忠義を示してくれる人がいて、だから私は動く事が出来る。
次回の更新は明日の20時です。
面接と言うより顔合わせする時間と言った方が良かったかもしれない。
既にリラーナにとって選別は終わっているのだ。
リラーナの傍付きとして一番私に近い位置に来るのが3人の侍女達。
その侍女を支える為に、更に一人に付き3人の侍女が付く事になる。
私の視界の入る人間だけ顔合わせすれば良いと言う考えで、
更にその下に付く人は、もう私の視界には入らない人達になるという事だった。
そこまでが、私の仕事をする手足となる人として「特別」としてリラーナが統括して、
扱う直接の部下になるとの事だった。
「選定には時間を使って選び抜きました。特に私の下に付ける
3人は、エルゼリア様がボルフォードに行く事になった場合は、
後で呼び寄せるつもりだった者達です」
その宣言は最悪の地獄の生活に付き合う覚悟があった子と言う意味だったのだ。
その覚悟は尋常じゃなかったと思う。
少なくとも領内にいれば良い生活は保障されていたのだ。
それを捨ててまで付いて来ようとする辺り私かリラーナか解らないけれど、
忠誠心だけはずば抜けて高いのだろう。
その信頼の証なのか、私が着る事を許している「特別な傍付き」にしか許さない
衣装に酷似した服装をしていたのだった。もちろん背中には鞄を背負っていて、
中身こそ入って無さそうだったけれど、極めて近しい物も持たせているみたいだった。
「私に万が一の時は、速やかに私の代わりが務まる様に教育してあります。
我々の敵は多いですから」
それだけリラーナは言うと三者三葉に深々とお辞儀をして私に綺麗なカーテシーを
披露してくれる。
リラーナの言う通り厳しい教育を受けている事だけは解る整った姿勢を崩さない。
私を唯一無二の主と見定めた子達だったのだ。
その後はその3人の下に付く9人のメイド達を紹介されて、彼女達に信頼の証と、
リラーナの部下となった証明のアクセサリーとして、私の色が入った、
誕生石を使ったブローチと、ネックレスをそれぞれに渡していったのだ。
リチェルチェに言われて用意していた、
この執務室に入る事が出来る唯一の証明書となる私の、
部下となった証拠だった。
皆が緊張しながら私から受け取ったアクセサリーを、リラーナが丁寧に一人ずつ、
身に付けさせて行くのだ。
そして当人が身に着けた状態で、その宝石に手を触れて私が魔力を込めると。
宝石がうっすらとだけれど光り輝いて当人にしか反応しなくなるのだ。
その薄っすらと輝く宝石を見た侍女やメイド達は、認められた証明を見て、
一様に喜んでいたのだった。
私の行った、責任ある初めての受勲式となったのだけれど、
恥ずかしながらその事に気付いたのは当分後の事だった。
アクセサリーを渡している時に思っていたのは、
ちょっと凝った社員証を渡している気分だったのだ。その辺りは反省しなくてはいけない。
それから意思の疎通と言う意味でも仕事の話ではなくて、
その場全員でお話をしたのだった。
ちょっとした昨晩のお祭りの延長戦の気分で、少なくとも新しい仲間の考えを、
知ると言う意味でも将来の夢を聞いておきたかったのだ。
彼女達の語る未来はとても明るくて楽しそうだったから。
それ以上の事を求める事は「今」はしないでいてあげる。
けれど、リラーナの黒い笑いがとっても印象深いのだった。
直接指示をする事になるのはリラーナだから仕方がないけれど、
少々浮かれている事がちょっと許せなかったのかもしれない。
主に対して軽口をたたくのはって所かもしれない。けれど、私が求めたのだ。
そのくらいは許してあげて欲しい。後でフォローが必要かもしれない。
けれど、その辺りは自ずとみんなの立ち位置が決まっていく事だから。
今でなければ聞けない事だと思っていたしね。
別の面で彼女達が苦労する事は解っていたから私は何もしなかった。
ここからは遊びではなく都市建設の為にありとあらゆる事が始まるのだから。
華々しい行事はここまで。
ここからは地味でメンドクサイ作業をしながら、
最短ルートで市場に出す新しい物を作る作業が始まるのだった。
おおむね私の思い描いている進行速度を維持しながらファルスティンの
成長曲線は、上向きを描き続けていたのだった。
その曲線を維持しつつ物を文化を作り上げる長い長い道のりが始まるのだ。
歩き出した私は手綱を握りながらその基礎を作り始める準備をする。
初日は顔合わせだけで軽く終わらせて次の日から本格的な指示を始めるのだった。
ブランドや文化は長い年月の積み重ねで作られる。
娯楽がいつしか文化となるよう育てる事ももちろんしなくてはならないのだけれど。
ともかく、時間がブランドを作り上げ、文化的価値を生み出してくれるのだ。
だから私は少し、そう、ほんの少しだけだけれど叔父様の作った物を
ブランドとする事から始めたのだった。
寒さをしのぐための叔父様が作り上げた実用一辺倒だった防寒具を、
女性向けに可愛らしくオシャレに。
男性向けにはカッコよく。
ギネヴィアに教えて貰った新しい陶器の生産方法を、
叔父様が初期に作り始めた陶器と繋がりのある物として、
それを更に染め上げ新しく目が楽しむ事が出来る模様を入れた物を、
第2世代のファルスティンの食器として普段使いにできる所まで量産化する。
これだけで叔父様の代から続く25年以上継続して作られる、
老舗と名乗れる物が作れるのだ。
もちろん質の良さも求められるけれど。
少なくとも一般消費物と呼べて普通に使える物になるまで徹底的に、
生産物を磨き上げる事を私は指示してきた。
既にファルスティンは生きる事は簡単になって来ているのだ。
だから物を充実させる事を全力で取り組まなくてはいけない。
今領民達の生活は欲しいと思っても「物」がない状態が続いている。
だから、今までより少しだけ品質が高い物を作って…
新しい生活スタイルを定着させその新しいスタイルに合った、
生活必需品を拠り出してそれをファルスティンの文化としてしまうと言う、
手法を取る事にしたのだった。
王国相手に化粧品を売りさばく事も考えなかった訳じゃないけれど、
それはまだあとで良い。
ブラッティーローゼの一族が作り上げてきた医療技術はそのまま、
保水液や衛生用品への転用も効く。
やればやるほど仕事が増えるこのスパイラルの手綱を握りつつ。
必要とされている物を市場へ流しておくのだ。
それだけで足りない物を補う様にファルスティン内での経済の内部循環は、
加速度的に良くなっていくのだった。
消費が増えれば生産する側も強化せねばならず港湾都市は、
更に発展する事になるのだった。
都市エルゼリアが私達を受け入れる前に、
できるだけ大きな文化を作り上げたかった。
そのうねりは、ファルスティンと言う領地を一歩先の時代へと推し進め、
王国との経済格差を生み出していく事になるのだった。
領内で高速で回り出し始める経済構造に加わりたいと、周辺の貴族達お抱えの、
商人達が慌てて支店を領都へ置こうとしてきたのだけれどライセラスお兄様は、
その事を逆手に取って高い出店料をせしめる事になる。
そのお陰で王都から物が運び込まれる事になるのだけれど、
どれもこれも高くて質が悪かったのだ。
王国では合格が貰える出来なのだけれど、少しだけ目が肥えてしまった、
ファルスティンの領民達はその「少し」を許容できなくなっていた。
自立できる力を付けて来ているファルスティンに足りない「物」はないのだ。
そうなれば王国の王都ではやっている趣向品となるけれど、
その王国の趣向品自体がもうファルスティンの領民を楽しませる物が、
ないから商人達が売る物がないのだった。
けれど周囲の貴族に押されて出店してしまった貴族は、
その出店を撤回して撤退する事は許されず出店させられ続けたのだ。
貴族としてもなんとか商人を足掛かりにライセラスお兄様に取り次いで、
貰おうと必死たったのだ。
新体制になってからというものの私の周囲は一気に騒がしくなり、
そしてあっという間に2カ月と言う時が流れていく事になる。
私の始めてしまった事が落ち着くまではまだ当分かかりそうだった。
構築開始です。
既に領都に発展用のスペースがありません。
なので都市エルセリアが出来次第、順次お引越しが開始されます。
やる事いっぱい夢いっぱいです。




