領主となったお兄様の為にも都市建設を始める予定が…
次回の更新は明日の20時です。
ファルスティンは新しい時代を迎える。
それは王国の顔色を伺う時代から、
王国に対抗する時代へと切り替わったという事だった。
そのファルスティンの変容を王国が受け入れられるのか?
それとも拒否されるのか…
今は、まだ誰にも解らないのであった。
確かに王国から勝ち取った権利をその手に握りしめて、
王国と戦う事を。言いなりにならない事をエルゼリアは、
第2王子殿下に示したのだ。
そのエルゼリアの立ち振る舞いを見た騎士達は、
領主であるライセラス。その妻ターシャ。
そしてその次に続く存在として彼女もこの領地で守るべき尊い存在と、
認識した事だろう。
だが爵位以上の存在価値を持つギネヴィアの存在と、
そのパートナーとなったアルフィンもまた守られるべき存在なのだ。
ファルスティンの技術面を支える重要な人物達なのだから。
彼等の導くファルスティンに領民達は期待せずにはいられらなったであった。
楽しい時間は終りを告げる。
これからは戦いの時なのである。
ファルスティンに住まう領民達はその事をしっかりと理解していたのだった。
自分達を見捨て軽んじた王国は「敵」だという認識は、すっかりとファルスティンに、
根付いてしまっていたのである。
それは領主が代替わりした程度で忘れられるほど、
軽い事ではもちろんなかったのである。
誰もが口にしたくない敵として認識している国の名は、
―オースヴァイン王国―
華やかな生活の為に都合の悪い物を見捨て続けたその王国の名を、
ファルスティンの領民は決して口にしない。
ただ「王国」とだけ話すのだ。
口にしてしまえばその怒りを抑える事が出来ない事を領民自身が、
わかっているのだから…
領都の城の大きさにまで大きくなってしまった屋敷で、
任命式は無事に閉会した。
そして厄介な貴族や王族が帰れば、領民達との夢の語らいの時間であった。
語れるのだ。
夢を語って、その夢を実現するためにファルスティンは動けるのだ。
王国に搾取される事がない堅牢なファルスティンを作る為、
皆が悩み意見を言い、そして王国への対抗策を考えるのだった。
後はファルスティンの為の時間が始まるのである。
兄の為にエルゼリアは動く。
新しい文化が芽吹く時が来たのだった。
任命式が終わった後、夜遅くまで続いた祝賀会も終わりを告げて、
皆がそれぞれに与えられた立ち位置の場所へと大移動が行われた。
任命式を皮切りに切り替えられる様にと「全て」の家臣達が生活する場所も、
着る物も切り替わる事になっていた。
それは対外的に組織が変わったという事を知らしめる事でもあったのだけれど、
それ以上に「今」のファルスティンの「常識」を基準に、
屋敷内も整えられると言う意味でもあった。
領主が変わるという事は、その下に仕える人達の生活も変わる事になる。
元々お父様の下で働いていた人々の半数は「引退」する事が許された。
もう半分は新しく領主となったライセラスお兄様の下に付く。
同時にお兄様が引き連れていた家臣達との合流&引継ぎをしながら、
新しいファルスティンの常識に合わせた組織へと変化させていくのだそうだ。
次代にあった世代交代。
それは「王国のゴミ箱」から脱却してしまったと言う意味でもある。
何かにつけて鼻に付く「王国」の押し付けを、もう受け入れないと言う、
意思表示でもあったのだった。
お父様の家臣団はもともと少なすぎるほどしか既に「生きていない」のだ。
未来を託して先に逝ってしまった人は多すぎる。
お兄様の率いる家臣団は王国に対して中立であろうとするけれど、
その家臣団となった親世代の「苦しかった」事を教わりながら育った世代が、
王国と友好的な関係を築くとは思えない。
それでも本人より子供の方が御しやすいと思われているのか。
その判断基準も分からないけれど未だに「王国」が、
ファルスティンを舐めているって事だけは理解せざるを得なかった。
任命式以降の私とギネヴィアの生活場所は領都のファルスティン家の屋敷…
もとい城の中以外から出る事は許されない生活が始まった。
お屋敷…は広い。
広すぎるのだがそれにもまして私達の警備は厳重な物となっていた。
それは組織の頭脳として勝手に死ぬ訳にはいかないという事でもあった。
ファルスティンと言う集合体の行末を決める。
最前線に出て指揮を取るのはライセラスお兄様の役目。
私とギネヴィアはそのお兄様と言う頭脳の外部機構として動く事になる。
屋敷の中も綺麗に3分割されて、それぞれに解り易い色分けも行われていた。
目的が違う組織が一つの建物の中に入り乱れる事になる。
同じ建物の中とはいえ3種類の系列が存在する事と入り乱れる命令系統を、
解り易くする為という命令の下、領都の服飾関連の業者には、
男女問わず大量の使用人用の衣服というか、制服が配られたのだった。
屋敷に出入りする人ならば、用意された制服の着用は義務とされ、
その制服を身に纏いしっかりとした身分証を身に付けている人以外扉を通さない。
等の解り易いルールがなければ不法侵入を許す事になるのだから。
一夜明けてお祭り騒ぎが開ければ、
手慣れない部分を除けば、
全員用意された役職の服装に着替え身なりは整えられていた。
制服と身分を合わせる作業が初日の仕事になりそうだったのだ。
叔父様のが作り上げたいわゆるセキュリティー宝石?
を有効にするために私に直接近付く人に対して、
私の仕事領域に入れる専用のアクセサリーを手渡す事になる。
もしのそのアクセサリーを身に着けていなかったり、
支給された制服も着ていなかったりすれば、
専用のルートを通過する事は許されず、
兵士達の住まう重警備エリアを身体検査を受けて通行する羽目になる。
この世界ではアリエナイほど厳重?な警備網を敷ける構造に、
屋敷は仕上げられていたのだった。
前日は夜遅くまで宴を開いていたからと言って、
「これからは「敵」は本気となるでしょう。
備えるに越したことはないのです」
「それは理解しているつもりよ。
けれどこの警備網は一体何時から用意していた物なのか、
それが気になったのよ」
「無論、「お屋敷を全面的に立て直す時に」です。
ゼファード様とアリア様がアネス様の許可を得て「全て」整えました。
地下の解析機関を組み上げると同時に重要な機密エリアとされた所だけは、
業者も入れず「お二人だけ」で仕上げられました」
「セキュリティーがブラックボックス化したわね…」
「侵入者を許すより宜しいかと」
「そう、なの?」
「そうなのです。
エルゼリア様もそうですが、
ライセラス様やギネヴィア様が目覚めなくなる位なら、
セキュリティーが機能しなくなる方が良いでしょう。
新体制に移行したばかりなのです。
警備は厳重に越したことはありません」
リラーナは言い切ったのだ。
どれだけ私達が死ぬのを恐れられているのかを教えられる様に、
特別な傍付きとなったリラーナは日が昇る前から一段とうるさい状態の、
屋敷全体の様子を語ってくれたのだ。
一応、屋敷内のプライベートスペースである筈の私用エリアに設けられた、
私の寝室は私の使用する物が「ほとんど」運び込まれて生活する分には、
なんの問題もないレベルに整えられていた。
ファルスティンから持ち出す事にしていた仕事用の文房具関連を除けば、
「私だけの物」は少ないを通り越して無いと言ってしまえる。
それは嫁ぎ先となるボルフォード家に、
「エルゼリアに必要な物は此方で揃える。
ファルスティン製の小汚い物を持ち込む事は許さない」
と、言われていたからなのだ。
何にしても「ファルスティン」物を持つ私は汚い存在としたかったらしく、
持っていく事を許されたのは、子が生まれた時に親がプレゼントする、
―祝福の宝石―
だけだったのだ。
それは貴族に生まれたと証明する宝石で、
原石を国指定の加工屋に渡すと爵位と家柄によって、
「国が指定する形」加工して渡される、
貴族の子供である「物理的」な証であると同時に、
貴族の親が子に与える初めての願いとも言える物なのだ。
そしてその石は血筋を表す物でもある。
祝福の宝石は所有者が死ぬとその血筋の中で一番若い、
直系の同性の元へと渡される仕来りとなっており、
長く続いた貴族の家の娘であれば複数の宝石を所持しているのは当たり前で、
ネックスレスにして、いくつもの宝石を埋め込んだ豪華な物を送られる子もいる。
ミーシェお母さまは貴族ではなかったから私の宝石は一つだけ…
のはずなのだが…
お父様が用意した石の所為で…
い、いや叔父様が悪だくみした結果なのかもしれないけれど…
私の「祝福の宝石」は、やたらめったら豪華な物になっていた。
第2章?開始です。
とはいえ、まずは身の回りの事を決める所からスタートです。
取り敢えず、王国に名前が生えました。
いつまでも王国だけでは不便になりそうなので。
「オースヴァイン王国」と命名しましたが、変更するかもしれません。




