れないのだろう事も理解できるのだ。

権益を守れるのなら私だって無理をしてでも文句も言わず婚礼衣装に、

袖を通して着ただろうし。


「ご自身のお体ですからお気付きになっていないのかも知れませんが、

肩の位置も首の付け根もおかしくなっているのですよ?

無理矢理、歪まされた影響がお体の各所に現れているのです」

「健康的な体のつもりだったのだけれど…」

「学園でも制服やドレスを着用した状態でしか姿見は確認しないでしょうし、

何時だって時間に追われて生活なさっておられたのでしょう?

厚手に作られた学園の「制服」は、歪んだお体で着れば、

美しく見せられてしまいます。

ボルフォードの侍女はエルゼリア様のお体の事なんて、

何も考えていないでしょうし、毎日少しずつ「矯正」されていたのです。

体が可笑しくなっているって気付かせない様にもしていたでしょう。

気付いた時には既にと言った形にしたかったのでしょう」


長い時間をかけて作られた私の体は、

リラーナ曰く、歪みまくっていて見ていて気持ち悪いくらいだと、

はっきりと言われてしまった。

領内に戻って来て初めてのお着換えでリリーも顔を歪ませていたから、

相当なんだろうとは思っていたけれど…

長年矯正され続けていた体だから、あまりにも腰回りが貧弱で

コルセットなしの生活をしてみたかったけれどそれは叶わないらしい。

新しいファッションとして体を締め付けない楽な衣服が欲しいという、

願いは体の所為で不可能って事だった。

残念で仕方が無い。

けれどそう考えるならリラーナの心配も解らないではない。

どうにも私の体は「危険」らしいのだ。

本人は危ないと思っていなくても周囲から見れば危ない事が、

今の私にはやたらとあるって事なんだろうと納得せざるを得なかった。

それに合わせるようにリラーナに整えてもらった寝室で、

私が一人で出来る事は何一つない。

と、言うよりやらせて貰えないし、やれない様にされていた。

体を管理されているという、不満は若干あるのだけれど、

ボルフォード家の侍女達の様に面白おかしく体を弄りまわしたい訳じゃないと、

解っているからリラーナには全てを任せる事が出来る。

少しでも「普通」の令嬢の体にするべくリラーナが「調整」している事が、

解っているからこれ以上は望めない。

学園生活時代とは違う至れり尽くせりの空間では、

ベッドから起き上がった瞬間から周囲を「安心させる」為にも、

リラーナの指示に従って朝のチェックを受ける事が当然の様になったのだった。


つい数週間前までは矯正具まみれの制服を着ていた身としては、

体を一日でも早く「健康的」な形に戻したかったけれど、

その道のりは険しそうだった。

何年もかけて「作られた」体だからね。

仕方ないね。


肩の位置や関節の動きなんかをチェックされれば、

私はそのまま、隣のフィッティングルームへ移動するように促されるのだ。

そこには新しいドレスが用意されていて、私が試着と言う名のテストをするのを、

待っている状態だったのだ。

リラーナの指示の下、抱え込むと決めたデザイナーさんと針子さん達は、

例外なく私の傘下に納まる事になり彼女達には、

私の普段使いのドレスと式典用のドレスの製作を次の日には依頼していた。

チェックと使い心地と言う意味でも、試作された数着の斬新なドレスの試着は、

私が宣言した通り一日着てみて、

それはそれは感動するような使い心地だったのだ。

もちろん良い意味で。

ファルスティンで作られた新作の新しい生地を使ったドレスは、

どれも軽量でかつ丈夫だったのだ。

港湾都市で着せられたドレスとは異なり、

新しい技術と素材で作られた物だった事もあったのだろうけれど、

一枚一枚が丈夫だから重ねて、

縫い付けて強度を確保する必要がないと言う意味でも、

新しいグラディーションと色合いを試せているみたいで、

暗くなりがちで落ち着いた色合いのドレスからパステルカラーの様な、

明るいイメージの色合いの物が多く作れるようになっているみたいだったのだ。

私に似合うかどうかはさておき、

スカートにしろバスクにしろ軽くなった事が何よりも大きい。

そのお陰で更に光物を縫い付ける事も出来る様になるし、

身に着ける側として重量は死活問題なのだから。

軽い事は良い事なのだ。

統合した結果なのかデザインとしても斬新を通り越して前衛的な、

ファッションショーでしか見られない様な物から「マイルド」になり、

より実用的な点でバランスを取れているみたいで今の所バランスは悪くない。

何処かのバーティーで発表すればそれなりに受け入れられる事になるとは思う。

けれど…

細部の作り込みは甘い。

その辺りは経験不足なのか、刺繍やレースの扱いときめ細やかさは、

港湾都市で見たドレスの方が数段上なのだ。

この辺りは得手不得手が如実に出ていると思う。

飾り物の質はもっと向上させる事は出来ると思うし、まだまだ成長途中。

その練習台として着るのなら色々なパターンを冒険してみて欲しいとも、

思ってしまう。

新しく作ったデザイナーのチームとしての第一歩は順調な滑り出しが出来ていた。

朝の「お着換え」と言う名のドレスを身に着ける時間は長い。

けれど、この長さがそのまま新しいデザイナーさん達が、

新しい感性を育む事が出来る時間なのだとリラーナに力説され、

お着換えの時間は伸びる方向になっていったのだけれど…

その成果が1っか月後に「新作」として眼前にさらされる事になるのだから、

成果を見せつけられる以上、私も時間を削る事が出来なくなっていたのだった。

長いお着換えの時間を終えて、

かる―く朝食兼昼食となってしまった食事を終えたら、

執務室で出していた指示の進捗状況を聞く事になる。


とは言っても私が出した指示が芽吹くのはまだ先。

それよりもお兄様の対王国に対する政策の変更の効果が、

どの程度進行しているのかを確認する事に私の思考はほとんど使われていた。

領内にある「資源」の活用法も考えていかなくてはいけないのだから。

何をするにしてもリソース問題は付き纏うのだ。


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