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悪役令嬢は何もしない。けれど叔父様は世界を変えてしまいました。  作者: VLS
辺境の1地方の終わりと国家間攻防(物理)の始まり。
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プライドよりも命を取るの、ね?

「まって!まってぇ!撃たないでぇ!」

「だめぇ!」


叫び声が交渉をする部屋から聞こえ、

その声を発したのは女性の声で「さる高貴なお方」だったのだ。

流石にその「さる高貴なお方」が交渉のテーブルに着くと言うのであれば、

こちらも一考しなくてはいけないかもしれない。

パチンとアルフィンが大きく指を鳴らされると、

それは攻撃停止命令として伝達され各所の砲撃は停止される。

聞こえたのが「さる高貴なお方」の声だったので、

一応アルフィンも反射的に攻撃中止命令を出したみたいだったが、

交渉室の方は大荒れとなってしまっていたのだった。

第一に怒ったのは交渉人だったのだ。

ガヤガヤと凄まじい大声が伝声管を通しても伝わってくる。


「姫様!交渉に口を出さないと言うから連れて来たのですよ!

黙っていて戴きたい!」

「そんな事言っていたら全員殺されちゃうじゃない!」

「誇りあるデルフィナス王国国民の船乗りは、

「負ける位なら死を選べる」のです!

姫様は私達に誇りある死を選ばせて下さらないのですか!」

「うるさい!死なない為の生きて帰る為の交渉をする為にここに来たのよ!」

「誰も死にたいなんて思っていないわよ!

何が誇りある死よ!敗戦した責任を取りたくないだけでしょう!

私達は人質になったとしても多くの船員を生かすために交渉に来たのよ!」


二人の高貴なる者さん達のいきなりの喋り出しで、

また状況が二転三転する事になるのは目に見えていた。

けれどこの二人の「姫」なのだかどうだか解らない人は、

この戦闘を降伏してでも止めたいらしいという事だけは解ったのだ。

さて…


指令室側にいる私達はもうめちゃくちゃだった。

後腐れなく終わらせたいと思っていた事が上陸してきた「敵」の、

内部分裂と言う名の茶番に付き合う事になるって事だったからだ。

これからまた会議と言う名の言い合いを、

ただ聞かされ続けるだけになることだけは確定事項。

そんな事に付き合っていられないし付き合いたくもない。

もっと言えば交渉してやる義理もないのだから。

なので交渉人と連絡して結果だけを伝えることにしたのだ。

もう戯言を聞いていたくもない。


「…内部分裂は好きにやっていただきたい。

ただし「停戦」したいのであれば全ての武装を海上投棄して頂く。

そしてその条件を「今」飲めないのであれば交渉は終りです」

「それはっ!」

「出来ない!栄光のデルフィナス王国の艦隊がそんな武装解除なんて!

出来るはずがない!許されるはずがない!」

「だまれぇぇぇぇぇ」


女性の甲高い声が交渉室の室内になり響いていた。

どう考えてもさる高貴なるお方の声だったのだ。

そして彼女が宣言する。


「デルフィナス王国第一王女である、

セルディア・デルフィナスの名において命じます!

直ちに我が艦隊は武装を海上投棄して交戦継続の意思がない事を示しなさい!」

「しかし!」


それでもこの交渉を壊したいのか、いや、壊したかったのであろう交渉人は、

その言葉でセルディア第一王女の決断を取り消そうと何とか口を回す。

武装を捨てなければ「今」終わる事を確信できた王女はもう交渉人に従わない。

それだけで「今」をしのぐためになんだって受け入れられると言う意思を、

行動を持って示したのだった。


「艦隊の最上級責任者は誰!」

「セルディア・デルフィナス第一王女殿下です」

「私の意志に逆らうの?」

「…仰せのままに」

「それで良いのよ」


今まで口を開かなかった他の交渉人が慌て返答をしていた。

今まで喋り続けていた交渉人はしかし!ダメです!としか口にしない。

その交渉人を切り捨ててなんとか話を終らせない様にする為に、

この高貴なるお方?の一人は交渉人の一人を完全に排除する。

姫に付き従っていたメイドに力づくで一人の交渉人は部屋から引きずり出されて、

強引に内輪もめを終らせてしまったのだった。

既にデルフィナス王国側には敗戦と言うか言いなりになる準備というか、

覚悟が決まったかのような雰囲気が見え隠れしていた。

特に交渉に割って入ったセルディアはもう交渉財利用がないという事を、

嫌と言うほどわかっていた様で残った二人の交渉人も既に諦めムードのよう。


「それに…もう嘘をいくらついてもしょうがないでしょう?」

「しかし!」

「貴方が言わないのであれば、私が宣言します」

「だめです!」

「それをおっしゃっては!我が王国の威厳が保てません!」

「威厳?それは貴方のちんけなプライドでしょう!

もう私達が帰る場所はないのですよ!」

「あぁ…」

「デルフィナス王国の生き残りである私セルディア・デルフィナス第一王女は。

あなた方に亡命する許可を求めます!」


声高らかに「高貴なるお方」はそう宣言したのである。

亡命とかバカじゃないの?

と言うかもうそれ以上考えたくなかった。

本当に問答無用で全て吹き飛ばしてしまえば良かったと後悔するしか、

その時の私は考え付かなかったのである。

交渉はお開きにして再度検討をするしかないのだった。

厄介事とかそう言ったレベルではない。

そして数こそ減らせたけれど、それでもまだ海の上には、少なく見積もっても、

2隻で200人程度は乗船しているはずなのだ。

それを受け入れるなんて出来るはずがないのだ。

このお姫様は軽々しく亡命なんて言っているけれど、

それを此方が本当に受け入れる必要があるのかすら疑わしい。

蛮族の姫を受け入れても何も良い事はなく、それに15隻て艦列を維持しながら、

攻撃を仕掛けてきた旗印のお姫様?が、亡命だなんて言葉を発したとして、

それを信じられるはずが無かったのだった。

どちらの選択肢にせよ、このお姫様と交渉人達が行った結果、

私達も少なくない被害も被っている。

特に内湾の養殖場と漁場は壊滅的なダメージを負う事になった事だけは確かで。

考えがめぐる中でただただ亡命を希望してしまった「お姫様」は話し始めるのだ。


「この地を統べる代表者様に合わせて下さいませ。

そこでもう一度わたくし達の置かれている真実をお話いたします。

どうかっ!どうかっ!この小娘の小さな我儘を叶えて下さいませ…」


明かな涙声となっている声の震え方で、必死に訴えて来ているこの「お姫様」は、

なせ初めからそれをしなかったのか解らなかった。

けれどそんな涙の願いは受け入れる訳にはいかないのだ。

全てにおいて「戦端」は開かれていて今は停戦協議中。

合わせる道理はないしそう油断させて懐に入り込み私達を皆殺しにしないとも、

限らないこの交渉は長引かせる必要はないけれど…

もう要求してその指示に従って「従順」になった所を見ない限り、

私達は何も信じる必要がないという事をはっきりと伝えるしかないのである。


「こちらが求めるのは、戦う為の武装を大小にかかわらず海上に投棄していただく。

明日の日の出と同時に2隻の内部を確認させていただき、

それで武装が出て来なければ停戦を認めましょう」

「それじゃぁ!」


セルディアと名乗っている女性はそれだけで嬉しそうな言葉が口から漏れる。

ただし認めるのは停戦なのだ。

降伏じゃない。


「戦意喪失として、停戦には応じる用意が此方にもあります。

ですが先に言っておきます「降伏」は認めません。

降伏したければそれ相応の価値のある物を提示して頂く事になります。

…降伏を認めるだけの価値のありそうな物は、大切になさるが良いでしょう」

「はいっ!はいっ!感謝します」


その言葉を最後に彼女達は旗艦へと戻って行ったのだ。

バカでなければ知的財産を求めている事に気付いてくれるはずで、

本当に亡命を求めているのであれば、全てをさらけ出すだろうと私は考えていた。

今更亡命を求める理由なんてどうでも良かった。

取り敢えず停戦状態を確認出来れば、それで今は良しとしよう。

後の事は、相手を無力化してから考えれば良いと思い、

日が暮れて辺りが暗くなり始めた所に、

四方から遠距離投光器で2隻の船を昼間の様に照らして差し上げたのだった。

武装を捨てやすくして差し上げると言う私達からのささやかなおもてなしと言う名の、

暗闇に乗じて上陸なんてさせない為の処置なのである。

まったく面倒な事になってしまった。

最悪の爆弾を抱え込む事になるのかどうか。

さてどうなるのでしょうね。

開戦する時からここまでは決めていました。

無謀な交渉。

跡が無い様な戦い方。

その果てにあったのは破滅願望だった訳です。

しかし「高貴なるお方」は死にたくありませんでした。

と言うオチです。

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皆殺しにすればいいのに
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