可哀そうなお姫様のおはなし♡…どこが?
「わ、わたくしはとある国へと嫁ぐことになってしました。
そこで嫁ぐことを前提で学園に入学する事になったのです…
底での生活は最悪の物でした…
私は体が歪に変形するほどに苦しい器具を全身に嵌め込まれ…
そして苦しい生活を強いられたのです。
一年一年と過ごすうちにコルセットは締め上げられ胸の形を矯正され、
手足が細く長くなるように枷の様な器具を嵌められて過ごす事になったのです」
「お姉様は辛い学園生活を送られたのよ!酷いでしょ?」
「けれど2年に上がる事には王太子妃様と同じ物を身に着ける様にと、
言明されてさらに苦しい生活になって…
もう耐えられなかったのです。
アレは人間の身に着ける物ではありませんでした。
そして私達が最高学年にあがった時私の締め上げもきつすぎる物となり、
とても生活を送れるような状態ではなかったのです」
「あぁっ。御姉様可哀そう」
「卒業がまじかになって私は殿下にあるものを見せられました。
「君の為に用意した花嫁衣装だよ」と言われて…
け、けどそこに。あったのはっ!
あったのはドレスの形をした拷問器具だったのです!
酷いでしょう?!
私はそのまま体調を崩してしまって…
母国に戻って療養したのです。
ですが体調が戻りつつあった頃、嫁入りの打診が来てしまいました…
わたくしはっ!あんなドレスは着られない!
着る訳には…着てしまったら死んでしまうっ!
そう思った私は国を脱出したのです。
そしてどこか別の場所で国を作り…
静かに暮らそうと思ったのです…」
「あぁっ!姉様!
心優しい姉様は私が代理として結婚させられるかもと思って、
私も連れ出してくれたのよ!
優しい姉様でしょ?
ねえ!私達を救って下さいまし!」
マシンガントークで話された内容に私は「どっかで聞いた事のある内容」程度の、
感想しか抱けなかったのだが…
あ、コレさっさと鉄馬に乗せて領都に送り出すべきだわという事しか、
脳裏をよぎらなかった。
酷い結婚相手。
酷い嫁ぎ先の国から、
王族としての務めを果たさずにただ楽な生活だけを満喫して、
その果てにある政略結婚の駒となる義務を放棄したこの「王族」と、
まともな会話をする気になれなかったと言うのが本音であった。
その会話で行われるのは自身の可哀そうアピールと、
そしてチラリと視線を私の後ろにいるギネヴィアとアルフィンへ向けるのだ。
そしてギネヴィアの姿を見てギリリと唇をかみしめる音がする。
まぁ、目を付けていたアルフィンは一段高い柵がある向こう側で、
ギネヴィアを支えながらこっちを見ているだけ。
そしてもう一人のグラファイスは私の後ろで何もせずに佇んている。
ただ二人の姫の言葉を聞いているだけなのだ。
それはこの正式な場で篭絡とまで行かないにせよ深い関係となった時に、
彼女達に優位になる様に口を挟んでくれそうな大切な二人が、
二人とも別の「女」に付き従うかのような位置にいるのだから。
焦るのも無理はない。
亡命して権力者に取り入ってそれなりの生活を送る事。
それがこの二人の姫の思惑だって事は直ぐにでも理解できてしまう位、
本音を隠さず可哀そうアピールを続けるのだった。
けれど、受け手となる交渉相手は残念ながら私であり、
私に色仕掛けされても、ねぇ?
な形なのだ。
周囲を見渡して、次に媚びれそうな相手を探す二人の姫のその何も隠さない、
その仕草はとても微笑ましかった。
私としては既にかける言葉もなく…
「辛かったのですね」「大変ですね」「良くお休みくださいませ」
しか相槌として言う事が無いのだ。
結局変な爆弾を抱え込むだけとなり、
けれどそれも数日。
ライセラスお兄様の動きは早すぎたのだ。
本当に数日後には手配と準備が済んだとかで、
―姫君達の場所は準備出来た―
―直ぐにでも送り出してやってくれ―
―その後の事はすべて決まっているから安心してくれ―
―彼女を探しているお方が見つかったのだ―
―とても喜ばれていたよ―
―感謝の手紙が届いた位さ―
という、手紙の下私達は安心して二人の姫君を送り出す事にしたのだった。
マー例え数日間とはいえ、流石お姫様た。
デザイナーを呼びつけると私に相応しいドレスを作れと私とギネヴィアの、
針子さんとデザイナーさんを呼びつけて連れて来た侍女達と一緒に
ドレス職人とはなんなのかを説いて回り始めたのだから。
「私達に相応しいドレスを作れる様になるまで躾けて差し上げます。
感謝なさい」
「私達の言葉を聞く機会なんてないんだから」
等と言ってはいたものの、
彼女達が教える事はデザイナーさんや針子さんが作りたくないドレスの、
一礼の様な「美」の為なら体を歪めることを許します。
と言った形の着用者に無理をさせるドレスがほとんどなのだ。
それは自身が着るのを嫌がったドレスではと皆一様に突っ込みたくなって、
いる様だった。
手早く普段着用として作られたフリーサイズのドレスを、
サイズが合っていないと、侍女がクレームをつけ、
針子さんとデザイナーさんはまた呼び出されて姫様方のクレームを聞くのだ。
たった数日で針子さんもデザイナーさんもリラーナにクレームを入れる始末。
「私達は他国の姫君が着るドレスを作るためにここにいる訳ではないです!」
「私達はギネヴィア様とエルゼリア様の為のドレスを作るためにいるのです」
「ボルフォードのドレスを作れと言われているみたいで嫌です」
「私達のデザインを否定するばかりでマトモな事を言ってくれません!」
わずか数日で服飾集団に完全に嫌われるとは流石と言うべきなのだろうか…
また料理に関しても…
「お口に合わないから作り直せって言ってきます」
「訳の解らない食材を使えって言われて…使ったら罵倒の嵐です」
「辛いのがお好きって聞いたので少し辛味を咥えたら不味いって…
どんな舌を持っているのか解りません!」
凄い勢いで、理不尽で不条理な命令を吐き出す姫様方のチームに、
それを支えるファルスティンの領民達はもはやうんざり状態の様だった。
これで「亡命」なんて本当に出来たのだろうかと思ってしまう。
亡命したら一領民となって貰って過ごして貰わなくてはいけないのに。
所詮姫様は姫様としてしか生きられないと言うお手本を見せられ続けたのだった。
嵐の様な我儘をまき散らしながら私達は、
デルフィナス王国の姫君を貴族専用の客車が連結されている鉄馬へと乗せると、
笑顔で万歳三唱をしながら発射を見送りたい気分だった事は確かだった。
皆一様に思った事だろう。
「「二度と来るんじゃねえよクソが」」
鉄馬がいなくなってほっとした空間に響いた言葉を吐いていたのは、
当然ギネヴィアだった。
アルフィンと向き合ってしっかり抱き合った二人の息があった言葉に、
皆頷くしかなかったのだから仕方がない。
当然その数日間アルフィンに何とか近づこうとおめかしして突撃を、
しようとお屋敷内を勝手に散策しようとする姫達。
バルダー家の屋敷は機密も多いからは入れない場所も多い。
その扉を開けろと騒ぎ始める姫の侍女達。
無理だとしか言えない案内役。
「姫様の安全を確認する為です!直ちに開けなさい」
「それはアルフィン様でなければ許可は戴けません」
「ならアルフィンを呼べばいいのよ!」
「アルフィン様は現在ギネヴィア様と視察中です」
「直ぐに呼び戻しなさい!
ギネヴィアなんて小娘より私の相手をするべきでしょう?!
そんな事も分からないの?」
「申し訳ございません」
とてもではないが、亡命者の立ち振る舞いではいことだけは周囲も理解できる。
出来るのだが…
「国を追われた姫に少しでもご慈悲を…」
等と言いながら無茶な要求をアルフィンにはするのだ。
もううんざりのアルフィンはため息交じりに返事をするのだ。
「しばらく待って下さい。許可を戴きますから」
「そう♡お願いね」
もうスパイかなんかじゃないかって疑いたくなる内容だったのだ。
その果てに準備ができたら、領都で観光してきて下さいと言って、
デルフィナス王国の姫に関わる人員を領都に向けて送り出したのだった…
数日間の嵐の様な生活に皆正しく一国の姫の我儘に振り回されたのだった。
「ただの貨物に箱詰めして送り出してやりたかったぞ」
「姫って何なのよぉ!不条理な命令の塊を言うのが姫なら、
ギネヴィア様は天使か何かなの?」
零れだず愚痴は収まらず…
やっと平凡なにちじょうに向けて最後の仕上げをする準備が出来た事に、
喜ぶしかないのだった。
王都に「姫様方を送り出す」のと同時に港湾部に未だとどまり続ける、
デルフィナス王国の船に対してお兄様から最後通知が届いたのだ。
それは船乗りにとって喜ばしい事なのかそれとも最悪の手紙なのか。
ただ解る事はあの船乗り達の大半が死んだ理由は、
愚かな交渉人の所為であり、貴重かどうか解らないけれど、
15隻の戦闘艦を失ったデルフィナス王国軍としては、
これからその戦力の穴埋めに奔走する事だけは確かで…
ともかく都市ギネヴィアで起きた騒動ももう少しで終わりそうだって事だった。
それは別の騒動が近づいて来る予兆なのかもしれない。
だってゼファード叔父様が出港してから、
それなりの時間が過ぎてしまったのだから。
そろそろ戻って来てもおかしくないの時期でもあるのだ。
次回で、一区切りでしょうか。
叔父様の帰還が近づいてきて、物語は次のステージへ進めてしまいます。
同時に都市ギネヴィアの発展は加速し、都市エルゼリアが完成するでしょう。
次は都市エルゼリアの話となりますが、
その前に後片付けの最終話が待っています。




