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悪役令嬢は何もしない。けれど叔父様は世界を変えてしまいました。  作者: VLS
貴族令嬢としての始まり 与えられた役目を果たす為に
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望むレベルには届かない。なら…

次回の更新は明日の20時です。

「まさか全てを救い上げるとは思いませんでした」


デザイナーさんと針子さん達のやり取りの後、

私はリラーナに、そう声を掛けられたのだ。

確かにリラーナのいう通り全てを拾い上げる事は、

あまり賢いやり方とは言えない。

けれど今の私にはそれで十分だったのだ。


「まだ選んで良し悪しを「選別」出来るほど成長出来ていないわ。

それは、貴女も解っていた事でしょう」

「確かに。個性は絞り出せている事だけは私でも理解できていましたが」

「なら、纏めて育てるのよ。

どんな形であれ育ってくれるでしょう。

きっと…

いいえ絶対に大輪の大きな花を咲かせてくれると、「可能性」を

見せてくれただけで掛ける事が出来るのよね」


価値はあるのだ。

種があるだけで良い。

少なくとも、王国の規格に捕らわれない「形」を作っていかないと、

これから押し寄せる王国外のデザイナー達と戦う発想力は生まれない。

王国が守り続けた王国の規格のドレスは、あと短くて2年。

長ければ5年で崩れ去る。

それは外交の変化によって訪れる事になるのだ。

叔父様が港湾都市で作り上げていた船舶は、

明らかに外海へと出ていく為の大型船舶だったのだ。

その建造計画がどの程度進んでいるか解らないけれど、

王国がグダグダやっている間に、ファルスティンは「海路」を手に入れてしまう。

あの鉄馬の車上からでも確認できるほど出来上がっていた、

ほぼ完成していた船舶の様子を考えていても明らかだ。

出来上がったとしても、あれだけの船舶を簡単に動かせる訳じゃないって事は、

解っているけれど直ぐに習熟航海?は初めてしまうでしょう。

小型船舶の動力の設計図と現物を運ばされたけれど「漁船」と言う触れ込みで

「近海のお魚を取って食を豊かにする為だよ」ってお父様に言って、

許可を取った事だけは想像できてしまう。

けれどその漁船の操作方法とその動力ユニットは、あの港で作っていた

大型船舶と同じ物として、きっと「漁船」と言う名の練習船が作られる事だけは、

確実なのだ。

出なければワザワザ手間を惜しんで、

「領都」で現物の蒸気機関を作るなんて事はしない。

設計図だけ送って作らせるだけで「今」のアルフィンなら、

普通に作れてしまう物なのだから。

練習用の小型の船舶の本体はもう完成済み。

あの船が出来上がり次第、叔父様は運び込んだ小型の蒸気機関を使った、

船舶で船員の訓練を始めさせるのでしょう。

おそらく、人員の選別をしてしまっているかもしれない。


「本当に時間が無いわね…」

「そう、なのですか?」

「リラーナ、少し覚えておいてほしいのだけれど、

この世界にいる全ての人々は、例外なく「ゼファード・バルダー」が、

作り上げた「基礎」を使って発展していく事になるわ…

貴女は、港湾都市…ではないわね。

都市ギネヴィアに足を運んだことはある?」

「エルゼリア様がお帰りになる前に、一カ月ほど前でしょうか。

新しい生地の出来の確認に赴きました」

「なら、解るでしょう?あの都市の異常性に。

物を作り上げる為だけに特殊な「区画整備」をされていた事に」

「それは、はい…」

「叔父様は周囲の人々全員を置き去りにして「次」を作ってしまったのよ。

下手をすれば「私達全員」が置いて行かれる事になるのよ」


そう、お兄様もお父様も叔父様の異常性は理解している。

理解しているけれど、何が「異常」なのかを正しく認識は出来ないのだ。

生活を豊かにするために、用意された地力の引き上げは既に完了済み。

王国と真っ向正面から戦える力、すり潰されない実力をファルスティンは、

既に身に着けているのだが、それはいわば「王国に追いつく」なのだ。

王国と言う豊かな存在と同じになる。

と言う「ゴール」が見えた戦いをお父様はし続けていた。

けれど叔父様にとって「王国」というより「貴族」とその「貴族の論理」は、

明確な「敵」であり、正面に居座る自分達が努力し豊かになる事を阻害する「奴等」、

でしかないのである。


私自身あの港湾都市のイカれた設備を見るまで信じられなかった。

王国に対抗するだけなら、あんな設備なんていらない。

要らないのだ。

叩きつぶされないだけの力を手に入れるだけで終わりにすればよい。

その後は、それ以上の部分は創らずに後続に託せば終わりに出来るはずなのに。


けれど、叔父様は止まらない。

止まってくれなかったらしい。

「狂気」を孕んだ力作が港湾都市では作れてしまうのだ。

木造船が主流のこの世界で、既に作った蒸気機関を原動力とした

鉄製の船は、動力となる燃料か、魔力を込めれば効率よく発熱してくれる魔石

さえあれば小型化は簡単。よほど効率的に動いてしまう。

「解析機関」を完成させてしまった事から、うすうす感じる違和感。

「皆が天才だね」なんて無邪気に喜んでいた叔父様は、本気で「皆」を

天才にしたいんじゃなかろうかと、考えずにはいられない。

無駄な人員なんていない。

能力が足りないなら、足りない能力を補える物を作り上げてしまえば良い。

建物の設計図を引くためだけなら「解析機関」なんていらない。

計算の仕方を覚え、公式を伝えるだけで良い。

計算結果を出力する事が出来て、簡単に図面の答えが解る必要なんて、

今の文明レベルでは必要になる事なんてないのだから。

それでも「解析機関」を欲したのは、巨大建造物を作れる設計図を誰でも

引けるようにする為で、その計算結果を元に、

あの港湾都市の巨大船舶を建造できる造船ドックを作り上げてしまった。

それが一つの終着点。

そう思えたならまだ良かった。

けれど、港湾都市で見せられる書類整理として見た物と、

その生産が始まっている生産物は、「今」の為に作られている物はほとんどないのだ。

生産している人々は、楽しんで意味不明の物を作って喜んでいるけれど、

港湾都市では用途不明の「次」が作られ続けている。

アルフィンもギネヴィアもまだ気づいていない。

いや、恐らく叔父様が意図的に気づかせない様に導いたのだろうけれど、

任命式で叔父様とお父様が残した「我慢できない」の意味。

お父様は、もちろん王国に対してだったけれど、

果たして叔父様の「我慢できない」は、王国だけだったのかという事。

そして、立場を捨てて「自由人」になってしまった叔父様の暴走は、

絶対に斜め上方向に加速する。

領地の為と言う大義名分を失った叔父様が、大人しくなるはずがないのだ。

あれこれ理由を付けて領地の為に尽くして来た「ゼファード・バルダー」の、

役割はアルフィンとギネヴィアがしてしまう。

それはもう「ゼファード・バルダー」には、作る物に責任を持つ必要が

無くなるという事でもある。

その時、気付きたくなかったけれど、

叔父様が用意した「未来」を見てしまったのよ。

無意味な研究と工作物に少しずつ必要な要素を足して作り続けていた物に。

今は夢物語で済まされるけれど、

叔父様とアリア叔母様の願いがこれだとしたら、私は笑うしかない。

けれど、この世界には「魔法」があるのだ…

叔父様の夢がそこであってもおかしくはなかった。

何処まで本気なのか解らないけれど、

叔父様の人生の到達地点が「そこ」だったら、

作らせたガラクタは、ガラクタではなくて作業機械となるだろう。


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