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事態の急変に驚いている暇はなくて。断片的に聞かされる事柄が信じられなくて…

5月14日まで毎日更新します。

任命式への参加。

それは国から発行される貴族として認められた生涯をかけて守る。

いわば国から発行される貴族である証の様な物だった。

一応学園卒業の「貴族」は「貴族」として扱われる。

けれどそこには責任もなければ権限もない。

国から発行された任命書を手にした時点で「権限」と「責任」が生まれる。

この辺りは厳密に決められそして管理されたことだった。

こうして置かなければ国にとって不都合な人が貴族となってしまった時に、

対処できないから仕方がない。

国にとっての「保身」という点でも大きな意味がある。

学園を卒業して半人前。

任命式を経て任命書を受け取って一人前と言う訳だ。

言ってしまえば任命式を経て、任命書をうけとっていなければ、

どんな大きな失敗をしたとしても許される。

だから高位の貴族の子女達は任命式をずらす事によって、

失敗を保証され、貴族として学ぶ時間を作り上げるのだ。

実践しながら学び程よく現実を知った半人前を一人前として認める。

この2段式の認証システムは王国の全体的な方向性そして貴族社会を、

どうコントロールしていくかを決めるうえでとても効率よく機能していると思う。


けれど、国にとって都合の悪い事を正義としてしまった卒業生達が、

各々の領地と国との繋がりでどういった反応を示すのかなんて、

考えるまでもない事よね?


3年間かけて「悪役令嬢エルゼリアの不正」を暴いて

「正義」を示してしまった彼等に忖度の2文字は存在せず、

ボルフォードのばら撒いた金によって、

整地された綺麗な思い出は彼らに無限の自信を与えたんだもの。

もちろん、小さな革命を起こす事に成功した彼らが任命式を直ぐに希望して、

権限を求める事は当たり前の事だと思うのよね。

都合の悪い見なくちゃいけない現実を置き去りに出来る瞳は羨ましいと、

思うけれど実現できない未来に用はないのだ。


ファルスティンで任命式を受ける予定だったギネヴィアは一日でも早く、

領内の為に動きたいともちろん考えている。

というより彼女の場合もそうだけれど領外から干渉されない様に、

守るためにも一日も早くファルスティン領内で結婚し、

自身の護りてを手に入れる事が急務とされている。

ファルスティン領内なら自由に「バルダー」として動ける理由は多々あれど、

王国の目線からすれば、エルゼリア同様ギネヴィアだって嫁がされて、

王国内にとどめ置かれれば十分に人質となりえた人物なのだから。

ゲームの強制力だったのか、それとも別の思惑が働いたのか?

エルゼリアは、ボルフォードに婚約させられた。

同格の娘を婚約者に出来なくなったボルフォード家の経緯はともあれ、

事実としてはそうなっている。

公爵家とは言えこの一方的で強制的な取り決め。

「抗議」が出来る力を持ちつつあるファルスティンの現実を無視して、

国が婚約を成立させた理由はそこにあるのかもしれない。

お父様やお母さまが当時抱えていた苦悩は私には解らない。

けれど現実として両親は勿論の事。領民のほとんどが国にも貴族にも、

よい感情を抱いている人間はほとんどいない。

国と貴族の都合で良いように扱われて来たという現実はそうそう覆せない。

「支援」と言う名で続けられる人口の供給。

ファルスティン領を存続させるためだけに続けられた

「人員補給」と言う名の王都にいる余剰人口の破棄。

王都内で発生する孤児や浮浪者を捕まえて「労働者にする」という言い訳の下、

送り付けられた働けない者達を受け入れるファルスティンは、

毎年送り付けられた「労働者」を無限に消費し続けてなんとか成り立っている。

と言うのが王国の建前上の認識なのかもしれない。

変わりつつあったことを理解しつつも、

王都の治安を乱す浮浪者や孤児を堂々と放逐して捨てる場所は絶対に必要だった。

美しい王都を守るために。


現実ではなくて「美しい王都」の為にファルスティンは「人員補給」だけは、

して貰わなければいかないのだから。

王国は何があってもファルスティンへの「人員供給」を辞めなかった。

…それはゼファード叔父様の躍進を促したに違いない。

現代の豊かさを知って生活水準の低さに絶望して…

何もない土地で。

生きていける保証もない場所に人員だけ供給し続ける王国の目的とやり口。

そのやり口に協力するだけの高位貴族達を見れば、

「転生者」として出来る事があれば自重すること無く動くと思う。

叔父様は見ているのだ。

ファルスティン領内で一番ひどく、そして苦しい現実を。

乙女ゲームと齟齬が発生する運命の分岐点。

その分岐点を作った叔父様はおじいさまとお父様と一緒に、

ファルスティンの閉ざされた現実を嫌と言うほど見せつけられた事だろう。

私やギネヴィアはニコニコ楽しそうに笑う叔父様しか知らない。

軽い言動の裏で豊かになる迄の間に、

どれだけの人を見殺しにしなければいけなかったのか。

どれだけの後悔と悲しみを背負ったのか。

私は怖くて聞けない。

叔父様が私達に見せるのは輝かしい未来の話だけ。

過去にどんな苦しい事があったのか辛い事があったのか。

それを技術と魔術でねじ伏せて豊かな土地を作り上げたのか。

叔父様から見れば私とボルフォードの婚約は自身の理解の及ばない考えの果て、

貴族達の都合の結果「エルゼリアは国と貴族の都合で奪われた」という、

現実だけが突き付けられたのだ。

ならばせめて娘のギネヴィアだけでも守りたいと考えるのは当然で、

国から干渉されない手の届かない場所に、

ギネヴィアは置いておきたいと考えるのは当然の事だった。

貴族としてのマナーを完璧に覚えているけれど、

それと反比例するように貴族らしくなく

「技術」を愛するように育てられたギネヴィア。

育児を任されていたリチェルチェはバルダー夫妻の「願い」を完璧に、

理解して実行したって事でしょう。

学園内で高位の貴族に目を付けられていればギネヴィアの人生もまた、

大きく捻じ曲げられ悲惨な事になっていたかも知れない。

けれどギネヴィアは「悪役令嬢エルゼリア」の取り巻き。

その事だけで評価するのであれば、

悪役令嬢の腰巾着に手を出そうとする人はいない。


学園内であれだけ私と一緒に忙しなく動き回っていたのにも関わらず、

中立を維持したその距離感と立ち振る舞いは高位貴族に嫁いだって、

爵位関係を考えなければ何ら問題のない子なのだから。

乙女ゲームのヒロインであるソフィアさんよりよほど優秀で、

役に立つ事が出来るでしょう。

ギネヴィアは「正義」に固執しないからね。

結婚相手は勿論アルフィン一択でアルフィンは一応騎士爵保持者。

男爵位を持つ相手と結婚しても問題のない状態にちゃんと合わせられている。

ギネヴィアと生涯を共にする相手としても相応しいパートナーなのだ。

ギネヴィアは本人の知らない所で非常に大切に扱われ特別を与えられ続けている。

彼女に必要な物は用意され、ギネヴィアの箱庭は領内においては、

ファルスティン家とバルダー家の力を使って完璧に整えられている。

ゼファード叔父様の弱点にもなりうる可愛い娘なのだ。

それでも彼女は昨日まで「自由」を謳歌し続けた。

好きな事に興味を示し好きな事が出来る自由が与えられていた。

それはゼファード叔父様の与えた愛の形でもあったのだろう。

叔父様が与えられる物は惜しみなくギネヴィアに与えた証。

その裏でどれだけの調整があったのかは分からないけれど。

今のギネヴィアがあるのは叔父様の長すぎる手があったからでしょうね。

私は二人の未来を祝福せずにはいられない。

私が王国と貴族の思惑で失敗した分も幸せになってほしいと、

考えているのかもしれない。

せめて一番近くにいてくれた彼女はと。


行きの列車と違って帰りの列車の時間は楽しい会話もなく、

ただひたすらゆっくりと、乗務員にお世話され続ける時間が続く。

もちろん話したってかまわないのだけれど、

それ以上に私達の緊張感を高めていたのは乗っている車両のせいだった。

座った席からの見晴らしの良さもさることながら、

普通の車両とは別格に作られた窓枠の切り取られ方はとても見晴らしは良い。

それは言い換えれば向こうからもこちらが全面的に見えているって事で、

お披露目台と言っても良いほどの効果があった。

専用ホームから発射した列車は、

港湾都市を出るまではゆっくりとしたペースで走り続けた、

特別に仕立てられた列車。

その設備もさることながらもちろん過剰な装飾が施され、

そしてゆっくり走っていれば注目をあびてしまう。

そこに乗っているのはバルダー家の色を纏う御令嬢。

私の色はともかくギネヴィアの着ているドレスの色は、

車内の色も相まって遠目からでも良く目立つ。

ギネヴィアがこの町に来るのは何度かあったかもしれない。

けれど貴族の御令嬢のスタイルでお目に係るのは港湾都市に住む人でも、

初めてだと思う。

貴重なギネヴィアの姿を一目見ようと、

沿線沿いには人が集まっているみたいだった。

遠目からではあるが確実に見られているという緊張感に、

ギネヴィアはぎこちない笑顔を向けながら答えていた。

見られるのも仕事のうち。

そう言われればそこまでだけれどいきなり笑顔を振りまくのも結構大変な事だ。

列車に乗っているだけなのにね。

私としては視線がギネヴィアに向かってくれたから。

楽をさせて貰って嬉しかったけれど。

移動一つとってもこれからは気にしなくちゃいけない事が増えたという事を、

突き付けられた一幕ではあったわね。


郊外まで進んだ鉄馬はスピードを上げる。

私達を明日の昼間でに領都へ届ける為に。

車窓に流れる景色は行きの鉄馬の速度とは比べ物にならないほどのペースだった。


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