見ただけで解る様にしないとね。だから所属と立場を表すのに大切に色分けされるの。
次回の更新は明日の20時です。
けれど、私の慌てぶりをリラーナは少し疑問にも思ってくれたみたいだった。
それはそうだ。
「ですがエルゼリア様、計画は長いと仰いますが、
そこまで慌てる必要はないのではないでしょうか?」
「ピラミッドの一番下は広いのよ」
「畏まりました」
私の孫までかかるとすれば、時間は一見ある様に見える。
けれど物事の達成するピラミッドは2次元の紙の上の出来事ではなくて、
3次元の現実で組み上げるのだ。
いつか…叔父様が求める人材の雛形も作らなくてはいけない。
「夢」は大きいほど良い。
けれどそれは個人が思い描くには大きすぎるとも思うのだ。
まぁ、果てしなく遠いゴールを目指して歩き始めるとしましょうか。
浮ついた気分ではいられないのだけれど、
リラーナに案内される廊下の風景は実にカラフルに彩られていた。
区画を分けて人の流れを作るためだが、警備の人に役割と、
所属を解り易く見せるために、所属別に色分けされた服装を
新体制を開始した今日から身に纏う事が義務とされたのだ。
組織の頂点の纏う色が所属の色となったお陰で、
誰に付き従うのかが一目で解る様になっている。
ライセラスお兄様が白。
ターシャ義姉様が光沢のある黄色(シャンパンゴールドの様な色)
そして、私が青で
ギネヴィアは黒だ。
まぁうまくバラけてくれたと思う。
そのお陰でどれだけの人が、
どの組織に属しているのかが解ってやりやすい。
役職別に作られた彼らの制服には、選定されたデザイナーのこだわりが感じられる。
侍女とメイドとしても、正式に与えられる物は変えられたみたいで、
使用人と家令、それから文官・武官にも所属の色と、武官に関しては
叔父様特製?の鎧が正式な制服となったみたいだった。
メイドにはエプロンの形の違いと、カチューシャやアクセサリーに至るまで
揃えられている。
胸に刺繍を大きく縫い付けてあるベストを着ている文官は、
もちろんお兄様の所属だってすぐにわかってしまう。
初日という事で、全員着ている制服は真新しく、これから始まる枠組みで、既に
仕事として動き始めている人がほとんどだ。
けれども、この風景を見れば見るほど「王国とは違った姿」を私は見ている気になる。
数度だけだけれど、行った事がある王城の雰囲気とはずいぶん違う。
もちろん彼方の王城に制服を納めるのは、勿論「伝統と格式」を守るボルフォード家。
けれど、城で働くメイド達の仕事のし辛そうな姿には同情をするしかなかった。
まぁ王城で仕事をする位なので、
もれなく地位の高い令嬢達なのだけれど、ボルフォードのドレスは、程度の差はあれど
肩を自由に動かす事を許してくれないのだ。
もちろん腰も「美しく」見せる為に必要以上に締め上げられている。
スカートを膨らませるパニエは必要以上に大きく取られていて、
エプロンは革で出来た厚い物だった。その上で、歩きにくそうな
ハイヒールを履かされて重たい書類を運ばせていたのだからたまらない。
いつでも優雅に美しく過ごす事を強要されていると思われるメイドや侍女達は、
その上司の御令嬢にそれはそれは楽しい仕打ちを毎日受けているみたいだった。
もちろん、私が王城に招かれたのは頼んでもいない「礼儀を覚えさせるため」だった。
けれど、礼儀なんて登城して覚えるまでもなく、既にケチが付けられない位
リリーに教え込まれていた。考えるまでも無く、単純にファルスティンの小汚い小娘を
いびりたかった事は明白で、わざわざ登城用の重くて苦しいドレスを
ボルフォードが送って来たくらいなのだ。
当たり前だが、そつなく来なしてケチなんて付けさせなかったけれど。
私と対比させて、「こんなにも出来ない小汚い娘」のレッテルを貼ろうとした
公爵家の御令所様の方がよっぽどダメだったから、私に教育は必要ないとまで
評価を挙げる事になって、ボルフォード家が更に私に干渉できなくなり
大変喜ばしい話にはなっていたのだけれど。
もちろん登城にはお母さまにも付いて来てほしかったけれど、
そんな事は「伝統」が許さなかった。
貴族から生まれた訳じゃないミーシェお母さまに、登城する権利はないそうだ。
そんな事、もう昔の事だから、忘れていたのだけれど。
あの伝統と言う名の王城は、とっても素敵(笑え)な所だったなと
改めて思い出してしまったのだった。
かつてを思い出したのは、鮮やかなパーソナルカラーに彩られて、
屋敷が更に華やかになった様な気がするからかもしれない。
それにターシャ義姉様の「色」は、光沢の強く出る色合いだから、
メイド服の大き目に作られたパフスリーブと、
その上に広がる様にデザインされた、肩に大き目のフリルが縫い付けられた
クリーム色のメイド服を纏うメイド達は、王城にいた古めかしいドレスを着た
令嬢達なんかよりも、優雅な立ち振る舞いが出来ていた。
それでも「王国の流儀」を熟さなくてはいけないターシャ義姉様のメイドは、
その主の衣装にあやかる様に、細めのコルセットと胴回りに幅の広いベルトを、
アクセサリの様に身に着けて、貴族の様にスカートをパニエで膨らませ、
ドレス風に仕立て上げられていたメイド服へと仕上げられている。
多少苦しくてもコルセットをきつく巻いた事によって、相対的に
スカートが膨らんで見える様にして、邪魔にならないくらいに、
スカートを視覚的に広げて見せるみたいだった。
きっとリリーの教育の賜物なんだろうけれど、スタイルの良さを強調する
メイド服と姿勢を乱さずに、凛として歩いている
侍女達は立派な立ち振る舞いをしていた。
対照的に、真っ黒なメイド服に赤のエプロンを身に纏っているのは、
ギネヴィア所属のメイド達だった。
彼女の所は、ギネヴィアの黒に、アルフィンのイメージカラーの赤といった
合わせを採用したみたいだった。
パフスリーブは小さめに、コルセットは緩めで。
パニエであまり広げないスカートは、きつい印象を与えるのだけれど、
それでもギネヴィアの近くには色々な物があるから、広がるスカートなんて
危なくて履いていられない。それから運ぶ物が重たい事もあるのか、
腰のベルトには、大き目のバインダーや筆記用具を入れられる、頑丈そうな
収納鞄が取り付けらていた。
もう義姉さまのデザイナーもギネヴィアの所も、
既に小さな改良が加えられて、職場での特色を出そうと工夫を始めている様だった。
けれど青を着ている人はほとんどいない。
もちろんゼロではないけれど、既に私の区画の清掃係くらいしかすれ違わない。
まだリラーナの下に付けるメイドも決めていないのだから、
いたらおかしいのだけれど。
まずは自分の書類の整理を行うにあたって、手足となってくれる人達を択ばないとね。
そう考えながら、リラーナが厳選した人達と
初めて執務室で顔合わせをする事になるのだった。
楽しそうに服飾を観察しながら歩く私に、リラーナは尋ねた。
「侍女とメイドの衣装のデザインの変更をなさいますか?」
それは、私の所に配属される子達に与えるデザインが、
まだ初期案以降、変更していない事をちょっとまずいと思った、リラーナからの
忠告だったのだけれど…
「そうねぇ。
けれど変更するなら、まずはリラーナの傍付き用のデザインから始めるわよ。
それでもいいの?」
「…しばらく考えさせてください」
頂点を中心にデザインを決めるのが「普通」のやり方らしいから、
もちろんリラーナの「特別」を私は一番に切り替える。
今、リラーナが着ている特別な傍付き用の平時用の制服を
もっとゴージャスにしてあげても良いのだ。
けれど、そうするとリラーナは身嗜みを整えるのが大変になる。
それは一人で準備出来なくなって、私と同じようにお着換えさせられる側に
なってしまう事になる。
特別な傍付きはそれでも許されるのだから。
朝は私と一緒にお着換えをさせられる側となる事も特別な傍付きは許される。
許されてしまえる立場なのだ。
けれど、リラーナの根底には私を着飾らせたいと言う考えがあるから。
気持ちは解るのだ。自分の主を自分も特別扱いしたいと言う考えも理解できる。
特別な物を着せたいと思う考えをまぁ許容できる。
着飾るのが好きな御令嬢ならそれでも良いのだけれど、
今の私は、着飾って喜んでいる余裕があるかと言われれば微妙な所だ。
もちろん、リラーナの特別なメイド服も簡素化してあげても良いのだけれど、
リラーナの選ぶ私のドレスは、どれも手伝いが必要な重苦しいものなのだ。
なら、ね?
その道にズブズブと引きずり込んであげようかなと。
毎日重たいドレスを着せられる気分を味合わせてやろうかななーんてね?
「それは残念ね」
「残念です」
そんな静かな攻防を笑いながら繰り広げていたのだった。
近いうちに私のメイドや侍女達の制服も変えて個性を出さないとね。
エルゼリアが本格的に人を選ぶ時が来てしまいました。
叔父様の考えた「未来」とエルゼリアが求める「未来」は違います。
ただ、叔父様の作らせていた「ガラクタ」が余りに未来的な物なので、
エルゼリアは驚いているという話です。
ただ、錬金と言う反則を使えば、宇宙も無理じゃない気はしますが、
宇宙に行く意味はありません。その副産物としてロケットとかが作られて、
戦争が変わると思いますが。
次回からは現実な話になるでしょう。
叔父様は別に「宇宙」に行きたい訳じゃないのです。
ただ最終的に技術の頂点として母星を飛び出して宇宙に出て、
新しい土地へと移住していく事を夢見ています。
まだ世界の全てに人間の手が入った訳ではありませんし。
たどり着く必要の無い「夢」として宇宙を設定しているはずです。
たぶん。そうだといいなぁ。
そうでないとエルゼリアがフルスロットルで生きる羽目になります。
エルゼリアだけじゃなくてその子供、孫も同じ目にあいそうです。




