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事の重大さと「特別」は私に非常事態であることのように感じさせて。

5月14日まで毎日更新します。

次の日の昼。

移動する車内でも昨日まで泊まっていた宿泊施設と同じ様な待遇で、

私達は目を覚ます。

けれど起きてから領都に到着するまでの時間は、

用意されていたドレスのお着換えだけではなく手直しが進む式典用の

品々のチェックをする時間へと当てられていた。

初めての馴れない作業だからチェックを何度もしたい。

という使用人たちの思惑以上に大きな何かが彼女達を追い立てているみたいで。

私が何かを口にすれば周囲が必要以上に過剰な反応をするので。

その雰囲気の原因を問い質す事は出来ずじっとしているしかなかった。

予定通りの運行で私達は領都へと戻ってくることは出来たのだけれど、

そこで待っていたのは一新されて用意されていた護衛付きの馬車。

私達は粛々と領都の屋敷へと運ばれる事になる。

そこに待っていたのは…

私達の任命式の準備を指揮するミーシェお母さまの姿と、

それを近くで補佐し続けるアリア叔母様の姿だった。

おかしい。こんなに大ごとになるほどの事じゃないはず。

だってギネヴィアの任命式は予定通りのはずだし。

それに私の役職が加わる程度の変更でしょう?

そうなれば任命式の準備の指揮を取るのは領主代行のお兄様のはずだし。

けれど、そのお兄様と義姉様の姿もない。

どうして?

メイン会場となる大広間で、大人数の使用人達に囲まれながら、

ミーシェお母さまはテキパキと受け答えをし続ける。

けれど私達を見つけたお母さまはにこりと笑いながら、

時間がないからか直ぐに必要な事だけを話しかけてくる。

私の正式な王国の伯爵令嬢用のドレスを見て…

ウンウンと頷きながら近くにいた針子さんにぼそりと呟いた。

「もう少し腰は絞れそうね。式典用のドレスは修正してあげなさい」

聞かなかった事にしたい。

けれど控えていた針子さんは直ちにミーシェお母さまの言葉を実行するべく、

衣装室へ向かってしまった。



「おかえりなさいエルゼリア。

これから任命式までしばらくは大人しく言う事を聞いて頂戴ね。

お父様が持ち帰って来た書類のせいで大変な事になったの」

「それは、また…。

けれどいきなりどうしたのですか?」


私は少しでも状況を知りたくて、お母さまに質問しようとした。

けれど、お母さまはもはや私の相手をする余裕はないみたいだった。

少しの間、私と会話をしただけでお母さまの近くには列ができる。

次々とお母さまに判断を仰ぐ使用人達を捌いて行くお母さま。


「ミーシェ様?書類の確認をお願いします」

「…それはアリアに回しておいて。

ギネヴィアの事はアリアに決定権があるわ」

「はい」


お母さまはものすごい勢いで物事を決めて行っていた。

それでもお母さま待ちの列は一向に減らない。


「詳細はリラーナが知っているわ。

直ぐに会って彼女から聞きなさい」

「わ、解りました」

「ミーシェ様先程の…」

「ミーシェ様こちらの…」


準備に奔走していると思っていたライセラスお兄様とターシャ義姉様は、

屋敷の一室へと追いやられている状態で必死になって二人は衣装合わせに、

奔走させられていたのだった。

普段ならターシャ義姉さまの傍付きであるリリーでさえその場にはおらず、

勿論ギネヴィアの傍付きリチェルチェの姿すら見えない。

ミーシェお母さまに言われたリラーナを探すために私は移動しようとするが、


「お待ちください。

リラーナ様を直ぐに呼んでまいります

お嬢様方は待機室へ御移動願えますか?」

「解りました」


二人のうち一人はリラーナを呼びに。

もう一人は、その場所から一番近い所にある多目的スペースを利用した、

待機場所へと私達は案内された。

屋敷内の雰囲気は明らかに平常時の雰囲気ではなくて、

任命式だけでは済まされない準備が進み続けている。

扉越しの廊下の人の流れは激しく、

足音がやまない程度には人の出入りも続いているみたいだった。

王都から返ってきて感じた人の出入りの多さとは比べ物にならない位の、

人が動き続けている。

屋敷内の構造すら変える勢いで業者も入り込んでいるみたいだった。

私達を汎用の待機室へと案内したメイドさんはそのまま壁際で待機。

私達はその部屋の椅子に腰かけ、リラーナが来るのを待つ以外、

何もする事はなかった。

リラーナ・ゼフィラはリリー、リチェルチェに続く、

ゼフィラ家三姉妹の末娘。

リリーとリチェルチェを足して2で割った様な子だった。

私と年齢も近いから誰かの教育係となる様な子でもなかったし、

上の二人とは年が離れていたから、誰かの教育係になる事はなかったはずで、

ゼファード叔父様とアネスお父様の近くで、

よく手伝いを任されていた子だったと記憶している。

リリーとリチェルチェの補佐をすることもあった関係と、

私達と年も近かった関係から、ギネヴィアと私のもう一人の小さな姉?

というかお友達?というか遊び相手だった。

知っている人ではあったけれど、学園への入学が近くなればなるほど、

遠くに行ってしまった子でもある。

彼女が何故?


「失礼します」


懐かしい凛とした声と共に扉は開かれ私は久々にリラーナの姿を見る事になった。

見覚えの無いメイド服を着た姿で。

そしてそのメイド服に縫い付けられた刺繍は「エルゼリア」の色で縫い付けられ、

「エルゼリア」のドレスに刺繍される象徴を取り込んだデザインに、

仕上げられていたのだった。

その姿はメイド服と言うよりドレスに近い作り。

ドレスの様な服の上にメイドの証として祭典用で特装で作られる、

フリルが大量に縫い付けられ過剰な装飾の施されたエプロンを身に着けている。

誰が見ても主人は「エルゼリア」そう思わせる説得力の持った衣装だった。

傍付きのメイドに与えるにはいささかゴージャスすぎるが、

正式な場所へ主に伴い赴かなければならなくなった時、

用意されるものとしては正しい出来だった。


「あなた…その格好」

「はい。正式な発表はまだですがエルザリア様が任命式を御受けになった後、

私はエルゼリア様の正式な傍付き筆頭として、

お仕えさせていただく事になります」

「それは、心強いけれど…良いの?」

「我が努力はこの日この時の為に。

エルゼリア様がボルフォード家に嫁ぐのであれば、

私はファルスティンを離れボルフォードに赴くつもりでいました。

私の行く先はエルゼリア様が歩む道のすぐ後ろなのです。

私をお選びくださいませ」

「そう…では、遠慮なくそうさせて貰うわね。

リラーナ・ゼフィラ、今より私の筆頭傍付きとして仕えなさい」

「私の生涯をかけてお仕えさせて戴きます」


カーテシーをしながらされるその決意表明の様な言葉。

それは一生離れる心算はないという覚悟の返答でもあった。

リラーナはここに来る前から決意してきてくれているのだ。

言い訳や遠慮。断りの必要なんて私は言葉にする事は出来ない。

私の傍付きにならないという決定もリラーナの中にはもはやない。

だって既に私の傍にいるための準備は出来ているのだから。

身に纏う色と姿。

それはエルゼリアに仕える人しか着る事の許されない物へと仕上げられ、

これからは私の傍にしか立つつもりがない意志の表れでもあった。

仕える主が明確にいるから「特別」を表す意味でもリラーナが身に着ける物も、

それ専用として作られ周囲に誰が「主」であるかを教えているのだ。

彼女はもう「専用」を賜った時点で二人のどちらかが文字通り死ぬまで、

その関係は変えられない。

そして言い換えるならば、専用を身に纏った時点で、

もうリラーナ・ゼフィラはエルゼリア以外の誰にも仕える事を許されない。

仕える側にしても王国の法律は効率を求めた結果そういった形が作られたのだ。


国に対する貴族としての忠誠とは別に傍に仕えさせるのだから特別に扱う。

それは使える主に対しても責任が及ぶという意味でもあった。


「特別な傍付き」それは、いわばもう一人の自分と言い換えても差し支えない。

本人が指示を出せない時だってもちろん出てくる。

主の代わりに責任を持ちながら指示を出せる存在は絶対に必要なのだ。

それに貴族として上に立つのなら抱え込む部下の数は数しれない。

それをうまく統率して主人の願う「規律」を守らせるという意味でも、

組織の副官的な立ち位置は絶対に必要。

主不在で物事が決定されず組織が機能不全になるなんて許されない。

そういった要素からも始まった制度ではあったけれど「特別な傍付き」の、

重要度は国が成長する過程で絶対に必要だったのだ。



…等という事になってはいたけれど、


けれど王国の本心は忠誠や誠意等と言いう耳障りのいい言葉より、

敵対した組織を不要になった時連座して効率よく「処分」する事が、

目的だったという事は言うまでもない。

現在に至るまで王国の歴史の中で謀反を起こそうとした貴族に対して、

家を丸ごと潰すのだ。

それだけでは禍根を残す。ならば残さない様にするには?

簡単だ理由を付けて全員「処分」してしまえば良い。

支配階級の首のすげ替えは半端にやるより纏めてやった方が効率はいい。

王国を運営するうえで必要な事柄となってもいる。

特別扱いする事を許可したのだから部下のミスも主は責任を負え。

グループとして扱って傍付きとそれに連なるミスは主人のミス。

同時に全員のミス。

だから潔く全員「処分」されろ。

このことからも、王国の統治はかなり無茶の連続なのだろうと推測できてしまう。

けれど「特別な傍付き」を任命しないなんて事はありえない。

いなければ仕事は捗らない。

半端な人を特別に任命してしまったらとんでもない被害が出る事も決定事項。

それでも貴族の子女達は「軽い気持ち」で傍付きを作るのだ。

どうなるのかはお察しではある。

男爵家程度までなら重要な国政に関わる事は無いから許される事も多い。


けれど、ね?

豊作だった学園の「正義の革命」の賛同者達は?

伯爵や侯爵も多くいたのだ。

王国はこの問題児達をどう「処分」するのかな?

曖昧な緩さで、これからこの王国で活動する「正義の貴族達」を

どう扱うのか?彼らの任命した「特別な傍付き」は?

その結果王国でどういう作用を引き起こすのか。

私は恐ろしくも楽しそうと感じている事でもあった。


誰もが見間違える事のない姿。

そして主の近くにいても問題ない姿。

特別な傍付きの許可は主人の許可なのだと周囲に見せつける。

責任の所在が一目瞭然になる特別な衣装。

誰が指示を出したのかを明確に周囲に認識させる為にもその特別は必要とされた。


彼女は…

リラーナは私が得る事ができる最高の「特別な傍付き」なのだ。

これでもかと言うぐらい「エルゼリア専用」であることを示し、

優雅にスカートを広げて持ちながら一礼をして、

スカートにある「エルゼリア」の刺繍と綺麗な私の色を見せて覚悟を表す。

リラーナは一連の仕草を自然に行い、にこりと微笑みかけてくれた。

その表情は私の行動に満足していると伝えていた。


「そう。それじゃあ早速、現在の状況を教えて頂戴」

「はい。仰せのままに」


彼女は私をまっすぐ見つめると、

私が港湾都市に出かけてから届いたアネスお父様から手紙により、

この状態になってしまったと教えてくれた。

何事かと聞いてみれば簡単で。

お兄様もお義姉さまも今回の任命式はする側ではなくされる側。

そしてゼフィラ家3姉妹がその準備に参加しない理由もまた、

される側なのだという事だった。



つまり、お父様は自分の代を終らせる決断をしてしまったという事だった。

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